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タイトル青か黒か灰色か
記事No1554
投稿日: 2017/02/07(Tue) 13:31
投稿者ぶんきょうく
こんにちは

先日話題になったおでんのマントの色が何色かの件ですが、TL読み返すと言葉不足で伝わったかしら?
と思いましたので整理しに参りました_(:3ゝ∠)_

機種依存文字でお化けが出まくったので、特殊な文字もローマ字で打ってます。ご了承下さい。

『オージンのいる風景』p.235注(9)より

アイスランド語のblaは、「青い、または黒い」。
『ヴォルスンガ・サガ』11章ではオージンは"heklu bla"(青い外套)をまとっている。
----
該当部分の谷口訳は「灰色のマント」(『アイスランド サガ』『ヴォルスンガ・サガ、pp.549)

底本 R.G.Finch, The Saga of the Volsungs Nelson's Icelandic texts London and Edinburgh 1965(英語対訳でした_(:3ゝ∠)_)

参照 W, Ranisch, Die Volsugasaga Berlin 1908,(ドイツ語)
G. Jonnson, Volsuga saga In : Forakdar sogur nordurlanda I. Reykjavik 1959(アイスランド語)

菅原訳は「青黒い上衣」(『北欧神話』p.104)

底本 Jonsson, Gudni Fornaldar sögur Nordurlanda I-IV[Reykjavik]: Islendingasagnautgafan,1954
(アイスランド語)

残念ながら菅原の『ヴォルスンガ・サガ』は図書館で借りたけど市場に出回らなくて
長い事探しているんですが未所持なんです(´・ω・`)

話題とは直接関係ないですけど、菅原版『ヴォルスンガ・サガ』で印象的だったのは「菅原先生は処女厨だったのか!」
でした。まあ、ブリュンヒルドとシグルズは清い仲だから子供なんて出来るわけないよ、っていう主張も、
自分ちとシグルズは関係あるんだよ!って言いたい人がアスラウグとラグナルに繋がるように話を捏造するように筆者に
圧力をかけたしたんだって主張もそれなりに理解出来るし、ラグナル・ロズブロークの途中でアスラウグが改名する流れが
不自然すぎるので、それもアリかなと常々思っています(が証拠がない)。
---

アイスランド人のサガで、人を殺害する時に青い服を着る描写あるが、(『殺しのグルームのサガ』8章、
『フレイ神ゴジのフラウゲンケルのサガ』6章)青い服は当時のアイスランドでは殺しの衣装である。

(もともとこの注(9)は、『オージンのいる風景』第八章 オージン信仰の名残りpp.208 で触れられている
『ギースリのサガ』16章でギースリがソルグリームを殺すときに何故青い外套を着ていたかを説明する注釈です。)

そんでもって、ぐぐる先生の方ですがさっくり翻訳すると

The Hrafnista Sagas 211ページ 注27

古ノルド語で"blaflekkott hekla"。Bardar saga Snaefellsass(スナイフェルスのバルズのサガ)18章にも、オーディン的な
人物が着る「青いまだら模様の、頭巾のついた外套」(blsflekkott skauthekla)があり、そしてhardar saga(ハルズのサガ)
15章でもオーディンの化身が「青い縞模様の外套」(blarend hekla)に身を包む。『ヴォルスンガ・サガ』でも
オーディンが「まだら模様の外套」(hekla flekott)を着て現れる一場面がある。blarという色は、もともと濃い藍色
(blue-black)を意味し、他の資料によればオーディンと関係しており、殺害を目論むサガの英雄はこの色を
着る傾向が見られる。(Wolf, The Color Blue", pp.71-72)

という感じです。同じ色が分かれた原因は解釈論っぽいですね、やっぱり。
その後は伝言ゲームというか、神話辞典的な何かを執筆する人が時代によって青くしたり黒くしたりという感じなのかなと。
読んだ本しか使わないだろうし(´・ω・`)
最近の人は今も手に入り易い『古代北欧歌謡集』に依る人が多いのではないでしょうか。
色の解釈的には『北欧神話』の菅原訳が一番近かった(でも伝わらない)かも。
いつか、「おでんは濃藍色を纏ってました」と書かれる日は来るかな?来ないかな?
ちなみに私は調べてみるまで出典による違いで青か黒のいずれか(どっちでもいいじゃん、でも青)でした_(:3ゝ∠)_

