33 2人ともひどく痩せていた。黒髪の男性と白髪混じりの鳶色をした頭の男性。資料に書いてある通り粗末な身なりをして、彼等はマグルの街を歩いていた。 「インペリオ!服従せよ!!」 男は指示そのままに、2人の前へ躍り出て呪文を唱えた。彼等は自分達の勢力とは逆陣営の先鋒だった。操作できれば利用方法は幾らでもある。 しかし顔を上げた彼等は2人とも、まったくリラックスした状態で男を見た。どうも術が効果を発揮しているようには見えない。しかし稀に特殊な体質の人間には効かないということはあっても、2人の人間のうちどちらにも作用しないという事態はあり得ない事だった。 男の見開かれた目を見て、少し同情するように鳶色の髪の男は呟く。 「その術はお互いに何百回と掛け合っているから耐性がついているんだ。うっかりかかると色々大変な目に遭うのでいい特訓になったよ」 黒髪の男が場違いに笑った。 「術に掛かったお前も、ある種の趣があって良かったんだが」 「……私は君のセクシーな掠れ声がたくさん聞けて大満足だったよ。パッドフット」 「……いつになく素直で協力的になっていたが、あれは本当に術に掛かっていたのか?」 「当たり前だろう。ディフィンド!裂けよ!」 真上にあった看板が男の頭に落ちてきて、深刻な音と共に砕け散った。意識の薄れゆく男の上で、「変態」だの「サディスト」だの言い争う2人の声はまだ続いている。男は、ああこの2人はマグルで言うところの「ゲイカップル」という関係なのだろうなあと考えた。そして何故だか急に全てが馬鹿らしくなり、田舎に帰ろうと彼は決意した。 ゲイカップル、とか言われるともう 取り返しの付かない感じがしますね。 2人は気にしてないか分かってないか どっちかという感じ。幸せな者勝ちですねえ。 2003/05/24 BACK |