彼女の名前は宮野志保。
今日、わたし達のクラスに転校してきた。
赤みが掛かった茶髪でクールな目元の彼女は新一の目の前の席に座った。
それが異常に気になる。
新一が彼女を見たときの動揺、そして、彼女の新一に対する態度………。
凄く気になる。
どうしようもなく。
彼女は何者なの?
どうして新一は彼女を見て動揺したの?
訳がわからなかった。
昼休みに入り宮野さんが声を掛けてくる。
「毛利蘭さん、わたし工藤君とちょっと屋上で話しがあるからいいわよね」
何がいいわよねってどういう意味?
「少し長くなると思うから、お昼持ってった方がいいわよ」
ってわたしも屋上に行けってこと???
どうしてこの人新一を屋上に呼びだしたんだろう。
ま、まさか告白???
わたしにそれを教えたってことは、わたしはあなたに勝てるわよ!!って言う意味な訳???
最悪!!!
とりあえず、新一のお弁当とわたしのお弁当を持って屋上に行く。
屋上は基本的に生徒は入っていけないところだけれど、結構みんな屋上に行っている。
「灰原???」
そう言った新一の声の後に
「それに、毛利さんの顔を見ればだいたいの人はわかるわよ」
宮野さんの声が聞こえる。
灰原って阿笠博士の家に居候していた女の子のことよね……。
まさか宮野さんも新一と同じで薬のんで小さくなってったってこと?
うっそーーーーーーーーー。
「あら、やっぱり来たのね」
屋上の出入り口のところに宮野=灰原さんはいた。
「……こんなことホントは聞かれたくないことだと思うんだけど、少し、聞いてもいい?」
「矛盾してるわね。他人の気持ちがわかってるけど、自分の好奇心は抑えきれない。どっかの探偵さんみたいね毛利さん」
「そう言うつもりじゃ……」
宮野さんのかすかな微笑みがとても嫌みに感じてしまう。
「私が灰原哀だったってことでしょ。あなたが知りたいのは……」
「え、えぇ」
傷つけてしまったのかも…、少し後悔してしまう。
「工藤君に言って、私のこと話していいって」
宮野さんは顔を伏せながら言う。
「宮野さん……新一とはどういう関係?」
「何でもないわ。ただの知り合いよ」
そう言って宮野さんは教室へと戻っていく。
新一の方に行くと新一は静かに空を見上げていた。
「新一…、宮野さんと何話してたの?」
そんな新一の様子にわたしは聞いてしまった。
「わたしに話せないこと?」
「……ある意味あってる。けど、今はまだって所」
今はまだ……。
そのまだの時間が今の時間になるのはいつ?
「いつになったら話してくれるの?」
と静かな声で言う。
「近いうちだよ」
「近いうちって」
わたしの言葉に新一は詰まる。
近いうちってどのくらいだろう。
「早くて、1週間かな」
一週間?
どうして一週間なの?
聞いても答えてくれないような気がした。
わたしは話しを転換させることにした。
「ねぇ、宮野さんって哀ちゃんだったの?」
少しの沈黙の後のわたしの言葉に新一は驚く。
「急にどうしたんだよ」
「新一、宮野さんのこと灰原って呼んだでしょう。だからそう思ってさっき宮野さんに聞いたの。そしたら新一に聞いてって言われて……」
新一は少しうつむく。
「蘭、長くなるけどいいの?」
「………長くなるってどのくらい」
泣きだしそうになる。
新一はわたしの気持ち分かってるの?
そんな気持ちを見透かすかのように耳元にキスをする。
「な、新一」
「一晩掛かるけど、いい?」
そして、ささやいた。
「な、何言ってるのよ、新一は!!!!」
「だって知りてーんだろぉ。あいつの話は長くなるって言ったじゃねーか最初に」
灰原さんの話しは少し聞いたわよ。
だからって一晩かかるなんて思う訳ないじゃないの。
「何よ新一のバカ」
「バカはねーだろ……。蘭が居なくって寂しいんだよ……」
と新一は最後の方を誤魔化す。
ってこの人今なんて言ったの?
何か凄くうれしいこと言ってくれてない?。
テレながら新一を見るとなんか顔が赤くなってる。
まったく、しょうがないなぁ。
「夕飯ぐらいは作りに行ってあげるよ」
「マジ?」
新一はわたしの言葉にうれしそうに聞く。
「ウン。あと、これ、新一のお昼だよ」
わたしはそう言って新一にお弁当渡す。
久しぶりに新一のためにお弁当作ったんだよね。
「おいしい?」
新一の顔をのぞきながら聞く。
「あたりめーだろ、蘭が作った料理がうまいって言うのは」
新一はうれしそうにわたしが作ったお弁当を食べながら言う。
そんなうれしそうな新一を見てたらわたしまでうれしくなってしまう。
じゃあ、今日の夕飯は何にしようかな。
好きな人のために献立考えるのっていいよね。
あ、お父さんどうしよう。
まぁ、いっか、適当で。