・黒王×ラオウの掌編です。
・ただのエロです。わりと淡泊。
愛のない強姦輪姦+愛のある獣姦
緊縛・薬・血・暴力とか
※かなりアレです。
感じ方には個人差もあると思いますが……
・場面は ケンとの第一戦引き分け直後です。
「なんだ、ありゃ」
窓枠に腰をかけて酒を飲みつつ、形ばかりの見張りをしていた男の一人が、今にも一雨来そうな薄暗い空と、赤い大地の狭間を指差す。
「何って、……馬みてえだな」
「じゃ、今晩は馬刺しだな」
品性の欠片もない笑い声をあげた男たちの足元には、コブラの紋章を染め抜いた軍旗が踏み荒らされている。廃ビルの前に並べた車やバイクからもマーキングが削られており、元は敗残兵か脱走兵か、いずれ外道に落ちた輩と思われた。
しばし面倒そうに酔眼を向けていた後の二人が、突然、窓枠から身を乗り出さんばかりに色めき立った。
「おい、あの馬、見覚えねえか」
「ねえもなにも、拳王の馬だ」
はじめの男の首筋を捕まえるや、引きずらんばかりの勢いで階下へ向かう。
「何ぼさっとしてる。行くぞ、捕まえるんだ」
それは見る者全ての目を奪うほど巨大な黒馬だった。サラブレッドの倍もあろうかという堂々たる体躯を金の装身具で飾り、馬中の馬と呼ぶに相応しい偉容を具えている。だがよく見れば首筋は汗に汚れ、鬣も風に乱れて、充血した眼には相当の疲労が窺えた。
鞍にはこちらも並外れて大きな男を乗せている。衣服と身に着けた冑、そして手綱を握る両手までもが血に塗れ、頭をぐったりと馬の首に預けて人声に気づく様子はまるでない。
三人の男が分乗して近づいたバギーとバイクに気づくやいなや、馬は耳を絞って後ずさった。頭を高く上げて睥睨し、だが走り出そうとはしない。おそらくこれまでずっと、背に負った男を振り落とさぬよう、慎重に歩を稼いできたのだろう。
「間違いない、あいつが拳王だ」
「じゃ、死んだって話はガセか?」
「んなわけねえ。元親衛隊って野郎から聞いたんだぞ」
「メディスンシティだって、”ああ”だったしなあ」
行く手を阻まれた馬は、痺れを切らした様子で一声荒々しく嘶くと、後方へ走り出そうとしたが、その途端、拳王らしき男の身体は地に落ちた。
死人の顔色、だが大きな手で手綱を握りしめたままぶら下がるような形で、馬はその場から動くことができなくなった。衣服を噛んでまで元来た方角へと引きずろうとするが、流石に大の男を咥え上げることはできない。
拳王の愛馬・黒王号といえば、踏み殺した敵兵は星の数、そして巻き添えになった味方も星の数と、軍内でも主に次いで畏怖される、名だたる荒馬だ。男たちは警戒心を剥き出しにした相手に迂闊に近づく危険は侵さず、諸手をあげ、甘言を吐きつつ宥めようとしはじめた。先ほど足蹴にしていた軍旗まで車内から探し、さも大事そうに掲げてみせる。
「ほら、見ろ、俺たちは味方だって」
「そいつ……拳王様を、手当してやろうってんだ。水も、食いもんもある」
その時。砂上に倒れていた男が肘をついて、上体を起こした。
「生きてやがった」
男の一人がそう、恐ろしげに呟いた言は聞かれることはなく、逆に掲げていた旗が目に入ったらしい。
「……拳王様ですね」
「黒王……案ずるな……」
元・部下の問いには答えず、ただ馬の顔にだけ向かい言い含めると、拳王と思しき男はまた、呆気なく意識を失った。
