旅行記2











 温度が高く湿度が低いタイで、あまりの冷たさにみずみずしい水滴をいっぱいつけて青ずむ水は、天国の飲み物のようです。
 タイの水は独特の匂いがしました。臭くはない、でも良い香りでもない。空気も食べ物もタイの水の味がします。フルーツだけが日本と同じ味。タイで売っている外国産ミネラルウォーターはタイの味がしませんがやや高い。
 タイでは値段と質に関連性が薄いのか、味の良いきゅうっと冷たい水が10バーツ(約30円:2006年当時)だったり、タイ味のぬるい水が50バーツだったりします(空港でした。空港は水を80バーツで売っていたり(日本のミネラルウォーターよりうんと高い!)1バーツ4円扱いだったり油断ならない)する。旅行しながら600ccペットボトルを空けた後、元の店に戻るのはむつかしく、パッケージも値段も様々なタイ水は次の店でどう買えるかわからない。ロシアンルーレットのようで楽しいです。





エメラルド寺院

「見せてやるぜ!東洋の意地を!」
という感じでした。ともかく金色で、細工で。回廊には絵があります。無数の猿が外壁を支えています。龍が仏典を守っています。巨大な悪魔が門番をしています。
 奥に尊いものがあって、広い空間があって天井と壁に装飾があるのは世界共通。そこの冷たい大理石の床にぺったりと3回伏せてお祈りをします。
 屋根に大ぶりの風鈴がびっしりと無数に飾ってあって、それが風に揺れて「りらーん、りらーん」と鳴りまくり、周囲の黄金は強烈な日光で乱反射、ハレーションを起こす中で奇怪な生物のオブジェがこちらを見ている様はなかなか幻想的でした。
 カメラを日本の明るさのままの露出にしていたのですが、もう黄金がピッカーピカカーと輝きすぎて、画面の大部分が真っ白になって飛んでいました…。













暁の寺

 彼女の所のルーピン先生が突然日光にやられて
 「捕まえられるものなら捕まえてごらん」
 と笑いながら走り出したのにはびっくりした。
 シリウスさんが
 「おい!その開いた瞳孔は何だリーマス!ちょっと待て!」
 と言いながら必死で追いかけていった。がんばれ。

 小さい陶器を無数にくっつけて作られているのですが、基調となる色が白でケーキみたいで可愛いです。













宮廷料理

 最後の日は奮発して、宮廷料理の店に予約して行きました。そりゃあもう入り口に身体のX線検査と荷物チェックがあるような、大きなホテルの中の大きな料理店です。店内はブラウンカラーを中心にした装飾で所々をゴールドで締めてあります。片側が全面ガラス張りになっていて、水のカスケードと緑の中の緑とも言うべき鮮やかな木々が見えます。雰囲気はひっそりと静かで、すこしだけ囁き声が聞こえます。照明は木陰くらいの感じに抑えてある。何もかもが最高です。
 そこで私は旅の仲間に酷いことをしました。トムヤムクンに入っていた小さな青トウガラシを私は食べたのですが彼女は無邪気に「どうですか?いけました?」と尋ねました。私は自分が唐辛子に強いというのを忘れて
「ちょっと辛かったですが、でも旅の思い出になりますよ」
と答えました。
 おかあさんの言う事を聞く子供のような彼女の目を思い出すといまも胸が痛みます。ぱくんと彼女はそれを食べました。ぱくんと。
 それからの旅の仲間の苦しみようは、サスペンス劇場で何か盛られた人のようでした。断末魔でした。倒してしまったかと思った。ゲームのファンファーレが鳴りました。中国の偉い皇帝に9回お辞儀をする人のように彼女は苦しみました。本当にごめんなさい。反省してます。
 ところでさすが宮廷料理だけあって、ものすごい種類の料理が出ました。最終の皿をやっつけた頃には肩で息をするくらいの満腹具合だったのですが、「次のデザートで終わりだねー」と言い合った時にことりと目の前に冷たく光るナイフとフォークが置かれて私達は恐怖でまん丸になった目で見詰めあいました。
 どうしようかと思いました。泣いて謝ろうかと考えました。でも「満腹なので料理は出さないで下さい」って英語で言えませんでした。マイ ストマック イズ デッド?
 いえ、デザート用のナイフとフォークだったのですが。





タイ式マッサージ

 薄暗い小さな部屋で、マットを2つ並べてそれは行われました。2人して逆さにされたり2つに折られたり関節を決められたり大忙しでした。途中、隣のマッサージ師の若い女の人が「オー」と驚いた声を上げたのでそちらを見ると、なんと私の旅の仲間の身体は背面に90度近く曲がっていました。哺乳類じゃなかったのですか?パスポートはどうやって取ったのです?という曲がりぶりでした。対する私の身体はどっちの方向にも全然曲がらず、マッサージ師の若い女の人の朗らかな笑いの種になりました。そして最後、「歯並びがかわいいよ」というフォロー(?)をもらいました。旅の仲間もホテルに帰ってから、足を180度開脚するという特技を見せて慰めて(?)くれました。日本に帰ったら酢を飲もうと思いました。





タイ

 好きなものが1つあるというのは、端子が1つ増えるのに似ていると思います。端子が1つでも多いと繋がりやすくなります。私達は八リポタでシリルで犬が好きなので、タイの旅行を1.2倍ほど楽しむことが出来ました。好きなもの、これからもどんどん増やしたいです。
 南の国というのは全般的に旅行者を選びます。ズルや、いい加減さや時間のルーズさやトラブルを許せない人はたぶん南方には行かないほうがいいでしょう(虫や暑さや不衛生も)でも割と何に対しても「ま、いっかー」と思える人には、あの国は色々な冒険や体験を約束してくれる国ですよ。遺跡にお寺に歓楽街、拳闘、エステ。そして、超美形の犬達(笑)。












BACK