「ダメだ」
「何で」
「何でもだ!!」
期末試験が終わった日。
わたしはお父さんにあることを告げた。
反対されることは分かってた。
ダメだって言うことは分かってた。
でも、理由ぐらい教えてくれたって良いじゃない。
どうして?
「何で?」
「何でもだ」
「探偵だから?」
「そうだ、探偵はろくなやつがいねー」
「じゃあ、お父さんもろくなやつじゃないんだ」
「そうだ、だからダメだ」
「お父さんのバカ!!!!!」
この会話が始ってすでに2週間。
学校は夏休みに入ろうとしていた。
ここのところ顔を合わせれば聞いて見るという状況に今はない。
だいたい、朝はわたしはお父さんより起きるの早いし、お父さんの朝ご飯を用意をして新一の家に行って新一起こして新一と朝ご飯一緒に食べ、その後学校に行く。
夕方はお父さんの夕飯の用意をして新一と夕飯一緒に食べてついでにお風呂に入って家ではもう眠れる状況にして帰るからお父さんに会うことはほとんどない。
はっきり言って避けてる。
でも、運悪くその日は会ってしまった。
で、わたしの口をついて出てくる言葉は、
「お父さん、わたし新一と暮らしていいでしょ」
である。
帰ってくる言葉は
「ダメだ」
…………。
新一が一度来て言っても門前払いを食らったらしい。
その時わたしは園子と志保さんと一緒に買い物に出かけていたから知らなくって、家に帰ったら
「夕飯はいらねー」
と言う書き置きがしてあった。
新一のところにいつものように行ってみると、いつもは出迎えてくれるはずの新一が何故かソファの上にねっ転がっていた。
聞いて見ればお父さんに背負い投げをされたらしい。
手加減なしだから体中の節々が痛いって言ってた。
どうしてなんだろう。
わたしはただ新一と一緒に暮したいだけなのに。
「お父さん、わたしはただ新一と一緒にいたいだけなの。他の人なんて全然考えられないし、新一じゃなくちゃ嫌なの。ただ好きな人の側にいたいって言う理由じゃダメなの?他に立派な理由がなくちゃダメなの?」
「どんな理由があろうとも、新一だけはダメだ」
「どうして」
「どうしてもだ!!!!!蘭、いい加減にしろ」
「何よ、お父さんのバカ!!!!!!」
もうダメだよ。
お父さんのバカ!
新一の側にいたいよ。
「ららら…あおぞぉらのしぃたてをつないであるいていこうよぉもしこさめがふっていたぁってかさもささぁずにキスをしようぉ (somebody loves you song by 華原朋美)」
携帯の着信音がなる。
この着信は青子ちゃんだ。
「青子だよ。蘭ちゃんどうしてる?明日っからの夏休み遊ぼうよ」
突然の青子ちゃんからの電話。
わたしの頭の中にある考えがもたげてくる。
お父さんは…機嫌を直すために外に飲みに行った。
言うなら今のうち。
「青子ちゃん、お願いがあるの!わたしのこと当分泊めて」
そう、家出よ。
家出するわ。
園子の所は明日っから旅行だし、新一のところはすぐに見つかる。
第一、同棲しようと考えている人間のところに家出したら本当に許してもらえなくなる。
だったら、お父さんに面識がない友達。
つまり学校以外の友達。
「蘭ちゃんどうしたの急に?」
「お願い。全部言うから泊めて」
「うん青子は別に良いよ。あ、ただ快斗も一緒だけど良いよね」
全然構わない。
むしろ快斗君がいてくれたほうが好都合。
快斗君だったら新一の情報逐一手に入れられるだろうし、逃げる手段だって考えてくれるはずよ。
「青子ちゃん。無理言ってごめんね」
「青子は全然良いよ」
「ホントに?じゃあ、もう一つ、今から行っていい?」
無理なお願いだと思ってる。
でも、今から行かないと無理。
明日になったらお父さんに捕まるわ。
「うん、良いよ」
「ごめんね」
「じゃあ、快斗と一緒に迎えに行くね」
青子ちゃんはそう言って電話を切る。
……青子ちゃんわたしの家知ってた?