男たちは、砦にいた仲間を呼び出し、拳王を内部に担ぎ入れた。黒王はそれを見て自ら砦内に入ろうとしたが、しかし、その巨体は廃ビルの狭い入口にはどう身を縮めようにも潜らなかった。
一方、男たちはあわよくば黒王の手綱をとって、繋ぎとめようとしたが、しかし、これは食いつかれんばかりの気迫で拒まれ諦めた。
「ここで待ってろ、な」
いつしか全天を覆う雲は低く重く雨気を増し、そして一層暗い西の空では、沸き返る紫雲を裂いて稲光が、不吉に瞬いていた。
※ ※ ※
「本当にこいつがか? ……意外と若けえな」
男の中の一人、髪を赤く染めた隻眼の男は感慨深げに言うと、寝台に横たえたラオウの頬に触れた。
末端の兵が王を直に見る機会は少ない。ただ、殺戮者としての禍々しい噂話ばかり聞かされた身では、あながち的外れともいえない感想だ。意識のない眉間は皺も和らいで、薄く開いた唇にいたっては、あどけなくさえ感じさせる。乾き皹割れたそこへ、男は何度も指を這わせて遊ぶ。落ち窪んだ眼窩をあわせて見れば、医師なら一目で強い脱水状態と分かる体だ。
そこへ、首領であるらしい中年の男が、筋骨隆々の上半身に見合わぬ短い足でせかせかと歩いてきた。
「面倒なんかみるこたあない、放り出せ」
「いいんすか」
「なにが拳王だ。こいつのせいで俺たちゃただのゴロツキに逆戻りだ。貢ぐだけ貢がせておいて、ろくな褒美もなしのまま、な。……だろ?」
「まったくだ。何食ってやがったんだろうな、この体、ハンパじゃねえ」
先ほどの男は今度はラオウのズボンの上から尻を撫でている。
「いいケツしてやがる。それに、なかなかカワイイ顔してるんだが」
他の男たちはおしなべて同意の顔つきではなかったが、ただ首領の男は聞くや、好色そうな笑みを浮かべて、唆した。
「おいお前、なんならこいつをヤっちまえ」
「隊長……じゃねえや親分。そりゃいくらなんでもヤバくねえすか」
「見ろ、ただのガキじゃねえか。んなもん、どうとでもなる。仕込んでやれよ」
他の男たちが遠巻きに、気味悪そうに顔を見合わせている間に、一度部屋を出て戻ってきた男の手にはアルミ製のトランクがあった。中を探って錠剤を取り出し手の平で転がして見せる。
「こいつ使ってヤると、忘れられなくなるって話でさ」
「この図体に効くか?」
「三……いや、五人前くらいやれば、さすがにキマるだろ」
正体のない体を腹這いに直し、鎧と衣服を脱がせる。
「いい見せ物にはなるだろうさ。こいつをぶち殺したいって奴は五万といる。それに、あの馬つぶせば肉も食える。ついてるぜ」
男は、乗り気でないらしい他の男達をそう嗾けながら、ラオウの腕を後ろ手に鎖で纏めてしまった。傷ついた肩を動かされ、拳王は小さく呻いた。しかし男はかまわず腰を持ち上げ四つん這いに近い形に尻を突き出させると、こちらも鎖で寝台に括り付けてしまった。
「一応、保険はかけておくか」
ケースから包帯を取り出すと、目の上に幾重にも巻き付けて目隠しにする。それからハサミを出すと、ラオウのベルトをぶつりと切って引き抜いた。巨大なバックルが床に落ち甲高い音を立てる。弛んだ下履きと下着を纏めて脚から抜かれて、ほんの数分の間にラオウは下半身の全てを男の眼前に晒されていた。
※ ※ ※
凄まじいまでに発達した筋肉に覆われた裸体に、七人の視線が注がれる中で、隻眼の男の手が胸や背中、さらに下って尻や腿を、両手で撫で回しはじめた。
「本当、いいケツしてるぜ」
「そうか? デカすぎてガバガバー、じゃねえの」
