クリスマス。
この地域でも大きい部類に入る工藤家にいるのは、一応、居候と言う身分であるオレと青子だけだ。
家主である新一は事件だって言って、蘭ちゃん連れて山奥の山荘にいった。
最初、蘭ちゃんは不満顔だったが、この山奥に行くのは以前から新一が計画してあったことであり、事件は物のついでらしい。
とは言っても、その方面で事件があったのは数か月前で、一向に解決を見ないその事件の依頼があったのはつい最近。
最も、新一も『事件』の事が頭にあったからその方面にしたんだと思うけど。
平ちゃんと和葉ちゃんは大阪。
事件とか言ってたけど、こっちもたぶんそれだけじゃないだろう。
平ちゃん達の場合、実家に顔を出さなくてはならないっていう大問題が待っているらしく、和葉ちゃんの父親である遠山刑事部長に会うのが怖いって、そう言えば平ちゃんが言ってたのを思い出す。
大変だよな。
人ごと…本当に人事の様に呟くオレに平ちゃんはあきれ顔だった。
そんなこんなで、この工藤邸にはオレと青子の二人しかいない。
で、今日はクリスマス。
青子がパーティーをやろうと言いだした。
二人きりだけど、どこか食べに行くんじゃなくって。
それもいいなって思った。
青子と二人っきりのクリスマス。
…実は…初めてかも知れない。
…っつーか、初めてだ!!!!
いっつも、クラスの奴らとクリスマスパーティーしてた。
去年もクラスの奴らとクリスマスパーティーやった!!
その後は、二人っきりになれたけど、最初っから二人っきりは…初めてだ!!!!
…って思ったら、緊張し始める。
「快斗ぉ」
やべぇ、マジで緊張する。
どうしよう。
…って緊張するのもどうかと思うけど。
「快斗?」
不意に青子がオレの顔をのぞき込む。
「うわぁっっ。青子、驚かすなよっ」
「青子、さっきから快斗のこと呼んでたんだけど、聞こえなかったの?」
…マジ?
そう言えば、オレを呼ぶ声が聞こえたような…気が…。
「もぉ、快斗ってば、ホント、しょうがないんだから」
「ワリィ。で、何?」
「あのね、買い物、行かない?クリスマスパーティーの準備。快斗と二人っきりだけど、ちゃんとしたもの、作りたいの。いいよね」
「あぁ、じゃあ、行くか」
「うん」
青子と買い物に行く。
ケーキ買って、ケンタッキー行って、お持ち帰りして、それから、シャンパンかって。 青子が、スパゲティも食べたいって言ったからパスタとパスタソースも買って。
なんか見てたら食べたくなったから、アイスも買って。
そうそう、クラッカーも忘れないで。
後、マジックのネタも仕込んでおく。
帰宅して、ツリーの明かりつけて。
キャンドルもつけて。
パスタ茹でて、サラダ作って、ソース温めて。
シャンパンは冷やしておいて。
そうしてたら、いつの間にか青子が消えた。
お皿を食卓の上に並べていたのは、覚えてる。
「ワイングラスとシャンパングラスってどう違うの?」
って青子が聞いてきて…、それに答えて、青子がサラダを盛りつけてて、オレがパスタは少しずついろいろな味のソースに絡めて盛りつけて、気付いたら青子が消えてた。
…ドコに行ったんだろう??
