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 シリウス・ブラックという名前は出来すぎていて、なんだか少し恥ずかしい。とリーマスは思っていた。
 彼はリーマスのルームメイトで、とても目立つ容姿をした少年だった。くっきりした自前のアイラインとそれを飾る繊細な睫毛、賢そうな額、まっすぐの黒髪。身振りもシャープでいつも堂々としている。とどめは名前だ。シリウス・ブラック。まるで体中に星か、あるいは電飾を纏っているような存在。
 リーマスは思わず笑ってしまったあとで、慌てて表情を引き締めた。
 彼はどこへ行っても、何をやっても常に人の注目を集める。リーマスが、半径1マイル以内には近づきたくない種類の人間だった。
 だいじょうぶ。リーマスは少し息を止めて心を落ち着ける。自分はやれる。何もかも慎重に心がければきっとうまくいく。やってみせる。
 あの「虫歯君」とだって、当り障りなく上手に付き合っていけるさ。
 虫歯君とはシリウス・ブラックの事である。少年はリーマスを見るといつも、なんともいえない顔をして左の頬に手を当てるのだ。それを見て、リーマスは心の中で「虫歯君」という容赦のない渾名を彼につけていた。
 シリウス・ブラックという名が何となく恥ずかしかったので。




お察しの通り、シリウスがリーマス君を見て頬を押さえるのは、
ジェームズに殴られたときに傷めた歯茎がうずくからです(笑)。

少年時代のリーマス君の性格を「繊細」「春」「黒」のうち
どれにしようかと思ったんですが、「春」でいっときます。
(繊細じゃない人が繊細な人を文章で書くと眼も当てられねぇ
ことになるんですよー。繊細なリーマス君が好きな人スミマセン)



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