暖かい場所を求めて腕を伸ばす。
閉じこめれば、陽だまりと同じ暖かさを感じる。
このままの時間を。
今日は天気予報通りに朝から雨が降っている。
冷たい冬の雨。
最も、昨日までホントに寒くって、これで雨降ったら雪だ!!
って大騒ぎしていた中での雨なのだから……すこしは温かいのかも知れない。
雨の日は、あんまり出かけたくない。
って言うのは誰も一緒だよね。
嫌いなのも一緒かな。
洗濯物乾かないし。
なんて言ったら撩に所帯じみてる………なんて言われるんだ。
誰のせいだ、誰の!!!
あとは……外にも行きたくなくなるし、伝言板!!それも見に行けない。
いけなくはないけど、行くたくなくなる。
基本的に雨の日って不都合よね。
うん。
ふと、気が付く。
さっきまで返事していた撩の声がない。
いるはずの所を見てみれば、寝てる。
そう言えば、生返事だったっけ……。
掃除してた時の撩の返事は。
えっちな雑誌見てる時とか好みの女の人が出てるテレビ見てる時もそう。
まったく、あたしの事どう思ってるんだ!!!
って怒鳴りたくなるわよね。
……随分、深く眠ってる。
髪の毛、触っても気付かないなんて。
…そっか疲れてるよね。
昨日は依頼終わったばっかりで(しかも冴子さんの依頼)。
怪我しなかったのは良かったんだけど、心配したんだよ。
冴子さんの依頼の時ってほとんど連れてってくれないもんね。
…撩…………なにも被らないこのままじゃ、風邪引くよね。
………撩の部屋まで行くの面倒だから、あたしの部屋から毛布持ってきて撩にかけてあげよう。
部屋に戻って毛布を取って、そっと撩にかけてみる。
……なんか、気持ち良さそうだよね。
寒いんだけど、一応暖房掛かってるけど、昼ねって気持ちいいよね。
あたしも、寝ちゃおうかな。
なんて、思ってたら、腕引っ張られて、抱きかかえられた。
「ちょ、ちょっと」
「おまー、うるさいから、少し静かにしてろ」
「うるさいって。何よ」
「パタパタ、足音とか、髪の毛さわんなよ……」
「寝ぼけてるの」
「しらねー……」
起きてるんじゃないのよ。
「だから、お前も寝るんだよ」
そう言ってしっかりとあたしを抱え込む。
「動けないよ」
「知るか」
知るかって………。
温かいな………。
「外,静かだね」
「…………」
返事なくてもいいから聞いててね。
「あたしは、撩とねこうやっていられて幸せだよ。この先もさ、こうやって二人でいられたら一番いいなぁ」
何があっても、何が起きても。
撩と一緒なら平気。
どんなに血が流れても、どんなにあたしが怪我しても。
撩があたしの側で生きていてくれればそれでいい。
他には、本当はなにも望まないんだ。
撩があたしの側にいる事があたしの幸せなんだから。
「……叶えてやるよ…お前の願いぐらい。どんな事があってもな……」
くぐもった声は、静かにあたしの中に落ちていく。
撩の存在は、あたしにとって陽だまりだ。
撩が入れば、それで暖かいし、幸せなんだ。
でも…あたしは、あなたの陽だまりになれていますか?
あなたは、ずっと暗い世界で生きてきている。
これまでも、今も、これからも。
あたしはあなたを暗い世界でも暖めてあげられてますか?
あたしはあなたがいれば幸せだけれど、あなたにとってあたしの存在は、なくてもいいものですか?
それは、とてもあたしの中で不安にさせる。
でもあなたをあたしで守らせてください。
あなたが全身であたしを守ってくれているように。
「なぁ、おれの願い、お前叶えてくれるか?」
おれの問いに香は静かに答える。
半分眠ってるかも知れない。
「おれの願いもお前と一緒だよ。お前がいれば、おれはそれでいいんだよ」
陽だまりは、おれの側にある事をおれはずっと気が付かないでいた。
それを作ってくれたのは紛れもなく香。
香の存在全てに乞う。
存在の全てで守らせて欲しいと。
血で染まっているおれだけれど、お前をその血が汚すかも知れないけれど、それでも守らせて欲しいと。
雨は静かに降り注ぐ。
浄化の雨なんていらないから、ただ、守る事だけを。
お互いがお互いを必要としているから。
ただお互いの暖かさだけが、真実だった。