そう言えば、パーティーだからちゃんと正装しようねって言った青子の言葉を思いだした。
から、着替えに行ったんだと思う。
だいたい準備は出来たから、オレも着替えに行く。
正装って言ったら、やっぱ怪盗キッドの正装でしょう。
なんて思いながら、リビングに戻ると、やっぱり青子は戻っていなかった。
所在なげにソファに座って待っていたら、青子が扉から顔を出す。
「青子、どうしたんだよ」
「快斗、あのね、青子今、すっごい恥ずかしいの」
青子の言葉に首を傾げる。
「何だよ。別に恥ずかしがることねぇじゃん。オレと青子の二人きり何だぜ?」
「そうだけど………」
「何があった?」
「何か、あったって訳じゃないんだよ。ただ…この格好……。やっぱり、青子着替えてくる」
「まった」
戻ろうとする青子をオレは呼び止める。
格好って言ったよな。
青子がしてる格好が見てみたいっっ。
「……何?」
「おいで、青子」
「ヤダっっ」
「ヤダじゃない。いいから、おいで」
「変だもん」
「見せてないのに、言うな。変だったら、変って言うから」
「それもヤダ」
「いいから、おいで、青子」
「……何も言わない?変って思わない?言っておくけど、青子が選んだんじゃないんだよ。恵子がね、選んだんだからね」
「わーった。いいから、おいで」
「むーーーーー」
オレの言葉に、青子は渋々その姿を見せる。
白いレースの付いたフリフリのワンピース。
に、白い、タイツ……。
ってコレって、完璧、ロリータファッションってヤツ?????
じゃねぇの?
普段、どっちかってーと、活動的なファッションが多い青子。
が、滅多にしない、女の子女の子してるファッション。
ロリータなんて以ての外。
って言うか、本人は似合わないと思ってるから、滅多にしない格好。
を、今、オレの前でしてる。
って言うか、恵子、エライ!!!
お前、良く、このファッションを青子にさせたよっ。
マジ、カワイいんだけどっっ。
セクシー系もいいけど、こういう、ロリータ系もいいなぁ。
「快斗ぉっっ。何、変な顔してるの?」
「え?変な顔?オレ、してる?」
「なんか、エッチなこと考えてる時の快斗の顔だもんっっ。青子、やっぱり、着替えてくるっっ」
「駄目っ。勿体ない」
「もったいなくないもん。青子、すっごい恥ずかしいんだからねっっ。恵子がコレって言ってこの服出した時、青子、どうしようって思ったんだからねっ。こんなの青子似合わないんだからっっ」
…やっぱ、似合わないって思ってるよ。
っつーか、マジカワイくって、マジ似合ってるんですけど……。
「あのさぁ、青子、オレはその青子ちゃんにメロメロになってるんですけど」
「…なっ何言ってるのよっ。快斗のバカっ」
「バカっつーなよ。マジでメロメロな訳?お前さ、自分で似合ってないって言ってるけど、マジ似合ってんだぜ?すっげーカワイイし。正直いって、新一達いなくってほっとしてる。こんな青子、アイツ等には見せたくないしな」
そう、それが正直な感想。
いくら、アイツ等が自分達の彼女が一番だからって言ったって、視界に入れられるの事態我慢出来ない。
……っつーか、マジでメロメロじゃん。
オレって。
「……ホントに、変じゃない?」
「変じゃねぇって。オレが保証する」
「……わかった」
どこか、渋々って感じの青子。
全然、カワイイんだけどな。
「それでは、青子さん、これから二人っきりのクリスマスパーティーを始めましょう。この、怪盗キッドが華麗に演出して見せますよ」
そう言って、恭しく青子に手をさしのべる。
「…うん、よろしくね、キッド」
そう言って、青子はニッコリと微笑む。
…なんか、ムカツク。
キッドに微笑んだ感じがする。
オレ、黒羽快斗じゃなくって。
「……やっぱ、いつもの通り、オレで行く。青子にキッドって呼ばれんのなんかやだ」
そう言ったら、青子が笑う。
「快斗って…すっごいヤキモチ焼きだよね」
「何でだよ」
「…だって、青子が快斗のことキッドって呼ぶのやなんでしょ?快斗もキッドも快斗でしょ?青子にしたら、もう、どっちも一緒なんだけどなぁ」
そう言って青子はもう一度、オレにニッコリと微笑む。
やっぱ、オレって…青子に勝てないなぁ。
どっちも…快斗も、怪盗キッドもオレって全部認めてくれる青子には。
「快斗、早く早く。青子、お腹空いちゃった」
青子がオレを呼ぶ。
手にはシャンパンとシャンパングラス。
「今行くよ。青子、メリークリスマス」
「快斗、ハッピークリスマスっ」