面白がる仲間の声を軽く流しながら、男は双丘の狭間をこじ割り灯火の下、鋭い眼差しで品定めをはじめた。
「見ろ、使い込んでるカンジもねえし」
「そう言われてもわからんが。ま、試してみろよ」
さっそくとばかり指を入れようとするのを、別の男が制した。
「待て、こいつを仕込んで、ついでに掃除して、それからだろ」
そう宣言した小太りの男は、飲料水の瓶を二本手にしていた。
優美なくびれのある透明な瓶の、蓋を器用に歯で開けると、一本のすぼまった口をラオウの後門へずぶりと突き入れた。男たちの下卑た笑い声が部屋に響く。
「貴重な飲みもんだ。味わって飲めよ」
男が半分ほど差し込んだところで、瓶を回すように動かしたため、みるみるうちに中身は直腸の奥へ流れ込んだ。
「ウあッ」
その余りの仕打ちに、拳王は意識を取り戻した。
視界を閉ざされているため、状況が飲み込めない様で、しきりに首を振る。立ち上がろうとした腕と脚に力が籠もり、鎧のような筋肉の束がぐっと盛り上がると、数十本の縛めを張り渡した寝台の木枠が、今にも壊れんばかりにギシギシと鳴る。そして腹に力が入ったため、腸内に流し込まれ
ていた炭酸水が逆流し、音を立てて溢れた。
「うお、汚ねえな!」
瓶を手にしていた男が飛沫をくらって叫ぶのを、遠巻きにしていた男たちが指さして笑う。
男は八つ当たりとばかり、目の前にある尻を瓶で殴りつけた。しかし痛みなどまるで感じないとばかりに、拳王の堅牢な身体は微動だにしない。
「この下衆めが……今すぐ死にたいか!」
地獄の底から響くような男の怒声が、室内を震わせた。こともなげに拘束を千切ろうと動く。
しかし不運にも、一瞬早く突き入れられた瓶の口が彼の内側の敏感な場所を押し上げていた。
「ふぬ……な…っ、あ……!」
縛られた身体を硬直させ、さらに強く呑み込ませられた異物に拳王は戸惑いながらも、また掠れた声で怒鳴った。取り囲む男たちはその様子に、指さして嗤った。
「なんだこいつ、カンジちゃって目え覚ましたよ」
「はい、お代わりですよー 拳王ちゃん」
空になった瓶を引き抜くと、男はもう一本も無造作に尻穴に突き刺した。さきほどの薬が一〇錠も溶かし込まれているその中身もまた、容赦なくラオウの直腸に流れ込んだ。
「すぐに止めろ、さもなくば、……!」
「おめえ自分の状況少しは判れよ。偉そうな口をきくな」
瓶を持った男は今度はすかさず、拳王の血塗れの右肩を殴りつけていた。塞がったばかりの脆い傷が破れ、鮮血が噴き出す。
「ぐあッ!」
さすがに呻き寝台に額を擦りつけたその鼻に、別の男がショットガンの銃口を突きつける。
「おい、動けばこいつを撃つぞ。死にたいか……?」
ほくそ笑みながら、男は突き入れたままの二本目の瓶を抜き取らず、掌底で強く押し込みはじめた。巨体に見合う大きさの入り口は、驚くほどの柔軟さで瓶をずぶりと呑み込まされてゆく。
「おい、前立腺ってどこにあんだ」
「腹側、わりと深いぜ」
「こいつで届くか?」
「さあな、なにしろこいつのケツ、デカイしなあ」
男たちは楽しげに囁きあいながら、冷たい瓶で犯されていく菊門を見つめている。
「うっ……」
