「何考えてんだよっあいつらは!!」
呆気に取られているオレと蘭をしり目にあいつらは家路に付いた。
高校卒業したら6人で同居だと?
オレは、そんなことの為に一人暮らししていたわけじゃない。
蘭と暮らしていたわけじゃない!!
オレと蘭の同棲生活をどうしてくれるんだ!!!
せっかく誰にも邪魔されないで蘭と二人っきりで生活出来るって言うのに……!!!
あいつらに邪魔されるのはまっぴらごめんだ!!!
「はぁ、何考えてんだ、あいつらは…」
「でも、楽しいかもね」
オレの呟きに蘭はぼそっという。
……ハッとした……。
『蘭ねーちゃんに寂しい思いさせとくつもりか?』
そして服部の言葉をも思いだされた。
そうだよな……。
蘭に寂しい思いはさせたくない…。
けどなぁ…6人同居っつーのはなぁ…………。
納得いかねぇ……。
それでも、いやでも納得させられる出来事がオレ達の側に忍び込んできてるとは思いもよらなかった。
センター試験が直前に控えたある日の事……。
「センター試験の前あたりから泊まりに行くからな」
そう言った快斗に毒づきながらオレは電話を切ったのだった。
今日、新一は午後から学校に来る。
事件なんだって。
いつもと同じなのにいつもと違う空気を感じる。
どうしてだろう。
分からなかった。
それはさておき、世間の高校3年生は、もう少しで始まるセンター試験に準備をしていた。
「わたし達ってさぁ、世間の高校生に比べたらのんびりしてるわよねぇ。センター試験の代わりに進級試験だもん。エスカレーターって楽でいいわ」
園子の言葉にわたしはうなづく。
「鈴木さんは大学に行ったら何をするの?」
「わたし?わたしは一応経済学部に入るのかな?ホントだったら会社継ぐのはアネキなんだけど…、アネキが結婚するのは富沢財閥の人だし……。わたしが多分、財閥継ぐんじゃないのかな…面倒だけどね。宮野さんはどうするの?」
「私?私は医学部よ。一応、全部とるつもり」
「全部って?」
「全部よ、外科、内科、産婦人科、神経科、精神科、後脳外科とか遺伝子関係とか…そうね、法医学とかもとろうかなって思ってるわ」
「あんた…そんなに大丈夫なの?」
「好きだからね」
志保さんは園子の言葉にニッコリと微笑む。
その時だった。
「蘭っ」
そう叫んで新一が昼休みの教室に飛び込んできた。
「新一?どうしたの?」
「……っ……」
息せききって入ってきた新一はわたしのところに歩み寄る。
「蘭…何にもなかったよな」
「どういう意味?」
わたしは新一の言葉に首をかしげる。
「どういう意味……ってえっと…」
新一の口調がしどろもどろになる。
「何?何があったの?」
わたしの言葉に新一は何も言わない。
「…何にもなかったなら…別に良いんだ」
新一は何か少し安心したかのようにわたしに言う。
なおも首をかしげているわたしに新一はニッコリと微笑んだ。
その日、オレは記者会見に引きずり出された。
前(コナンになる前)のオレは事件解決後の警察の記者会見には必ずと言っていいほど顔を出していた。
探偵としての知名度を上げる為にだ。
まぁ、別に上げなくても良かったのだが、探偵として生きていくには必要だから。
だが……それが今は間違いだったのかも知れないと不意に感じ始める。
ともかく、今はマスコミの前に顔を出すわけには行かない。
なぜなら蘭と暮らしているから。
蘭と暮らすためだったら何だってする。
知名度は上がったのだから別にこれ以上顔を出そうとはおもわねぇし、何よりもそう言う会見に出るよりも蘭と一緒にいたほうが良いと思っているからだ。
だが…今回の事件はそれが出来なかった。
まず、社会的地位のある人物の殺人事件でしかも難解なトリック付き。
マスコミ各社が殺された人物の背後に存在する人間関係を面白おかしくかき立て、その難解なトリックを元FBIの捜査官とかに解説を求めて解こうとしていたし、そこには必ず「高校生探偵工藤新一」の名前は踊っていたからだ。
