今日は久しぶりに東京に来た。
もちろん平次と一緒に。
平次の理由は『工藤に逢いたいんや!!!』というしょうもない理由。
「工藤君、まだ帰って来ないやんか、蘭ちゃんがそう言っとったよ」
ってアタシが言うにもかかわらず、平次は相変わらず、
『工藤に会いに東京に行くで!』
を繰り返す。
いい加減にして欲しい。
そうは言いながらアタシは平次と一緒に東京に来てしまう。
お母さんは平次が(一緒に)居れば安心だって言うし、静華おばちゃんもアタシが居れば平次はとんでもないことやらかさないと思って平次が行くとき(を知ってるとき)はアタシがついていくことになる。
って言うか心配しないのか?
年ごろの男女だよ。
普通は心配するもんじゃないの?
と思ってはみても……心配するのはお父さんだけ。
平蔵おじちゃんも静華おばちゃんとおんなじ考えって言うのがちょっと問題だよ。
「なぁ、和葉。何でお前もおんねん」
「そんなん決まっとるやろ?アタシは平次の見張りとして、おかんを始め平蔵おじちゃんや静華おばちゃんに頼まれてんで」
「何考えとんのやあの親は」
「平次のことが心配なんと違う?いっつもいっつも余計な事に首っつ込むやんか」
「あんなぁ、事件がオレをよんどんねん。いかなどないせいっちゅうんや?」
「事件が平次をよんでんと違うわ。平次が事件巻き起こしてんと違う?」
「何でオレが事件をまきおこさなならんねん」
「いっつも平次とおると事件に巻き込まれるやんか……」
往来でケンカしているアタシ達を通行人は『こんなところで漫才するなよ』と言う顔している。
漫才してるつもりはないんだけれど、どうも他人(関東に限らず、地元の高校でも)アタシ達のケンカは夫婦漫才以外には見えないらしい。
「和葉、毛利探偵事務所の前に着いたで」
気がつくとアタシ達は毛利探偵事務所…蘭ちゃんの家に着いていた。
「ぼうずおんのかいな?」
平次はそうつぶやきながら探偵事務所の階段を上っていく。
「そんなん聞いてみんと分らんと違う?それに急に来たんよ。どっか出かけてるかもしれんやんか」
「そない行ってみんとわからんやろ」
そう行って平次は探偵事務所のドアを開ける。
「おっちゃん、ボウズおるか?」
平次……他人様の家に入るときはノックぐらいしないと。
「どちら様?」
ふと女の人の声が聞こえる。
蘭ちゃんの声じゃない。
事務所にアタシも入ってみると、きれいだけどちょっときつめの女の人がいた。
静華おばちゃんも美人だけど、この人も美人だなぁとふと思ってしまう。
でも、誰かに何となく似ている。
誰だろう?
「お、おまえはーーーーーーーーーーーーーー何しに来たんだ!!!」
蘭ちゃんのお父さんがアタシと平次の出現に驚く。
「知ってる人??」
「始めまして。オレ、服部平次って言って、西の名探偵や!!」
「ほんとすいません。アタシは遠山和葉って言います。おじさんあの、蘭ちゃん居ますか?」
「あら、蘭の友達?蘭なら出かけてるわよ」
そのちょっとばっかりきつい美人の人は答える。
聞けば、彼女は蘭ちゃんのお母さんらしい。
「そうですか?分りました。では失礼します」
まだ、居たそうな平次を引っ張ってアタシは階段を下りようとする。
「和葉さん?もし蘭に連絡とるんだったら今晩から事務所に誰もいなくなるからって連絡してね」
と、蘭ちゃんのお母さんは言った。
「えろう美人なおかんやなぁ」
「静華おばちゃんも美人やん」
「そうか?もうばばぁやんか?」
「そないな事あらへんよ。ともかく蘭ちゃんの携帯に電話してみるわ」
「あ、そうせい」
平次からちょっとだけはなれてアタシは蘭ちゃんに電話する。
長いコールの後蘭ちゃんが電話に出る。
「もしもし、和葉やけど、蘭ちゃん今どこにおんの?」
開口一番それはちょっと失礼かなと言った後に後悔したがそんなこと構ってられない。
「今?ともだちのうちに居るの」
少しだけ慌ててる蘭ちゃんの声。
何でやろう。
でも、どこか弾んでる。
「平次、蘭ちゃん友達のうちにおるんやって」
と、平次に言ったのが間違いだった。
アタシの携帯をとって蘭ちゃんと話し始めたのだ。
「平次、ちょーまってよ」
平次ーーーーーーーーーーーーー!!
携帯返せ。
「ねーちゃんか?今工藤……やのうてボウズどこにおんねん」
平次が蘭ちゃんにコナン君の居場所を聞く。
「今、毛利探偵事務所の前にきとんのやけど。小五郎のおっちゃんは知らんていうしなぁ。ホンマにねえちゃん、ボウズどこおるんか知らんか?」
平次の口ぶりからだと蘭ちゃんはコナン君の居場所は知らないみたい。
「なんや、保留にされてしもうた」
アタシの携帯から保留音が聞こえる。
「平次、蘭ちゃん知らんと違う?」
「知らん訳ないやんか、ねーちゃんはボウズの保護者やで?いっつも一緒におるのに居場所分らんはずがないやんけ」
「せやけど……」
アタシも平次と一緒に居るのに。
たまあに平次がどこにいるのか分らないときあるんだよ。
かなり長い保留音が消える。
「おーねえちゃんえらい長かったやんか。どないしたんのや?」
平次がコナン君の居場所を蘭ちゃんに聞く。
「えぇよ、電番教えてくれたらこっちから電話するから」
コナン君が居そうなところの電番を知りたいらしい。
「そんならしゃあないなぁ」
けど、どうも分らなかったらしい。
「平次、どないしてん?」
電話切った平次の様子がおかしい。
「あやしいで」
「何が?」
「あんなん保留音が長かった理由や。それに、電番はアドレス帳に控えておくもんとちゃうんか?」
「でも、今はほとんど携帯にメモリー入れてんと違う?蘭ちゃんなんや結構機械音痴っぽいから余計な所触ったら切ってまうとおもったんと違う?」
「せやけどなぁ」
いまだ、蘭ちゃんの行動に疑問を持つ平次にアタシはいった。
「もう、ええかげんにせいよ平次。蘭ちゃん後で電話するって言うてたんやろ?それでえーやんか。そこの喫茶店にはいってまってようや」
と探偵事務所のすぐ下にある喫茶店ポアロをさす。
「そうやな多分ねーちゃんも事務所の方に戻ってくるやろう」
そうして喫茶店に入って通された席は窓際ではなく、一番奥の席。
「何でこんな席何やぁ」
平次が文句言う。
平次は窓際の席で往来を通る人を見たかったんだろう。
何でだろう。
何で何だろう。
どうして、平次はアタシじゃなくって事件とか工藤君が先に頭にあるんだろう。
ずーっと、ずーっと一番平次をそばで見てきたのはアタシなのに。
どうしてなんだろう。
って言うか平次はアタシのことどう思ってるわけ???
たんなる幼ななじみ?
それとも………。
幼なじみって嫌い。
今までのように隣にいたいのに、好きと認識してしまったら、隣にいられなくなる。
甘い感覚=幼なじみって一般には思われてて、うらやましがられる幼なじみ。
そういやぁ蘭ちゃんとこも幼なじみだったよなぁ。
蘭ちゃんもおんなじ思いなのかなぁ…………。
好きなのに嫌いだ。
『なぁ、平次、アタシのことどうおもってんの?』