タイトルRe: 青か黒か灰色か
記事No1555
投稿日: 2017/02/07(Tue) 14:05
投稿者ぶんきょうく
すみません(´・ω・`)
投下してから言葉足らずだったなーと思って戻ってきました。

> 『オージンのいる風景』p.235注(9)より
>
> アイスランド語のblaは、「青い、または黒い」。
> 『ヴォルスンガ・サガ』11章ではオージンは"heklu bla"(青い外套)をまとっている。

> アイスランド人のサガで、人を殺害する時に青い服を着る描写あるが、(『殺しのグルームのサガ』8章、
> 『フレイ神ゴジのフラウゲンケルのサガ』6章)青い服は当時のアイスランドでは殺しの衣装である。


と、書きましたが、↑は注釈の概要で、かなりかいつまんでしまっています。あと、

『フレイ神ゴジのフラウゲンケルのサガ』×
『フレイ神ゴジのフラヴンゲルのサガ』○

です。どうしてこうなった_(:3ゝ∠)_恥ずかしい

あと、『オージンのいる〜』の注釈にThe Hrafnista Sagas 211ページ 注27で紹介されているサガのタイトルの和訳が載っていたので、一応転載します。
(書き込む前に確認しろよという…)

Bardar saga Snaefellsass(スナイフェルスのバルズのサガ)拙訳
→『スネーッフェッル・アースのバールズのサガ』

hardar saga(ハルズのサガ)拙訳
→『ホルズのサガ』

以上です。

タイトル元の染料がウォードなら、おそらく濃紺が正解だろうなと…
記事No1558
投稿日: 2017/02/08(Wed) 22:58
投稿者岡沢 秋
某所でも書きましたが、どうも北欧でいう青の染料がウォードのようなので、
>blarという色は、もともと濃い藍色(blue-black)を意味し
というのがおそらく正解、日本語で言うと「藍色」が妥当なんだと思います。ウォードも藍も同じインディゴ染料なので。

そうすると色の解釈が分かれた理由も分かるんですよ、染めつけ直後は黒いけど、だんだん色が落ちていく染料だから。(ブルージーンズなんかは、わざと洗濯して色を薄くしてます)


青い服が殺しの服だとするソースがちょっと自分は今のところ納得できていないのですが(オーディンは自ら戦わない/女性も着る色では?)、ケルトのほうでピクト人が戦闘時にするペインティングの染料がウォードだったという面白そうな資料はありました。インディゴ染料は肌に染めつくとしばらくは洗っても落ちないので、確かにペインティング用にはよさそうだし、元々ボディペインティングに青を使ってたのを衣服に置き換えたんならありそうかなぁとか。


>いつか、「おでんは濃藍色を纏ってました」と書かれる日は来るかな?来ないかな?

どうなんだろう(笑
オーディンはいつも擦り切れた服を着て出てくるので、色の落ちた藍染めなら灰色になっているかもしれないです。(それが"まだら模様"の正体かも? 原語スキルがないので適当ですが)

例によって4月頭までは繁忙期なので、調べられた分だけ適当にまとめとこうかなと思います。

タイトルRe: 元の染料がウォードなら、おそらく濃紺が正解だろうなと…
記事No1560
投稿日: 2017/02/09(Thu) 01:18
投稿者ぶんきょうく
お疲れ様です。

> 青い服が殺しの服だとするソースがちょっと自分は今のところ納得できていないのですが(オーディンは自ら戦わない/女性も着る色では?)、

えーと、普段着る服に青はもちろんあるでしょう。けど、「絶対○○殺すマン」なときの
勝負カラーなのだと私は思いました。
そして『殺しのグルームのサガ』も『ギースリのサガ』も青を着て殺す時の凶器が「手槍」なんです。
そういった描写から、願掛け的な意味でこの色を纏うと言う説に私は魅力を感じます。
オーディンの色をまとい、槍で殺す。相手が死ぬのが寝込みを襲われる藁の上でも
「藁の死」ではない、という意味もありそうだなと妄想しますw

>ケルトのほうでピクト人が戦闘時にするペインティングの染料がウォードだったという
>面白そうな資料はありました。インディゴ染料は肌に染めつくとしばらくは洗っても落ちないので、
>確かにペインティング用にはよさそうだし、元々ボディペインティングに青を使ってたのを衣服に
>置き換えたんならありそうかなぁとか。