出ざるを得なかった……。
と言っても過言じゃなかっただろう。
それに捜査の長期化も影響していた。
事件が発生したのは12月の半ば。
受験と言う重大な時期に一応はさしかかっていると警察の方で遠慮したのだろう。
それかあまり高校生に頼っているのも…って言うのもあったのかも知れない。
あと、担当していたのがオレが懇意にしてもらっている目暮警部の管轄ではなかったというのも起因していた。
あまりに進展を見せない捜査に業を煮やしたのか警視庁の刑事部長である小田切刑事部長が自らオレの家に来て捜査の依頼をした。
そこまでされたら行かない訳にはいかない。
事実オレも気にはなっていたから高木刑事とかにメールで聞いていた。
捜査の様子も聞いていた。
2.3アドバイスもした。
それでも進展しなかったのである。
そしてその事件が解決したのが昨日。
きちんとした警察発表が今日。
オレはそれに引きずり出されたのだ。
「今回の捜査のポイントはなんですか?」
「今回、捜査が長期化した理由は?」
事件の概略が小田切刑事部長から記者に発表された後に飛び交う質問事項。
それもひと段落したころだった。
最後の質問と言うことで記者から言葉を投げられた。
「工藤君。毛利探偵のお嬢さんと同棲しているというのは本当ですか?」
その記者の言葉に一瞬、頭が真っ白になる。
会場にオレが入ったとき、一瞬どよめきが沸いたのも気付いていた。
ここにいるのは事件記者のみでないことを少し気付いていた。
でも…何でいるんだろうって思うぐらいだった。
「毛利探偵のお嬢さん、毛利蘭さんと同棲してるんですよねぇ」
卑しく男の口元が上がる。
蘭の名前をそのきたねぇ口で言うんじゃねぇよ!!!
オレと蘭の事を下卑汚く揶揄されたオレは何も考えずに言葉を吐きだしそうになったその時だった。
「プライバシーの事に付いてはお答えしかねます。彼は警察に捜査協力している少年であって、一般大衆の好奇心を満たす存在ではありませんので」
と小田切刑事部長の言葉が響き渡った。
そして、オレ達はその部屋から退出する。
別室で自分がしようとしたことに寒けを起こす。
あの時オレが何かを言っていたら、全てが台なしになっていただろう。
「小田切刑事部長、ありがとうございました」
オレは刑事部長に深々と頭を下げた。
「何も気にすることはない。君を守るのは我々の仕事だ。我々がふがいないばかりに、君に迷惑をかけてしまっているのだからな」
小田切刑事部長はそう言った。
情けない。
そう思った。
自分が情けない。
蘭を守るって決めていたのに、結局はオレは周りの人から守られていた。
情けない。
学校までは高木刑事に乗せてもらった。
今願うのは、学校の方に…蘭にまで被害が出ていないかだ。
教室に駆け込む寸前、蘭の姿が見える。
「蘭っ」
教室に入ったと同時に蘭の名を呼ぶ。
「新一?どうしたの?」
息も絶え絶えに蘭に近付いたオレを蘭は不思議そうに見つめる。
「蘭…何にもなかったよな」
「どういう意味?」
問い掛けたオレの言葉に蘭は首をかしげる。
「どういう意味……ってえっと…」
どうやら…何もなかったらしい。
家の方にはいるんだろうか?
博士に電話して聞いてみないとな。
「何?何があったの?」
「…何にもなかったなら…別に良いんだ」
ほっとした。
そしてそのまま午後の授業に突入する。
オレは…まだ未熟なんだろうな。
きっと。
だから…蘭がからんだだけで頭に血が上ってしまう。
快斗や…服部の方が大人なのかもしれねぇな。
あんま認めたくねぇけど。
……コナンの時の反動だな。
でも園子に言わせりゃ。
「蘭のことで分かりづらい新一君なんて新一君らしくない。分かりやすいやつこそ工藤新一よ!!」
って言いやがる。
って事はなんだ?
オレって昔っから?って事か?