あ、快斗君なら知ってるか。
一度、来たから。
あの時はホントにびっくりしたなぁ。
新一だと思っちゃったんだもんね。
数分後もう一度青子ちゃん専用着信で携帯が鳴る。
「今、下にいるの。蘭ちゃん大丈夫?」
窓から下を眺めると一台の車が止まっていた。
その車の窓から青子ちゃんが上を見上げていた。
「あ、蘭ちゃん」
そう言って青子ちゃんは手を振る。
「今からいく」
そう言ってわたしは戸締まりをし、家を出て行く。
家出するわ。
お父さんが新一のこと許してくれるまで新一に会わない。
お父さんにもね。
出来るのかな……。
ちょっと不安。
中森青子宅
「家出ーーーーーーーー??」
案の定、快斗君と青子ちゃんは驚く。
「蘭ちゃんが家出するとは思わなかった」
「ホントに?」
快斗君の言葉に驚く。
わたしだってやるときはやるのよ。
「新一は知ってるの?」
「知らないわでも、すぐに分かる。家に書き置き残したから。お父さんの事だから新一のところに絶対に聞きに行くはずよ」
「新一君心配するよ」
「分かってる」
家出の理由を二人に話すとまた二人は驚く。
「同棲相手の家にはいけないから……」
「うん……。新一の家に行ったら一発でお父さんに見つかるし。どうせ家出するんだったら見つからないほうが良いと思ったの。青子ちゃんだったらお父さんと面識ないでしょ。最初は大阪にしようかなって思ったんだけどそれはとりあえず最後の家出場所って事で……」
あの短時間の中でわれながらよく考えたと思う。
お父さんは必ず新一に連絡する。
青子ちゃんのところだったら結構時間は稼げるはず。
その間に和葉ちゃんのところに逃げる!!!
うまくいくかな……。
和葉ちゃんに連絡まだしてないけれど。
「蘭ちゃん、青子、協力してあげるね」
青子ちゃんがわたしの手を握り言ってくれる。
「ホントに?」
「うん、蘭ちゃん今までいっぱいつらいこと合ったんでしょう?快斗から聞いたよ、工藤君のこと……。青子も蘭ちゃんの気持ちわかる。好きな人の側に居たいよね。だから青子、協力してあげるね」
青子ちゃんありがとう。
「快斗も、協力してよね」
「お、オレも?」
「そうだよ、ね、快斗」
「しゃーねーなぁ。工藤探偵の彼女であるあなたには色々ご迷惑をかけてしまいましたからね。わたしも協力致しますよ」
と、突然快斗君はキッドの口調で言う。
「快斗、何で急にキッドなの?」
「秘密、だよ。ね、蘭ちゃん」
と快斗君は言う。
キッドとして会ったときに色々合ったことを言ってるのね。
「かーいーとー!!!!!!!!蘭ちゃんに何したの???」
「な、何もしてねーよ」
「ホントに?」
「……うん」
後ろめたそうに快斗君は言う。
「ホントにぃ。快斗怪しい」
「ホント、快斗君怪しいよ」
「ら、蘭ちゃんまで言うなよぉ」
快斗君が泣きそうになって言う。
その後快斗君が青子ちゃんにすべてを話したのは言うまでもない。
朝…いつもの時間に目を覚ます。
一瞬自分がどこにいるのか忘れていた。
そうだ、青子ちゃんの家に泊まってたんだっけ……。
新一…どうしてるだろう。
起きたのかな?
ご飯食べたのかな?
まだ…寝てるのかな……。
んーーーやっぱり気になっちゃう。
あ、お父さんもどうしてるんだろう。
ちゃんと家に帰ってきたのかな?
もうあの書き置き読んだのかな……。
「オハヨ、蘭ちゃん」
いつの間に起きていたのか快斗君が言う。
「おはよう快斗君。どうしたのこんな朝早くに」
「蘭ちゃんが気にしてると思ってね、新一と蘭ちゃんのお父さんのところに行ってきたよ」
快斗君はまだ眠っている青子ちゃんを起こさないように言う。
「……どうしてた?」
「毛利探偵の方は眠ってる。新一はなんか眠れなさそうだったよ。何度も寝返りうってたから……」
時計を見るといつもならわたしが新一の家でご飯を食べているころ……。
「多分、蘭ちゃんがおこしに来るの待ってるんだろうな。あいつは」
そうなんだ………。
「どうする?新一のところに行く?」
「行かない……。わたし決めたの。お父さんが新一と一緒に暮すこと認めてくれるまで新一と逢わないって……。ケジメ…って言うのかな……。新一のところに行ったらわたし絶対新一に甘えちゃうもの。だから、ダメ…逢わない」
無茶苦茶……な論理だよね。
はぁ、そう思ってるのに新一に逢いたくなるのは何でだろう。
……頑張ろう。
うまくいくと思えばうまくいくのよ。
きっと。
うん。
「あ、オハヨ。快斗」
「青子、起きたのか?朝ご飯作るよ」
「うん」
青子ちゃんと快斗君をみて一瞬プチ同棲って感じがした。
「どうしたの蘭ちゃん」
「中森警部はどうしたの?」
「お父さんは、強盗殺人事件の合同捜査に行ってるの」
そう言えば新一がそんなこと言ってた。
東都銀行で起った強盗殺人事件。
単なる殺人事件だったら行ってたけど強盗が混ざってくると他の課との合同捜査になるから邪魔したくないんだって……。
「警部ってキッド専任じゃなかったっけ……」
「そうなんだけどね。一応、警視庁捜査二課の警部だから他の事件も担当してるんだって」
そう青子ちゃんは言った。
今……何時だろう。
ぼーっとしている頭を少しだけ動かして時計を見る。
…10時…ん?11時?
