「蘭、どうしたの?元気ないじゃない」
始業開始のベルが鳴りまわりは席に着くがまだ先生は来ていない状況の中園子は斜め前にいるわたしに話しかける。
「何?悩み事?」
園子は斜め後ろから話しかける。
園子の前には当然新一がいるわけで……。
悩みの元凶が耳をそばだてていると言う状況の中でどうやって言えって言うのよ。
「こりゃ、新一君のせいだな。ったく、新一君、蘭に何言ったの」
そう言って園子は前に座っている新一に話しかける。
「べつにぃ」
そっけなく新一は園子に言う。
その時先生がやってきて園子の追及は終わる。
でも、園子は何かあきらめてないわよって顔してる。
ここではいえない。
新一がいるところでは……。
授業が自習の時園子はわたしを屋上に連れて行く。
「……で、何ナノ?何が合ったの」
園子はわたしの顔を見て言う。
「……園子。あのね……わたし……新一にね、一緒に暮さないかって言われたの」
「ホントに???良かったじゃない」
園子は驚くどころか喜んでくれる。
「園子何でそんなに喜んでくれるの」
「当たり前でしょ、親友の幸せを喜ばない奴がどこにいるのよ」
「園子ぉ」
園子に抱きついて泣いてしまう。
「はいはい、よしよし、で何があったのよ?蘭。せっかく同棲しないかって言われてるのに何があったの?」
園子の言葉に新一の様子がおかしいことを告げる。
「ふーむ。新一君が妙にクールねぇ。蘭のこととなったら異常なほどに取り乱すやつがねぇ。信じられないわ。…蘭一つ聞きたいんだけど蘭はどうしたいの?新一君と同棲したいの?」
園子の言葉に思わず顔が赤くなる。
そっかぁ。
一緒に暮すって事は同棲って事なのよねぇ。
同棲って言われるとなんか気恥ずかしい。
「まさか、あんた気付いてなかったとか」
園子はわたしの様子に一歩下がる。
そ、そんな訳ないじゃないのよ!!!
「で、どうなの?蘭は新一君と同棲したいの?」
園子は話しを元に戻し聞いて来る。
………わたしは、どうしたいの?
そんなこと聞かれなくても分かってる。
「新一と一緒に暮したい」
「そっか……」
少し寂しそうに園子は言う。
園子…?
「分かった、協力してあげる。味方になってあげる。周りには言えないことだもんね。まだ学生同士で同棲なんてね。学校問題だし、あんた達二人有名だし」
「わたしは有名じゃないよ」
「蘭、あなたのお父さんは名探偵毛利小五郎でしょ」
……そうか……名探偵毛利小五郎の娘か。
「そうよ、平成のホームズ、日本警察の救世主、高校生探偵とうたわれた工藤新一が毛利小五郎の娘と同棲なんて大スクープものよ。それをわたしが未然に防いであげる。一応鈴木財閥の令嬢よ、大丈夫だから。蘭、心配しないで」
「園子………ありがとう」
「なーに言ってるのよ、親友でしょ。新一君が帰ってこなくって蘭が泣いてるの見てて知ってる。これ以上いろんなことが起きたら対処出来なくなるじゃない。大丈夫、世界中が蘭と新一君の敵でもわたしだけは味方だよ」
園子はにっこり笑ってくれる。
「園子、大好き」
「わたしも蘭のこと大好きだよ。こうなったら蘭のこと新一君からもらおうかしら」
園子は意地悪そうに言う。
「園子、本気?」
「冗談に決まってるでしょ。さぁ、目下の敵は言い出しの工藤新一ね。蘭、待っててね。新一君の真意、聞き出すから」
園子はそう言って笑った。
昼休み。
お昼を食べようとしたとき突然園子に屋上に呼びだされる。
「なーんだよ」
「蘭が悩んでた理由しってる?」
園子はオレに向かって言う。
知ってるよ。
理由ぐらい。
「新一君、蘭のこと悲しませちゃダメじゃないのよ」
「なーんでお前にそんなこと言われなくちゃならねーんだよ」
「簡単でしょ。わたしと蘭は親友なんだから」
そんなことわーってるよ。
「で、蘭が悩んでたか知ってるの?」
「まぁね」
「じゃあ、あれはホントだったのね……。まさか新一君がいやがる蘭を無理やり……」
オイオイオイオイ、何でそうなんだよ。
「オレは蘭に一緒に暮さねーかって言っただけだよ!!!その為にちょっと自重…」
言った後で気がついた。
まじぃ、園子にばれた!!!!!!!!!
「はぁ、そんなに慌てなくてもいいわよ。聞いたわよ蘭から」
ふぅ、これでオレは無実を……って何で園子が知ってるんだよ。
「言ったでしょ、蘭から聞いたって」
………。
「言ってごらんよ。相談に乗るよ。あんた達二人のこと、これでも他のみんなよりは分かってるつもりだよ」
屋上に座り込んだオレの隣に園子はしゃがむ。
「……蘭と…………って言うのは聞いたんだろ」
「うん、蘭からね、じゃあ、どうして蘭にクールに接してるの?」
園子が聞いて来る。
「……多分この後いろんな問題が出てくると思うんだ。蘭の父親のこと。蘭の母親の事。オレの両親のこと、学校の事……。それを解決しなきゃならねーだろ。…オレ一応有名人だし……親も……、蘭の父親は名探偵って言われてる。一気にマスコミとかにばれたら一大事だろ。とりあえず、まずは蘭の父親から説得する。言葉では無理だと思う、態度でも無理だな……。でも、説得するよ。蘭と一緒にいたいからな……」
蘭と一緒にいたい。
オレの本音。
オレと一緒にいたい。
蘭の本音。
この両方を確実に知ってるのは園子ぐらいだ。
「分かってるわよ」
突然分かってると言われる。
何で?