ハァ、情けねぇな。
まだまだって事か……。
放課後6時過ぎ。
テストの勉強を図書室でしてこんな時間になってしまっていた。
「新一、早く帰ろ」
「わーってるよ。おっオイ。そんなに早く歩くなよ。雪はまだ溶けてねぇんだからよぉ」
雪で足下を取られそうな蘭にオレは不安になる。
「大丈夫だよっ新一…」
そう言って蘭は先に行ってしまう。
「転んでもしらねぇぞ」
そう呟いた側から蘭は雪に足を取られたのか転びそうになる。
「蘭っ」
蘭が転ぶより前に物陰からあらあわれた女性が蘭を抱き留めた。
「大丈夫?蘭さん」
「えっあっハイ」
彼女はいとも事なげに蘭の名前を呼ぶ。
「蘭っ大丈夫か?何もされてないよな」
「え…ううん」
オレの元にの走ってきた蘭を抱きながらオレは蘭を抱き留めた彼女をにらみつけた。
「そんなに警戒しなくても平気よ。わたしは怪しい人間じゃないから」
「そうは行っても、あんたは蘭の名前を知っていた。オレのことはともかくとしてもだ」
オレの言葉に彼女は微笑みながら答えた。
「確かにあなたの言う通りね。でも彼女は眠りの小五郎と讚えられた毛利小五郎と、法曹界のクィーンと讚えられている妃英理の一人娘。調べ上げることなんて造作も無いことだわ」
蘭が不安そうに相手を見つめる。
何者だこいつは…。
ブランド物のスーツに身を包んだ女性。
身のこなしも悪くない。
マスコミ関係者?
一瞬思ったがその考えを改める。
マスコミ関係者がいとも簡単にオレ達の目の前に現れるか?
だとしたら何者だ?
「あんたは…誰だ?マスコミ…じゃないよな」
オレの言葉に蘭がビクッと体を震わす。
「そうね。マスコミ関係者じゃないわ。そこら辺は安心しても良いわ。私はあなたに協力を要請しに来た人間よ。もちろんその見返りとしての事はこちらとしてもきちんとするわ」
「あんたが…何者か分からないかぎり、オレはあんたに協力することは難しいと思うけど?」
オレの言葉に彼女はクスッと微笑み答える。
「確かにね。私は内閣調査室管轄警察庁特別捜査室室長、嵯峨野美江子よ」
「はっ?」
彼女の言葉にオレは目が点になる。
「特別捜査室というのは特殊な事件を解決する班の事よ。この春から始動を始めるわ。特殊な事件とは言っても超常現象とかそういうたぐいのものじゃなくって、あなたの推理が必要になる…そうね…密室殺人とか組織犯罪とか警察が手に負えないような事件の解決をお願いしたいの。もちろん、あなたの生活を脅かすようなことはしないわ。別に警察に入って欲しいって思っている分けでもないわ。あなたは普通に生活していてくれて構わないの。ただ時たまあった事件の時に手伝って欲しいの」
彼女はそう言って微笑む。
「それによる見返りは?オレに何の得がある?」
「あなたがしたいことはただ一つしかないのも承知しているわ。でも、今のあなたにそれがやりきれるかしら?」
彼女は嫌みたらしくオレを見る…。
確かにその通りだ。
記者会見の時にオレはその非力さを知った。
「まぁ、ゆっくり考えて。答えはせかさないわ。決まったら警察庁の方にでも来てくれていいわ。私の名前を出したら入れるから」
そう言って彼女は帰っていった。
「……新一…どうするの?」
蘭が呟く。
…快斗と服部には彼女は会ったのだろうか?