11時じゃねーか。
そう言えば…いつもだったら蘭がおこしにくるはずだけど……。
何でだ、…蘭今日は何か用事があったっけ…。
園子は確か家族総出で出かけてるはずだし…。
宮野と蘭が一緒に買い物行くところなんて考えられねぇなぁ。
……とすると……空手の練習かな……。
でも、蘭はもう……………。
いまだに動かない頭の中でオレは蘭のことを考えていたその最中だった。
「新一!!!!!!居るかーーーーーーーーーーー」
けたたましく鳴り響く玄関のベルの音とあたりの喧騒をぶち破る大声。
おっちゃんが玄関の前で叫んでいる。
おっちゃんなのでこのまま無視を決め込むわけにも行かず、オレは玄関に向かいおっちゃんを出迎える。
「おはようございます。どうかしたんですか?」
「蘭はいねーか?」
おっちゃんはかなり慌てているのか息も絶え絶えに言ってくる。
蘭?
何でいきなり蘭が……?
「蘭は来てねーかって聞いてるんだよ」
「蘭なら、まだ来てませんよ。蘭がどうかしたんですか?」
「本当に泊まってねーのか?」
泊まる?
そうか夏休みに入ったから蘭が泊まりに来てる……って。
「おっちゃん、蘭に何か合ったのかよ!!!」
「ホントに来てねーのか?」
「来てねーよ。なぁ、おっちゃん、蘭に何か合ったのか?」
オレの叫ぶような言い方におっちゃんは驚いたのかオレに一枚の紙を見せる。
「それを残したまま消えちまったんだよ」
紙には
『お父さんへ。わたしは今から家出します。新一との同棲、認めてくれないかぎり絶対に、家には帰りません。捜さないで下さい!蘭』
と書かれてあった………。
オイオイオイオイいきなり家出ってなんなんだよぉ!!!
「本当にオメーの所には来てねーんだな」
「来てねーよ。来てたらこんなに驚くかっつーの!おっちゃん、おっちゃんには蘭の行く心当たりはねーのか?」
「ねーよ。オレよりオメーの方があるだろう」
正しい。
オレの方がある。
「蘭の行き場所、分かったら、連絡します。…………少し、待っていて下さい」
そう言ってオレは玄関の扉を閉める。
蘭……どこに行ったんだよ。
これじゃ……認めてもらおうにも……。
……多分、かなり追いつめられてたんだろうけどな……。
ともかくオレは蘭の携帯に電話することにした。
「…………」
コールまでに時間がかかっている。
電波状況ワリィのかな…。
それとも電源切ってるのか??
「トゥルルルルルルルルルルルル、トゥルルルルルルルルルルルル」
蘭は電源切ってないみてーだな。
出ろよ、蘭。
「〜じゃれてるぅだけでもぉ時間が凄くったぁってるやさしい指先、耳ぃにキスして。こんな午後はぁそのままぁ、服ぬがせて天国に連れていってぃ一緒に連れていって
I'm fallin love〜(song by globe:Love again)」
携帯の着信がなる。
「誰?」
「新一……」
出たほうが良いのかな?
でも、出たら、自分がどこにいるか言っちゃいそうで怖い。
お父さんが新一と一緒に暮すこと認めてくれるまで新一と逢わないって決めたのに、絶対声聞いたら逢いたくなる。
「とりあえず、無視したら。この後どうするか考えてから新一からの電話に出ても良いんじゃない」
と快斗君が言う。
「とりあえず、お昼ご飯にしようよ。お腹空いてたらいい考えも浮かばないよ」
と、青子ちゃん。
そうね、とりあえず、まだ、出ない。
気になるから音、消しちゃおう。
「……トゥルルルルルルルルルルルル、トゥルルルルルルルルルルルル……」
30回目のコールを聞く。
まだ、蘭はでない。
音消してるのかなぁ?
