3 いま自分達が何をしているかが分からなくなる。 ただ、ひどく気持ちが良いという事と。 自分が息を乱しているという事実だけ。 私の体の仕組みを知り尽くした手が動く。 その慣れた迷いのない動作に私は安心し、そして欲情する。 体は表に向けられ、また裏に返される。 生殖のために与えられた機能を、それとは全く無関係な別目的に費やしている。これは生物のルールから逸脱した行為だ。よく分かっている。 彼は私に快楽を与え、私も彼に快楽を返す。彼の忘我の表情を見ると、私は苦しくなるくらいの幸福を味わう。 私は自分の性別を忘れる。自分が人間であるという意識も薄れる。当然、過去やこれからの事も消え失せる。ただ、彼の手に応えていればいいのだ。楽器のように。 身体などはどうでもいい。ましてやモラルがどうしたというのだ。 彼が私に差し伸べる手にすがれないのなら、私などこの世に存在しないのと同じだ。 そして前後も分からず怯えて震えている彼を抱きしめてはいけないというのなら、私は一体何の為に存在しているというのだろう。 ともかく、私も彼も生きていて、こうやって抱き合っている。 今の私には、もうこれ以上、望むことは何もないように思えるのだ。 ええっと……まあいいです。深く考えず、 読んだらすぐ忘れましょう。 BACK |