聞けないな…。
彼女は内調の人間だ。
あいつらとの同居も考えて良いのかも知れない。
マスコミのカモフラージュにもなる。
オレがしたいことはただ一つ。
蘭を守りたい。
ただその一つだけ。
「どうするの?」
「さぁな」
そう答えながらもオレは全てを決めた。
あいつらとの同居、了承しよう。
全て蘭を守るために。
蘭を守るために蘭の側から離れるということはもうしたくなかった。
「ちょっと、いきなりなんのよぉ?」
帰ってきたオレ達に突然の騒ぎが巻き起こる。
オレの家の玄関で言い争っている二人。
「だから、君、毛利蘭さんでしょ?」
「違うっていってるでしょ?快斗ぉ、このおじさん何とかしてよぉ」
「ハァ、確かに、ココは工藤新一の家だけど、彼女はあんたが探している蘭ちゃんじゃないよ。青子っだから言ったろぅ確認もしないで玄関を開けるなって」
「だってぇ、蘭ちゃん達だと思ったんだもん」
「何?毛利蘭さんもこの家に帰ってくるの?待たせてくれないかな」
「何で?おじさんには関係ないでしょ。蘭ちゃんとおじさんどういう関係?もうねぇ、青子達忙しいんだからね。明後日からセンター試験だから新一君の家に引っ越してきたのに、どうしてこう知らないおじさんがいるのぉ?」
玄関で言い争っていたのは青子ちゃんと男。
そして家の中から出てきた快斗。
なっ何であいつらがいるんだ?
「じゃあ、君に聞きたいんだけど。工藤新一君と毛利蘭さんは同棲してるのかな?」
「同棲?んーしてるよ。後ね青子と快斗と平次くんと和葉ちゃんと同棲するのっ」
「青子、それ同居って言うんだよ」
「えっ同棲も同居も一緒じゃないの?だから、おじさんっ青子達の同棲、邪魔しないでよねっ。邪魔したら青子許さないからっ」
「許さないってどういうふうにだい?」
「ふーんA出版社か。蘭ちゃんのお母さんに頼んでプライバシーを侵害されたって言って訴えても良いんだぜ?おじさん」
快斗がいつの間にかすめ取ったのか名刺を男の前でヒラヒラとさせる。
「オイ…オメェら何やってんだよ」
「青子ちゃん、快斗君」
「あっお帰りー。青子と快斗ね、夕飯つくって待ってたんだよっ。早く早く。蘭ちゃんの荷物はおじさんとおばさんが持ってきたからね」
「えっ?」
突然の青子ちゃんの言葉に蘭は驚く。
蘭の荷物はとうの昔にココにある。
ともかく蘭は青子ちゃんに押されるように家の中に入っていく。
……?
「君、工藤新一君だよね」
「えっ…」
そうか…そういうことか。
参ったな。
「新一、オマエも早く着替えてこいよ」
「ワリィ、快斗」
「良いって良いって。なぁ、新一俺達の生活邪魔したらこのおじさんどうなる?」
オレと快斗の目の前にいる男にオレは言う。
「そうだな…とりあえず、住居不法侵入で一つだろあと名誉棄損もいけるかな?プライバシーの侵害で…民事訴訟にも持ってけるはずだぜ?」
いわゆる脅し…。
コレも問題かもな?
「なるほど」
「なるほどじゃねぇよ。快斗、センターが終わったら民法、民訴、刑法、刑訴、警職法、全部覚えろよ」
「ちょっちょっと待てよっ何で全部覚えなくちゃなんねぇんだよ」
「快斗、助手、やるんだろ?」
「うっ」
オレの言葉に快斗はつまる。
気付いたら男は消えていた。
「あのさ……」
「今日来るって聞いてねぇぞ」
「ゴメン…あのさ…新一」
快斗は何かいいたそうにしている。
「あのさ…新一」
「快斗…飯、なんだろ。オレ、腹減ったよ」
オレは、快斗の言いたい事を遮って家の中に入っていく。
言いたいことは分かってるつもりだ。
「新一…許してくれんのか?」
「快斗…飯なんだ?」
「新一あのさ…」
「快斗っ」
オレは、立ち止まって快斗の方に振り向かずに呼ぶ。
「何?」
「今はまだ聞かない……。明後日から…センター試験だろ?何も…まだ言うつもりもねぇし…聞くつもりもねぇよ…」
言いたいこといっぱいある。
けど…まだ言わない。
心の中で…思ってるだけでも…まだ良いだろ?