「あんた達がずっと一緒にいたいって言うのはもう、昔から分かってるわよ。12年、12年もあんた達のこと見てんのよ。誰だって気がつくわよ」
そうか、園子とのつきあいもそのくらいになるのか……。
小学校に入学したときからだからな…。
思わず笑ってしまう。
「なに笑ってんのよ。笑ってると蘭はもらうからね」
「ま、マジ?冗談よせよな」
「冗談に決まってるでしょ」
そう園子が言ったときだ。
「新一、園子、お昼食べよう」
そう言って蘭が3人分お昼を持ってきた。
「新一、園子、お昼食べよう」
そう言って蘭が3人分お昼を持ってくる。
久しぶりに三人で食べたわね。
「で、蘭、新一君どうなのよ」
思わず二人につっこんでしまう。
「何が?」
嫌な顔をして新一君はわたしの方を見る。
「何って同棲よ、同棲。するの?しないの?」
わたしの言葉に二人そろって顔が真っ赤になる。
相変わらず、甘々で仲がいいわねぇ。
この風景も久しぶりに見たような気がするわ。
「こ、こんなところで良いだろう別に」
「良くないわよ。しっかりお互いの気持ちを確認したほうが良いでしょう。その為には第三者であるわたしが必要なのよ」
そう、この心優しい園子様が!立会人をしなくてはならないのよ。
幸いこの屋上はめったに人が来ないところ。
大丈夫。人は来ない。
「工藤新一、汝は、毛利蘭を幸せにするために同棲することを誓いますか?」
結婚式の要領でわたしは新一君に投げ掛ける。
「えぇ??」
何言ってんだよぉって顔してるわね。
でも、ダメよ。
絶対言わせるんだから!!
「工藤新一、もう一度聞きます。汝は、毛利蘭を幸せにするために同棲することを誓いますか?」
「わーったよ」
「わーったよ、じゃない!ハイ誓いますでしょ」
「はいはい誓います」
かなーり嫌そうに言うわね、此奴。
いじめるわよ。
「毛利蘭、汝は、工藤新一に幸せにしてもらうため同棲することを誓いますか?またその為に泣かされたとき遊ぶことも誓いますか」
「ハイ誓います」
蘭はうれしそうに言う。
「な、なんだよぉそれは!!!泣かされたときって」
反対に新一君は不満たらたらって顔してる。
「泣かされたときは言葉の通り。蘭のこともらうからね!」
「じょ、冗談だろう」
「あら、わたしは本気よ。新一君覚悟しててね」
フフフ、今まで蘭を泣かせてた罰よ!
ありがたく受け取りなさい。
五時間目と6時間目の間の休み時間に携帯が鳴る。
この携帯の着信は……。
「誰?園子」
真さんだぁ…。
「後でね、蘭」
そう言ってわたしは廊下に出て行く。
「もしもし」
「あ、園子さん」
真さんの声……。
「園子さん、今どこにいらっしゃるんですか?」
「今って真さんこそどこにいるのよ」
「ハイ、今日は杯戸高校が創立記念日なんで休みなんです。で先ほど試合の方も終わりまして……園子さんどうしていらっしゃるかなと………」
「今?今は学校帰りよ」
思わず嘘をついてしまう。
「ホントですか?」
「本当よ」
「だったらこれからお逢い出来ませんか?」
う…そ…。
「それ、ホント?」
「ハイ。ご迷惑ではなかったら杯戸駅まで来ていただきたいのですが」
凄くうれしい……。
逢いたい。
突然思い始める。
「行く。今から行く。だから真さん待ってて」
「ハイ、お待ちしてます」
相変わらず真さんは丁寧にいって電話を切る。
うれしい……。
真さんわたしに会いたかったのかな?
ん?
こうしちゃいられないわ!!
帰り支度しなくちゃ。
その瞬間、授業開始の鐘が鳴る。
ヤバイ、急がなくっちゃ。
「そ、園子どうしたの?」
「今から早退する」
蘭の言葉に手短に応える。
詳しく説明している暇なんてない。
真さんが待っているんだもの。
すべて準備完了した時、先生が入ってくる。
「すいません。鈴木園子、早退させていただきます」
そう言ってわたしは教室を出て行く。
真さん、待っててね。
ん?
わたし新一君と蘭のこといえないかも。
わたしも真さんのためだったら何でもしちゃいそうだわ。
放課後
「蘭……おっちゃんを説得しよう」
帰り道すがら新一は言う。
「昨日…蘭を帰さなかったらおっちゃんはオレ達のこと許してくれないって思ったんだ。蘭…帰るなってオレが言ったらお前どうしてた?」
………何も言えない。
多分帰らなかったと思う。
「……だからオレはとりあえず、これからのけじめとしてお前のこと帰したんだよ。別に同棲とか考えなかったらお前のこと帰そうとは考えなかった」
そこまで考えてたんだ……。
わたし、新一はその場の勢いで言ったのかと思ってた……。
「蘭……どうなるかわかんねーけど、オレ達に出来ることやろう」
「うん……」
そうだね。
まずはお父さんの説得。
その次がお母さんの説得。
はぁ、これでお母さんが一緒にすんでてくれれば一番最初はお母さんなんだけどなぁ。
「まぁ、無理だったら駆け落ちって言う手もあるけどな」
突然新一は言う。
「本気?」
「嫌?」
駆け落ち……かぁ。
「ロスに行った時みたいに?」
「バーロあれは駆け落ちじゃねーだろ」
「お父さんも誤解したし、園子も誤解したんだよ」
「……ハハハハ、そうだった」
もう、新一ってば。
駆け落ちはやっぱり最後の手段よね。