自ら触れたことすらない器官を無理に開かれる感覚に、ラオウは不快感を露わに呻いた。が、次第に呼吸が乱れはじめ、何度か小さく息を呑みすらした。それを微妙に聞きわけた男は、瓶の太さの変わるところを肉の輪にひっかかるように、緩急をつけて抜き差しし始めた。柔らかい粘膜は何度目かに破れ、一筋の血が流れ出したが、ラオウは痛みなど感じもしない様で、息を潜めている。いつしかその顔は暗い中でも判るほど紅潮していた。
「見ろ、効いてきた頃合いだ」
「このケツマンめ。気持いいンだろ? ここに突っ込まれたいンだろ?」
先ほど薬を出してきた男が満足そうに、異物を奥深く受け入れている穴の周辺を撫で、そこから急角度で持ち上げられている尻の下にぶら下がる陰嚢、さらに男根まで滑らせていった。その先端には、刺激への反応として透明な露が滲み出ている。
「やめろ、触れるな!」
ラオウは幹に触れられたとたんに吼え、縛めを引きちぎる勢いで身を捩った。しかし、男の指が先走りを掬い取り、鈴口を捏ねはじめると、腰から下の力を奪われたようになり、がくりと首を垂れた。張りのある、まだ初々しい粘膜の上を不浄な指先が這い回る。卑猥な音、そして密やかな喘ぎが、室内にいる全ての男の耳を濡らした。
「面白そうだ。俺から試してやろう」
いつしか身を乗り出し痴態を見ていた男達だが、その中で先に親分と呼ばれた者が、宣言すると今までラオウに手淫を施していた男を退かせた。
剥き出しにされた尻の前に歩み寄り、仁王立ちに立つ。股間のファスナーを下ろして取り出した怒張はすでに完全に勃起し天を向いていた。大きさでは先ほどの瓶に遙かに及ばないが、赤黒い表面に血管を浮かせ、ヌラヌラといやらしい液を光らせている。男はグロテスク極まりないそれを飲料で濡れそぼった入口に押し当てると、一気に腰を進めた。
「ふ、あ……ぐッ!」
ラオウは歯を食いしばったがそれでも小さく声が漏れた。
「我慢するな。いいんだろ、勃ってるじゃないか」
横に避けていた男の手が再び、半勃ち状態のラオウ自身を両手で握り込む。重みを楽しむように撫で回し、また括れを輪を作った指で扱く。指が上下する度に腰から下を戦慄かせ、
「すげえ締まるぜ、おもしれえ」
挿入した方の男は陶然とした表情を浮かべると、性急にペニスを出し入れしはじめた。
圧倒的な恐怖と暴力でもって各地の豪族を次々と従えてきた拳王その人を、這い蹲らせ女のように犯す……その高揚、満足ははかるべくもない。男はすぐに達し、狭い内部に濃い精液をぶちまけた。
すぐに元いた男が場所を代わり、猛った牙を突き入れる。
「ぬぁ……っ……ぐ!」
「なんだ、女みたいによく鳴く拳王様だな」
嘲笑う声に憤るラオウのこめかみには幾筋もの血管が浮かび、歯を食いしばる頬に凄まじい力が宿るのが見て取れた。
それからラオウは、次々に、捌け口に飢えていた男の欲望を受け入れさせられた。一片の喘ぎも漏らすまいとの頑なな拒否の姿勢が、下半身の中心にまで及んで恥穴を貫く男を逆に喜ばせたが、それでもラオウは無惨な力を籠めに籠め……、ついに片側の奥歯を砕き折った。
溢れるほど精を注がれ、あるいは尻に浴びせかけられ、抵抗らしい抵抗もできぬまま、それでもラオウは歯列の隙間から血の泡を吹きつつ、ただ声を上げまいとだけ一心に耐えていた。
※ ※ ※
ちょうど、責め役が一巡した頃。
階下から轟音が響き、直後、建物全体を揺るがす衝撃とともに、部屋の扉が吹き飛んだ。
暴風あるいは死そのものを纏った漆黒の姿を、熱狂に浮かされていた男共の果たして幾人が捉え得たかは定かではない。戸口を石壁ごと粉砕して巨大な体を捻じ込んできた其れは、ラオウを嬲っていた全ての男の頭上に均しく絶対的な、誅滅の鉄槌を振り下ろしたのだった。