夕飯を食べ終わった後、服部に電話をした。
「いつ…くるんだ?」
『快ちゃん達はおるんか?』
服部の言葉にオレは頷く。
「もう…いるよ」
『そ…そうか』
服部は少しだけどもる。
『怒ってへんのか?』
「怒るも怒らないも………くるんだろ?」
『すまんな…』
服部はオレの言葉に謝る。
「許さねぇ……って言ってもくるんだろ?」
『そやな……』
半ば自暴自棄になりながらも言った言葉に服部は苦笑する。
「だったら…言うんじゃねぇよ……。で……、いつくるんだ?」
『明日…学校が終わったらそっちに行くわ』
「分かった…」
そう言って…オレは電話を切った。
あいつらの意図が見えない。
でも…ただ、オレはあいつらにも感謝しなくちゃならないんだな…と思っていた。
夜中、仰向けになって考えている新一にわたしは話しかけた?
「新一…?決めたの?さっきは誤魔化してたけど…」
新一は何も言わないでただ天井を見上げている。
やっぱりね。
言わないと思った。
新一は何も言わない。
言わないで
「大丈夫だから、何も知らなくて良いんだから」
って言う。
知らないわよね。
知らないことがどれだけ不安か。
全てを知らないで不安でいるよりも…全てを知って不安でいたい。
何も…知らないままではいられないのよ。
「………コレだけは……言わせてね」
起き上がり新一を見下ろしながらわたしは前にも言ったことをもう一度こんどははっきりと告げる。
「あそこに行くときは…わたしも連れていって。コレから起こること…見ていたい。現場にも…全部とは言わない…けど…連れていって。おいてけぼりって言うのはいやだから……連れていって。すこしでも……新一の側に…いさせて……」
無理だって分かってる。
でも…それでも…側にいたいと思うのは我が侭?
「蘭…」
そう言って新一はわたしを抱き締める。
「それがどういうことか…分かって言ってるのか?」
「分かってるよ」
「……危険なんだぞ」
新一の言葉に頷く。
「人質とかにとられることだってあるんだぞ」
「うん」
どうしても引かないわたしに新一はため息をつく。
「分かったよ…蘭。そのかわり…蘭、絶対オレの側から離れるなよ」
へっ?
前に言われた言葉と違って驚く。
「な…なんで?」
思わず、聞き返してしまう。
前は何があっても知らないって言ってたのに…。
「なんでって…蘭が目の届かないところにいられたらたまらないからだよっ…。オレ…我が侭だよな。蘭を危険な目に合わせたくない、蘭に心配かけたくないって思ってるのに、いつも蘭には側にいて欲しいって思ってるし…側にいたいって思ってる。オレが…絶対に守るから…オレの側から…離れないでくれ…」
「…新一…ホントにそんなこと言ったら離れないよ」
「かまやしねぇよ…。それよりも先に離すつもりなんかねぇからな…」
そう言って…新一はわたしを抱き締める腕を強めた。
〜おまけ〜
センター試験前日夕方、東の名探偵宅。
西の名探偵とその彼女も到着し、リビングにて素早く相談し始める彼氏達。
「部屋……どうする?」
「とりあえず…いつも泊まってる部屋でいいんじゃねぇの」
「えぇんか?」
「部屋……離れてたほうがいいよな」
「……そやな」
「……じゃあ…とりあえず、客間でいいよな」
「そうだな……」
…沈黙が走る。
「明日っから…センターやったよな」
「そうだな」
「平気か?」
「誰に言ってんだよ」
「そうや、誰に向かって言うてんねん」
「そうだ、こうしよう。お前ら、センター終わるまで同衾禁止」
「はぁ?」
「な…何言うてんねん!!!」
「その方が勉強、身に入るんじゃねぇの?」
「で……オマエは?」
「どないするん?」
「オレ?オレ達はセンター試験ねぇもん。それにもう決まってるしな」
東の名探偵は怪盗と西の名探偵に向かって意地悪く微笑む。
「……オマエも、同衾禁止」
「な、何でだよっ。オレ達は試験ないぜ」
「受験生の側にいることを忘れるな!!!」
「そうやそうや!!!」
「……………………………やれるものならやってみろ。この家にいられなくなっても良いと思ってんのかよ」
東の名探偵の視線にさすがの西の名探偵と怪盗は黙って従うしかなかった。
センター試験が終わるまで西は怪盗と同じ部屋で眠っていたというのはちょっとした余談である。