とりあえず、お昼にしよ。
……まさか大阪に行ったって事はねーよな。
そしたら服部からまず、電話が掛かってくるはずだ。
しかもからかいの電話。
蘭が居ないとオレがどうなるか知ってるし奴だし。
どうしてるか確認の電話をするはずだ。
それがまだないって事は…。
蘭は大阪にはいないはずだ。
となるとどこだ???
快斗……のとこじゃねーよなぁ。
……そんなはずねーよな。
蘭が快斗のところに行くはずがねー。
……って青子ちゃんのところがあるじゃねーか。
青子ちゃんのところに電話………ってオレ青子ちゃんの電番しらねーよ。
快斗の所には電話したくねーしなぁ。
はぁ、仕方ねぇ。
もうちょっとたってから蘭のところに電話してみるか……。
蘭、どこに行ったんだよぉ。
「〜♪どこまでもー限りぃなくーふりぃつもるゆーきとあなたへの想いー少しでもーつたぁえたくてーとどーけたくてぇーそばぁにいてほしくてー凍えるよう待ちぃ合わせもー出来ぃないままぁーあしぃたを捜してくいつだぁってぇ思い出を作るときはあなたとふたりがぁいい〜♪〜(song by globe:DEPERTUARS)」
携帯の着信がなる。
ちょっとだけ、やっぱり、気になって音を出したら、掛かってきたのは
「誰?」
「和葉ちゃん……もしもし?」
携帯に出ると和葉ちゃんの元気な声が聞こえてきた。
「蘭ちゃーん、元気やった?突然であれ何やけど、今から平次とそっち行くから」
服部君とこっちに来る??
「ちょっと待って和葉ちゃん。今どこにいるの?まだ大阪?」
わたしのせっぱ詰まった様子に和葉ちゃんは驚きながらうなずく。
「そうやけど……どないしたん?」
「わたし、今から大阪に行くからこっちに来ないで。お願い、和葉ちゃんのところに泊めて」
「どないしたん?蘭ちゃん訳教えてくれへんと……」
…………しょうがない。
「家出、したの。今、青子ちゃんのところにいるの理由は………大阪に行ったら言う」
「ちょー待って平次に言うわ。平次、アタシ大阪に残るけどええ?」
「何でやねん」
「あのな、蘭ちゃんがこっちにくる言うてんの?」
「工藤も一緒なんか?」
「一緒やないみたいやで……蘭ちゃん……家出したっていうてるから……」
「家出ーーーー和葉ちょーかせ。蘭ねーちゃん家出したんか?」
突然服部君に電話がかわり、ちょっと驚く。
「う、うんそうなんだけどね……」
「理由は?工藤はしっとんのか?」
「理由はまだ言えない。新一は知らないよ」
「心配しとるで?工藤」
「分かってる。でも、これだけは譲れないの……お願い、服部君も協力して家出に」
「工藤にはずっと言わんのか?」
「大阪に着いた頃に快斗君に言ってもらう」
そう、快斗君と青子ちゃんと相談して決めたのだ。
新一にはわたしが大阪に着いてからすべてを話すって。
「ええよ。蘭ねーちゃんの頼みや。蘭ねーちゃんがきよったらどうせ工藤もこっちにくるやろしな」
「ありがとう。服部君」
「気にせんでえぇよ。そや、工藤のところにこっそり探り入れよか?」
「ダメ、服部君」
「アカンか?へたってる工藤見たいんやけどな」
困っているわたしの様子を快斗君は見かねたのか電話をかわってくれる。
「平ちゃん、蘭ちゃんが困ってるぜ。なんか困らすことでも言った?」
「いや、何も言うてへんよ。ただへたれになっとる工藤を見たい言うたんや」
「ダメだよ、平ちゃん。そんなことしたら蘭ちゃんが大阪にいるって云うのがばれるんだよ。出来れば今日はまだ新一にはばらしたくないんだ」
快斗君の言葉に服部君は落ち込む。
「新一からかう手段なんていくらでもあるんだから、そう落ち込むなよ」
「そうやな、分かったわ。快ちゃん。ほなな」
そう言って服部君は電話を切った。
「これで大阪行きは決定だね」
「うん」
快斗君の言葉にうなずいたときだった。
…新一限定の着信音が聞こえたのは…。
「また掛けてきたか工藤新一。でる?」
……声、聞いたらダメかも。
「出たくないのならオレにまかせて。ただし、しゃべらないで。青子もだよ」
その快斗君の言葉にわたしと青子ちゃんはうなずく。
そして、快斗君はハンズフリーのボタンを押して電話に出る。
「蘭!!!!今、オメーどこにいるんだよ。家出ってそんなに追いつめられてたのかよ………。わりぃ、蘭オレ気がつかなくって……」
「そんなことないよ、新一。新一に…心配を掛けるつもりはなかったの」
と快斗君はわたしそっくりに新一へ対応する。
「ごめん……蘭。オレがもうちょっとちゃんとおっちゃんに言ってれば蘭を苦しませずにすんだのにな……」
「そんなこと……ないよ」
気持ちまでそっくりに。
さんざん気持ち話したものね。
「蘭………。今、どこにいるんだ?」
「今?青子ちゃんの家」
「やっぱりかぁ」
やっぱり?