※ ※ ※
黒王は寝台に伏せるラオウに近づくと、まず拘束された全身を嗅いで周った。
「よせ……触るな……」
必死に訴える嗄れた声を聞き取り、顔に顔を近づける。目隠しに巻かれた包帯に気づき、舐めてずらそうとする。しかしその意図に気づいた途端にラオウは、身を竦ませ叫んだ。
「顔など……見るな……」
わずかに残された気力を奮い起こし、額をシーツに埋めて拒む。次の瞬間、咳き込み、血と歯の混じった唾を吐いたが、それでもその粘液に濡れるのにも拘わらず、頑なに顔を隠そうとする。
黒王は濡れた身体から朦々と蒸気を立ちのぼらせながら、今や室内に残るただひとりとなった男を、静かな眼で見ていたが、やがて血を流す孔に気づいて口を寄せていった。
傷口を舐めるのは、動物の生まれつきの習い性なのだろう。太股を濡らす甘い液もくまなく舐めていく。熱いほどの体温と弾力を持つ舌を性器に這わされ、萎えていたはずの茎はこれで何度目か熱い芯を持ちはじめた。
そうする間に、身体の奥に打ち込まれた薬が愈々、酷い効果を表しはじめた。ラオウは生まれてこの方味わったことのないほどの疼きに襲われ、惑わされ、体深くから沸き上がる欲求を止める術もなく、
「戯れは……も…………。堪らぬ……」
自らの置かれた状況も体勢もわからぬまま、ただ持ち上げた腰を振り立てはじめた。
痛々しいほどに充実したペニスが滴を零しながら揺れ、その奥の口は覚えたばかりの快楽を再び捕らえようと、咥えるものを求めて戦慄いている。
「誰でも、い……は、早、……、……犯せ……!」
意志無き猥語を漏らし乱れる躰を、しばらく見つめていた黒王は、彼から離れると室内を円を描いて歩きはじめた。
時折小さく鼻を鳴らしながら巡るうちに白目を充血させていく。無惨な屍の数々には目もくれず、四肢で四肢の残骸を蹴散らしながら、二周、三周……そうしているうちに黒王の腹の下に兆しがあらわれた。形をあらわした凶暴な雄は、先端から半ばまでは鮮やかな桃色、そこから根本までは炭のように黒い。子どもの腕ほどの太さと長さの性器の先端が鞭のように撓り腹を叩く。
黒王はふたたび寝台へ歩み寄ると、ラオウに背後からのしかかった。ベッドに勢いよく乗せた両前足が敷布に滴を撒き散らし、無数の泥と血の染みを残す。一声高く嘶くと、左の首筋を血の滲むほど噛んで固定し、痛々しく腫れた後孔を、直刀で串刺しとばかりに穿っていく。
膨らみのない亀頭から全長の四分の一までが一度に差し込まれ、
「ふ、ぐァ!」
人間と明らかに違う性器に体が持ち上がるほどの勢いで貫かれ、ラオウの身体は直後、衝撃に崩れ落ちた。
見えない目を見開き、汗まみれの額を寝台に押しつける。何度目かの律動に合わせて背を震わせ、薄い胃液を吐いた。
悲痛な呻きに応え、黒王が首筋に鼻を当て優しく息を吹きかける。その黒曜石を思わせる瞳には、常と寸分変わらぬ冷静が宿っている。しかし、腰と大腿からは容赦なく律動を送り出し、撞木のようにラオウを打ちのめした。
粘膜の襞という襞を押し広げ、前立腺といわずあらゆる内壁を摩擦する行為は、生殖ではなくただの暴力に近い。ラオウは脳が白溶するような眩しい光を繰り返し見た。快楽に似た何かに翻弄され、呼吸もできぬほど突き動かされ、無意識に脚を開いて腰を揺らす。奇妙なほど反り返った自身の先からタラタラ薄い精液が溢れ、シーツに零れる。
