久しぶりにトロピカルランドに来た。
新一と一緒に来たのが新一が居なくなった日……。
まぁ、当然といえば当然だけど、あれ以来、わたしはきちんとトロピカルランドには来ていない。
怖くて、思い出しちゃいそうで、何か来れなかった。
新一とじゃないと。
「蘭ちゃん蘭ちゃん、次あれ乗ろうや」
「そうだね、あれにしよう」
と和葉ちゃんとわたしで次に遊ぶアトラクションを決めるので、新一と服部君は後ろからついていくのみ。
何となく疲れ気味の二人に声を掛ける。
「新一、早くしないとおいてくよ」
「そうや、平次、はよおいでや」
その声に二人はしぶしぶついてくる。
ひとしきりアトラクションで遊んだ後にトロピカルランドないに設置してあるベンチに座る。
「新一、アイスが食べたいな」
「平次、アイス食べたいんやけど」
「和葉、さっき食ったやろ」
「えぇヤンもう一度食べたいねんもん」
和葉ちゃんの言葉に服部君はうなだれる。
「服部、ココは折れた方がいいみたいだぜ。蘭、ここ動くなよ」
「和葉、もや」
と、わたし達に言い聞かせ新一と服部君は売店へと向かう。
「なんであんなに元気ないんやろうね」
「さぁ、楽しいのにね」
「そうやねぇ。蘭ちゃんナンパされたらどないする?」
「そんなことある訳ないよぉ」
そう和葉ちゃんの言葉に反論したが突然、上から声がする。
「君たち、可愛いね」
「ホント、ねぇ、君たち二人?」
と茶髪の男の人二人が声を掛けてきた。
「蘭ちゃん…これってナンパやね」
「ウン……」
わたし達が彼等二人の言葉に返事をしないまま話しているとさらに二人は離しかけてくる。
「ねーーどっか行かない、こんなところ居ないでさ行こうよぉ」
「こんなところに女の子二人なんて寂しいでしょう」
「なぁ、アタシらが二人でいること、あんた達には関係ないやろ」
「ごめんなさい、一緒に来た人がいるんで」
わたしと和葉ちゃんの言葉にもめげず、男達は誘う。
「関西弁?かわいーねぇ」
「そうそう、連れなんてほっといてさぁ行こうよ」
どうしよう引いてくれないよぉ。
その時だった。
「オレの連れに、手ぇださんといてくれへんか?」
と明るい声と。
「オレの女に手ぇだすんじゃねーよ」
かなり、低い威嚇するような声が同時に聞こえる。
「平次?!」
「新一!!」
ほぼ、わたしと和葉ちゃんは同時に言う。
「服部、テメー同時に言うんじゃねーよ」
「工藤、それはオレのセリフや。オレのセリフにかぶるなや」
新一と服部君の突然の乱入、そして、言い合いにナンパした人は驚きながらも言う。
「なんだ、テメーら」
そんな男達を新一と服部君は完全無視を決め込んで、
「蘭、行くぞ!」
「和葉、行くで」
と、新一と服部君はそれぞれわたしと和葉ちゃんの手を引いてその場を移動した。
「新一?」
「平次?」
届いているはずなのに、新一と服部君は無視する。
「平次、聞こえてへんの?」
「新一?どうしたの」
やっぱり無視のまま手をつないだまま歩いていく。
「蘭ちゃん、何でやろう。何か平次怒ってへん?」
「新一もなんか怒ってるような気がするんだよね」
和葉ちゃんのひそひそ声にわたしは同意する。
わたし達の声を無視しながら新一と服部君は二人で相談してと歩き出す。
そして、ついたところはトロピカルランド内にあるレストラン。
席につきメニューを見ている間も料理が運ばれてくる間も新一&服部君は不機嫌。
「なんで、そんなに不機嫌なん?平次ぃ」
「新一、ナンパされてたの怒ってるの?」
「え、そうなん?平次、アタシがナンパされてたことが不満だったん?」
わたし達の言葉に二人は完ぺき無視し運ばれてきた料理を食べる。
「やっぱりそうなんや。へぇ、平次ぃもしかしてやきもちやいとんの?もしかしてそうなん?」
和葉ちゃんはうれしそうなんだけどしつこく服部君に聞く。
よっぽどうれしかったんだろうな、服部君がやきもち妬いたこと。
でも、服部君は怒りながら完ぺき無視!
新一の方を見ると、やっぱり何かすっごく不機嫌そう。
やっぱり、ナンパされたこと怒ってるのかなぁ。
新一ってさぁ、やきもち妬きだと思う!!!
人のこと言えないけど…。
埒が明かないと思ったのか和葉ちゃんは話題を変える。
「なぁ、蘭ちゃんこの後どないする?」
「そうだね、どうしようか。後なに合ったっけ……」
トロピカルランドのマップを広げて眺める。
「あ、ミステリーコースター乗ってへんよ」
「み、ミステリーコースター……………」
出来るだけ、避けてたんだけど…………な。
「な、何かあかんかった?」
「そんなことないんだけど……ちょっとだけ…嫌な思いであるんだよね」
……新一と離れるきっかけになったあの事件。
やっぱり、その現場に行くのはちょっと抵抗がある。
「和葉ちゃん、服部と二人で行ってきなよ。オレと蘭は下で待ってるから」
「何でや、嫌な思いであるんは蘭ねーちゃんだけやろ?工藤は……」
「あのなぁ、……オレも蘭と一緒で嫌な思いであるんだよ」
……新一……。
思わず、新一の方を見てしまう。
新一もあの事件……嫌な思い出なんだ。
「しゃあないなぁ、和葉、オレとでええか?」
「な、何アホなこと言っとんの。平次以外の誰がおんの?」
和葉ちゃんは服部君と言い合いを始める。
ふぅ、何か新一も服部君も元に戻ったみたい。
とりあえず、レストランを出て和葉ちゃんと服部君は仲良さそうにミステリーコースターへと向かう。
「蘭……ごめんな」
「どうしたの急に?」
新一が急に謝ってきたことに驚く。
「……オメーのこと一人にしちまったことだよ。ここでさミステリーコースターの事件さえなかったらあんなことにならなかったのになぁって」
「新一も気にしてたの?」
「そりゃな……あんなことになっちまった所だしな」
そう言って新一はうつむく。
やっぱり新一も嫌だったんだ来るの。
そうだよね、新一にしたらこの場所は子供にされた場所。
わたしホントなーんにも新一のこと分かってなかったんだなぁ。
「なーに考えてんだよ」
「え、大したことじゃないよ」
その時遠くから服部君の声が聞こえる。
「やっぱ工藤と蘭ねーちゃんはおるで?」
「そうやねぇ、でもさっきの人ホンマ工藤君と蘭ちゃんに似てんかった?」
「似とった似とった。なんやろなあの似かたは」
そう言って近付いてくる。
「どうしたの?」
「さっき蘭ちゃんと工藤君に似とった二人がおったんやけど、めっちゃ驚いたんよ」
「オレと蘭に似てる人??!」
新一とわたしに似てる人?????
そう言えば……。
「蘭、前さぁ、渋谷でオレを見たって言ったよなぁ」
「う…ん……」
「もしかすっとそいつかもしんねーな」
「何やの?オレら話し見えへんのやけど……」
服部君が間に入り込む。
「あ、おったよ工藤君と蘭ちゃんに似てる二人!!!!!」
と和葉ちゃんが指さす方向を見ると、前に渋谷で見た二人組がいた。