オンラインなら同じところ読んだかもしれませんw
薬効もあるとかなんとか…。
映画の『ブレイブハート』でも戦闘色の青塗りありましたが、当時のスコッチにそんな習慣はないないない…。

ちなみに『ゲルマニア』に登場するヘリイー族という部族なんですが「黒い盾を持ち、
全身を塗って(色は不明)夜陰に紛れて敵を襲うため、他の部族に非常に恐れられた」
というネタもありまして、彼らがエインヘリャルやワイルド・ハントののモデルに
なったのではないかという説もあるそうです。(現在Wikipedia英語版からほんにゃく
しています)、が、この記事の英語が短いがクソでしてなぁ…(たまによくある)
何で何色に塗ったか書いてくれなかったんだよ、タキトゥス_(:3ゝ∠)_

> 例によって4月頭までは繁忙期なので、調べられた分だけ適当にまとめとこうかなと思います。

年度末ですもんね(´・ω・`)
お疲れ様なのです。

タイトルRe^2: 元の染料がウォードなら、おそらく濃紺が正解だろうなと…
記事No1564
投稿日: 2017/02/09(Thu) 20:21
投稿者岡沢 秋
> えーと、普段着る服に青はもちろんあるでしょう。けど、「絶対○○殺すマン」なときの
> 勝負カラーなのだと私は思いました。
> そして『殺しのグルームのサガ』も『ギースリのサガ』も青を着て殺す時の凶器が「手槍」なんです。
> そういった描写から、願掛け的な意味でこの色を纏うと言う説に私は魅力を感じます。

なるほど、それは面白いですね。

ただ引っ掛かるのは、「どうして儀式用かお出かけ用の服じゃないと言えるか?」ということです。天然の青色染料は貴重品だったはずなので、おそらくその色を切られる=首領(ゴジ)の地位を表す みたいなアイデンティティの意味合いもあったはず。とすると勝負服ではあるけど決闘用とするのは… 血しぶき浴びたら汚れるし勿体無い。

エジプトのファラオがかぶる青い冠が、戦闘シーンによく描かれることからかつては「戦闘冠」と正しくない呼ばれ方をしていたのと同じパターンだったりするんじゃないのかな…。

#サガは、史実資料としてはあまり信用ならないというのもあり
#特に決闘シーンなどは「こうだったらいいな」的な脚色多め
##綺麗な解釈を信じられたあの頃が懐かしい

タイトルRe^3: 元の染料がウォードなら、おそらく濃紺が正解だろうなと…
記事No1565
投稿日: 2017/02/10(Fri) 10:45
投稿者ぶんきょうく
> ただ引っ掛かるのは、「どうして儀式用かお出かけ用の服じゃないと言えるか?」ということです。天然の青色染料は貴重品だったはずなので、おそらくその色を切られる=首領(ゴジ)の地位を表す みたいなアイデンティティの意味合いもあったはず。とすると勝負服ではあるけど決闘用とするのは… 血しぶき浴びたら汚れるし勿体無い。
>
> エジプトのファラオがかぶる青い冠が、戦闘シーンによく描かれることからかつては「戦闘冠」と正しくない呼ばれ方をしていたのと同じパターンだったりするんじゃないのかな…。
>
> #サガは、史実資料としてはあまり信用ならないというのもあり
> #特に決闘シーンなどは「こうだったらいいな」的な脚色多め
> ##綺麗な解釈を信じられたあの頃が懐かしい

それも含めてw
「アイスランド人のサガ」って結局実際に物事を直接見聞きしたのではなく
どこそこで○○が××したという伝聞で伝わったものを再話して残すものなので脚色は
多いにあると思います。誰も見てないわけですから。

ここで私が言うのは「聴衆がそういうシチュエーションでどのような姿を望み、語り手が
どのように語ろうとしたかという、出来事を伝える段階でどう脚色するかという当時の
考え方を含めます(事実ではなく)
事物を語る上で聴衆のニーズを汲むのも語り手の役割だと思いますし。

今の英国圏(ヨーロッパも?)で臆病者を「黄色」と言ったりするけど、ヴァイキングは
「その時代に物事と色をどう関連づけたのかな?だったらその色はどこから来たのかな?
ということに興味湧く」ぐらいの意味と捉えてください。