「あたしは忙しいから無理よ」
お姉ちゃんには軽く断られる。
うん、うん。
こうなること予想してあたしは上の二人に頼んでみたのだ。
だってそうすれば公明正大に二人に依頼できるってわけでしょう?
「ごめんねぇ」
と、殊更愁傷に謝る一番上の姉だったがその顔はどこか楽しそうだった。
力いっぱいひねり上げられたそこはものすごく痛い。
可愛い妹なのだから手加減してくれたっていいだろうに、その親の敵と言わんばかりの力強さに、時代錯誤な予告状をくれて寄越したもうこの会場に来ているであろう人物に知っている限りの罵詈雑言を浴びせたくなった。
お姉ちゃんの上司?とも言っていいのか分からない人はシツコク冴羽さんの鼻をつまみあげている。
黙ってやられる人じゃない冴羽さんも意地になってやり返しいるのを見ると男の人ってどうして大人になっても子供なんだろうと思いたくなる。
あぁ、一緒にいる香さんが気の毒だわ。
まったく、あれじゃ子供の喧嘩と一緒よ。
「ホントね」
あたしの呟きを聞いてた香さんは苦笑しながら頷く。
相変わらず綺麗なお姉さんな香さん。
お姉ちゃん達との色っぽさって言う綺麗じゃなくってどっちかって言うと、こう純粋さ?って言う方が際立つ綺麗?な感じの香さん。
は、今日来ているブランドがいつもと違う。
あたしの記憶に間違いがなければ、あれはエリ・キタハラの新ブランドBeau ElleーMignon et …ーだ。フランス語で『ハンサムな彼女』と言う意味らしい。
なんというか香さんにぴったりの言葉だ。
ちなみにブランドイメージキャラクターになってるのは香さんだ。
情報源は麗香お姉ちゃんの斜め前で、冴羽さん達の前に住んでいる金髪のジャーナリスト。
ちなみに対になるメンズもあるらしい。
名前が『素直にならない男』のフランス語だったら、ちょっと面白い。
香さんがイメージキャラならメンズのイメージキャラは冴羽さんね絶対に。
そこまで取材が出来なかったっていうんだから金髪のジャーナリストの腕はしれると言うもの………。
って言うか、元冴羽さんのパートナーだったんだって。
あり得ないわ、女好きの冴羽さんのパートナーが男だったなんて!!!
詳しく聞けば、ビジネスライクのパートナーで、私生活は当然別(そりゃ当たり前ね)遊びは共に繰り出しナンパ‥‥‥‥‥‥‥、それ聞いた瞬間にあの話(撩と香がモデルの小説)に出そうと思ったけどやめる事にした。
でも、今思ったけど、それはそれで面白そうかも。
ビジネスライクの元パートナー、冴羽さんの命を狙う!!!
良いわ、絶対、良いわよ。
それ、取材しなきゃ。
なんて思ってたら遠目にも目立つ主催者が。
尊敬する作家先生。
ちなみに息子は探偵。
まえ…その先生に「息子さんをモデルに書く事もあるんですか?」なんて聞いてみた事がある。
そしたら
「あいつが、もう少し成長したらネタにしようとは思ってるんだけどね。まだ、まだわたしの足下には及ばないんだよ」
なんてさりげなく言えちゃうんだからすごいわよね。
「唯香、行かねえのか?」
「行きます!!!行くわよ!!!」
「もう、撩、唯香ちゃんを急かさないの。さ、あんな奴は放っておいてのんびりと回りましょう」
展示品は目玉の宝石だけじゃないんだから。
とにこやかに言う香さんは冴羽さんと違ってヤッパリいい人だわ。
と、周囲に目をやり何かネタは無いのかと探し歩いているあたしはやっぱり作家なんだなぁと思わず考えてしまった。。
冴羽さんvs怪盗。
いや、共闘のほうが面白いかもねぇ〜。
これから起こるであろう出来事に期待に胸を膨らませながら。