馬の性交時間は短い。訳も分からず喘ぐラオウに構わず、黒王の動きは先に頂点に達した。前足で組み伏せた体を腹の下に掻き寄せると、ぐっと先端を潜り込ませる。内臓を突き破る直前まで入り込まれたラオウが息を呑んだその時、どくどくと熱い種液が注がれた。
「……!!」
黒王は射精を終えるや、野太い器官を一気に引き抜いた。ひとり高みに取り残されたラオウの、形を覚えたまま閉じきらない後孔から、飲料と混じった薄い白濁液が溢れ尻を太股を伝い落ちる。鮮血も混じえた多量の粘液がシーツに赤灰の斑を作る。
その時、もはや誰憚ることなく上げられていた苦鳴をかき消して、凄まじい破砕音がした。黒王の前足が寝台を踏み抜いたのだ。ラオウの上半身は折れた枠ごと下へ落ち、拘束していた鎖が意味をなくして弛む。だが、解放された当人はまだ、幸運に気づくことはできなかった。
「まだ、……… く、あ!」
薬で灼かれた内部の熱を持てあまし、往ききる術だけを切願する、その声に呼ばれるように黒王はふたたびラオウの秘所を清めはじめた。
先よりずっと奥まで入り込んだ舌が、弱い粘膜を侵す熱を絡めとり慰める。快楽と痛みと違和感がざらざらと混じり合った、もはや辛いだけの刺激の中、何度目か精を吐き出し尽くすとラオウの視界は暗転し、意識も闇に閉ざされた。
※ ※ ※
数分後、ラオウは頬や顎を濡らす生ぬるい水気によって人事不省から覚めた。顔色は再び青褪め切っているものの、生気が呼び覚まされている。しきりに擦りつけられているのが愛馬の首筋と気づいて、半ば無意識に唇を押しつけ濡れた毛皮から滴を取り込んでいたが、やがて、肩で息をしながら口を開いた。
「世話をかけ……、お前……で、……覚めた」
嗄れた喉から絞り出された一言の帯びる、ただならぬ気配が、鼻面をすり寄せかけた黒王の動きを止める。
「無事で、なにより……だが、なれば、俺の事など、捨て置くべきであった。……何度も言わせるな!」
怒気を露わに言い切って、体を起こそうとしたが絡んだ鎖に阻まれ、唸る。ラオウは次の瞬間、五本の鎖を紙のように容易く引きちぎった。
半壊したベッドの残骸の中に身を起こす。そこで目隠しを取り去った彼には、はじめて、室内に満ち満ちる血臭の理由が知れた。床一面の血の海に、かつて七つであったことが信じがたいほどに粉砕された人体が肉の島となって点在している。
常人であれば卒倒しかねないほどの酸鼻を極める光景だが、ラオウは一瞥して興味を失った。翻って自身の体を眺め回す。下肢を濡らした汚液は愛馬の献身によってあらかた拭い去られていたが、それでも縛められ打たれた跡が醜く残る。ラオウは見て口元を歪め……笑った。
「不覚よの」
言い捨てると右足を引きながら寝台の足元側に回る。額の汗をぬぐい、同じ場所に纏められていた衣服を纏うと出口へ向かおうとしたが、途中でふらつき、そのまま血だまりの脇へ膝をついた。
黒王は頭を高く掲げ、漆黒の瞳を煌めかせて立っている。
「構うな。この程度で参る俺ではない」
一対の凝視を感じ、ラオウは立ち上がろうと藻掻いた。憤怒に唇を歪め、萎えた四肢と数十秒間争う……が、ついに支えきれずまた倒れる。
と、鋭い嘶きが腥く澱んだ部屋の空気を引き裂いた。闇夜の奥から聞こえたなら悪鬼の誹りと疑うような、高く気味の悪い声で。