何でやっぱり何だろう。
「園子は出かけてるだろう、オメーのことだから宮野と二人っきりでどっか出かけることは万に一つもありえねーし。学校のやつらはおっちゃんでも簡単に見つかる。だったら学校外でおっちゃんが面識ない人物とオレが蘭がそいつと居るって分かって安心できるやつって言ったら青子ちゃん位しか居ないだろ。あとは大阪って云うのもあるけどな」
「……新一は何でもお見通しなんだね」
「あたりめーだろ。オレは探偵だぜ」
ハイハイ。
「こんにちわ工藤探偵」
突然快斗君はわたしのマネからキッドになる。
「……キッド………快斗??!」
「こんにちわ工藤探偵。可愛い彼女との語らいの時間にお邪魔してしまって申し訳ありませんね」
「な、な、な、な、な、な、なんでテメーが蘭の電話に出てんだよぉ!!!」
「混線です。オレは青子の所に電話したら混線したんだよ!!!」
勝手に混線させて快斗君は元に戻す。
「今どき携帯が混線するかよ。快斗、蘭はどこにいるんだ???」
「ちゃんとここに居るよ、ただし、場所までは言えません」
「蘭に、かわれ」
「なんで?」
「何でもだ」
「お断りします。蘭ちゃんは電話に出たくないって言ってるんでね」
聞いてるけどね。
「蘭の声が聞きたい」
「聞かせてあげてるじゃないの。オレが」
そう言って快斗君はわたしの声マネをして新一をからかい始める。
おかしくっておかしくって何度声に出して笑いそうになったんだけど、その度に快斗君が指を口にあて「しーっ」と合図するのでわたしと青子ちゃんはその方を見ないように準備をしていた。
「オメーじゃねーよ、蘭、本人の声が聞きたいんだって言ってるだろう!!!!!」
「しょうがないなぁ……………。新一、そんなにわたしの声が聞きたかったの」
「あたりめーだろ…………?ってホントに蘭か」
「ううん、オレ」
「……ってめーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!快斗。蘭を出せ!」
「蘭ちゃん今この場に居ないんだよねぇ。青子と夕飯作ってるんだ、じゃあ、オレもう電話きるわ。じゃあね、新一」
そう言って快斗君は最後にまたわたしのまねをして電話を切る。
はぁ、これじゃあ新一怒りまくってるよ。
「さて、東京駅に行こうか。蘭ちゃん」
準備が整ったわたしをみて快斗君は言った。
東京駅で和葉ちゃんに16時28分発の新幹線に乗ることを告げ新幹線のホームまでやって来る。
「じゃあ、大阪に着いたら連絡して。そしたら新一に連絡するから」
「分かった。ありがとう、快斗君、青子ちゃん。迷惑掛けちゃってごめんね」
わたしが謝ると青子ちゃんは首を振る。
「そんなことないよ。青子、楽しかったよ」
「オレも楽しかったよ。……蘭ちゃん多分オレと青子もそっちに行くことになるって平ちゃんに伝えておいて。まだ、はっきりしてないんだけど……」
快斗君の言葉にわたしと青子ちゃんは驚く。
「……大阪にいくって……快斗、もしかして…お仕事?」
「……うん。じゃあ、よろしくね」
新幹線が入ってきてわたしはそれに乗り込む。
ホントにこれで良かったのかなぁ。
無謀なことしてるのかな……。
ごめんね、新一。