「笑うか、俺を ……は、は。たしかに、おかしかろう、このざま、では、」
不様に床を這う男に向かい、黒王号は猛った嘶きをあげ、大人の一抱えもある太い前脚を振り上げ蹄鉄で床を打ち鳴らした。雨水と泥と血の混じり合ったどす黒い飛沫が撒き散らされる。
「それでよい。お前も一軍の王。どこへなりと、ゆけ……」
閉じた目蓋の上に覆いがたい疲労を滲ませて、ラオウはまた嗤った。己自身を。
※ ※ ※
自嘲の響きが已んでしばらくの後、黒王は静かに近づいてラオウの背に鼻を押しつけた。今度は拒まれぬと知って膝を折り、寄り添って座り込む。すると眠り込んだかと思われた男の手が動き、濡れた毛皮に辿り着いた。横腹に幾筋も刻まれた、血を流すあたらしい傷に触れ、ラオウは重く息を吐いた。
さぐる手つきの優しさに黒王の眼の表情が丸くなる。お返しにとでもいうように肩に開いた傷を見つけて口をつけ、舐めはじめた。
「よせ、黒王。……俺には、ケンシロウ如きと引き分けし男の馬と、お前を呼ばすのが。何より、ふがいなくてならぬのだ……」
痛みと、情けを拒む天性の気質に力を灯され、ラオウは再び腕をあげて逃れようとした。しかし這って動いた距離はほんの半歩。一瞬後にはさらに近く巨体に寄られたばかりか、乾いた腹のほうへ抱き込まれる形になって眉根を寄せる。右前脚の球節を剔るような擦傷を目の前にして、苦渋の滴る声でこれだけ言った。
「許せ……いや、許さずに置け。俺はいま、お前に報いる術を持たぬ」
掠れた謝罪を聞き取って、黒王はひとつ鼻を鳴らすと、そっと相手の首筋を甘噛みした。そこには先ほど情交の際についた門歯の跡がある。体液で固まった口周りの和毛に肌を刺され、ひりつく痛みがぶりかえし、ラオウは身を竦めた。黒王はその気配にも、却って汚すのにも構わずラオウの首から目元までを愛しげに舐め、最後に鶴のように曲げた首を凹んだ下腹に押しつけた。
「まさか、あれで、気に入ったか?」
さすがに驚きを隠せずラオウは目を見開いた。問われた黒王は、相手の腹に熱心に額を擦りつけて、なにやら目を細めている。
「……ふ。かまわぬが……、俺におまえの仔は産めぬぞ」
土気色に黒ずんだ上に血の赤まで乗せられた悽愴な顔で、ラオウは笑った。先ほどの皮肉げなものでなく、ただ柔らかい拒絶で唇の両端を持ち上げる。
「それに、流石に、堪えたわ。立てぬと笑うてくれたが、筋違いとは、思わぬか」
これが拳王の吐く世にも稀な戯れ言と、知ってか知らずか、黒王は取り澄ました顔で耳だけ動かし聞いた。そうしながら届く限りの髪や手指を相手に甲斐甲斐しく、毛繕いの真似事に余念がない。
「なれば、いま暫し、つき合え。おまえの仔が見たくなった。いずれ我が王国の成りし秋に、相応しく……最上の雌馬を探してやろう、から……」
やがて契りの言葉もそこそこに、ラオウは漆黒の毛皮の上で、今度こそ眠りの淵に沈んだ。黒王は最後の言が発せられた途端、異存ありげに首を振ったのだが、もはや応えはないと知ってこちらも首を伸ばすと、長い睫毛を並べた瞼を閉じた。
外はすでに払暁、吹き募る風雨と耳を覆うほどの雷鳴が遅い春の到来を告げる。だが、再起を期する一対の人馬は知らぬげに、ただ深い闇の底に添い、束の間の休息を貪った。
終
- 作品名
- 黒王×ラオウ:SS:春嵐 [R20]
- 登録日時
- 2009/05/18 (Mon) 00:00
- 分類
- 文::危険(♂×♂)