時刻:午前8時
遠山和葉、睡眠中(予定)。
「ほんなら平次、頼んだで。ちゃんと届けてな」
玄関先で、オカンに言われる。
市にすんどる親戚のオバチャンの家にオカンに頼まれたお使いでいくことになった。
そのオバチャンはオレの親戚ん中で一番おしゃべりなおばちゃんなんや。
捕まったら最後10分やそこらで離してもらえへんねん。
1時間2時間はざら、3時間4時間なんて毎度のことや。
「分かった。オカン、オバチャンに言うてくれたんやろな」
「何をや?」
「オレ、午後から用事がある言うことや。和葉と出掛ける約束してんねんで」
そう、今日は和葉と出掛ける約束をしている。
珍しく事件もなんもない。
あったが根性で事件を解決した。
せやけど、昨日、学校から帰ってきたら、オカンから親戚のオバチャン所に荷物を持ってけと頼まれた。
「大丈夫やって。ちゃんと頼んだんやから安心しいや」
オカンの言葉にオレはオカンに頼まれたものをもってオバチャンの所に向かった。
時刻:午前10時
遠山和葉、起床(予定)
「でな、平ちゃん。おもろいんやで」
……あれから1時間。
オバチャンに捕まる。
勘弁してくれや…。
この分やと……お昼食ってけって言われるに決まっとるな…。
和葉との約束はお昼過ぎ。
まぁ、何とか間に合うやろう。
せやけどなぁ…。
話しにつきあわせられるのはホンマに勘弁や…。
時刻:午前12時
遠山和葉、支度中(予定)
結局、オバチャンにお昼をもらうことになった。
オバチャンちについてから3時間。
3時間やで…。
オバチャンの愚痴やら世間話やらにつきあわされてもうた…。
ホンマ、オカンはオバチャンに言うたんか?
今日はオレ和葉と用があるって…。
それさえも怪しいで。
時刻:午後1時
待ち合わせ時刻
ようやくオバチャンから解放され、オレは和葉との待ち合わせ場所に急いだ。
オレには珍しく時間ピッタリ!!!!
和葉のことや、もう、約束した場所に来とるやろ。
そう思って見回してはみても、和葉の姿がない。
「????」
オレのテには一応手帳がある。
和葉が
「これしっかりつこうててスケジュール管理しぃ」
というのがこの手帳。
それに今日の日付の所には和葉の字で
「ココには他の事件で出掛けるなアホっ」
と文句が書いてある。
間違いない。
今日やし、今の時間や。
って事はまだ和葉は来てへんっちゅう事や。
取りあえず、ついたことを和葉の携帯に電話する。
『ただいま、お客様がおかけになりました電話番号は現在電源が切られているか、電波の届かないところにおられます』
………。
ちゅう事はなんや。
まだ、電車のなかっちゅう事か。
あいつ結構律義やからな、ちゃんときっとんのやろ。
そう、思うとった。
待ち合わせ時間から30分経過。
……おそないか?
そんなことないか?
電車とまったんやろか?
まぁ、えぇわ。
たまには待つっちゅうのもえぇやろ。
いつも和葉には待たせてしもうてるばっかりやしなぁ。
そういや…4時間以上またしてしもうた事もあったわ……。
あんときはかなり口聞いてくれへんかったんや。
忘れてた…オレも…悪いんやけど…。
はぁ………。
和葉ぁはよきいや。
待ち合わせから1時間経過。
……いくら何でも遅いで。
寝屋川から大阪市内までなんぼっちゅうたって1時間はかからへんで。
携帯はつながらへんし…取りあえず和葉の家に電話してみるしかないなぁ。
『ハイ、遠山です』
「平次やけど…」
電話に出たのは当然のごとく和葉のオカン。
『平ちゃん、どないしたん?和葉と今日でかけるんとちゃうん?』
「そうなんやけど…まだ和葉きてへんねん。携帯もかからへんし…」
『ホンマ?和葉やったら…多分、もうでかけとると思うねんけど……』
「思うって…オバチャン、和葉とおうてへんのか?」
『そうやねん。朝から出掛けとったからなぁ。今、帰ってきたばっかりやねんよ。ん?』
オバチャンが不思議そうな声をあげる。
「どないしたん?」
『ちょっとまっとって……』
そう言って突然保留にされた。
遠山宅、和葉の部屋(時間不明)。
きもちいい陽気やなぁ。
何時間でもねむれるわ…。
そういや…今なんじやねんやろ…まぁ、えぇわ。
まだそんなおそないんとちがう…。
「……は……ずは…」
誰かが呼んでる……。
「……めん……。……ねん…ホンマごめんなぁ。……して。ほな……から」
お母ちゃんの声がするわ…何でやろ。
「かずは、でんわもち」
目を開けるとお母ちゃんが電話を持って呆れたように立っている。
何でやろ。
寝ぼけた頭をゆっくりと回転させる。
が、窓の外のいい天気と、気持ちいぐらいの気温とさわやかな風がまだ眠いアタシの頭を睡眠へといざなっていく。
「ほら、しっかりしぃ。平ちゃんからやで」
平次から?
お母ちゃんから電話を受け取り出る。
「もしもし…?」
『和葉、時計見てみい』
時計?
頭を回して時計を探す。
そう言えば、この前目覚ましが壊れたからない。
「ない…」
『………携帯見てみぃ』
「携帯?電源切れとる…。ちょっとまって今…電源いれるわ………」
いつの間にか切れた携帯の電源を入れて、画面を確認する。
……にじ……………2時???????!!!!!!
やっばーいやんかぁ。
ちょっとまってよぉ。
今日平次とデートやんかぁ。
思いだしたぁ!!!
昨日久しぶりに平次とデートやって思うて…メチャクチャ嬉しくってしょうがなくって蘭ちゃんのところで電話してずーっと話して、青子ちゃんともずーっと話してその後なんかメチャクチャ興奮してもうて…寝られへんかって……。
なんて平次には言えへん…。
「アハハハハハ…ごめん平次、いつの間にか電源切ってもうたみたいやわ。ホンマごめん」
笑って誤魔化すしかない。
「今からいくわ。平次もうちょっとまっとって」
『和葉、ちょっと聞いてもえぇか?おまえが、したくするのと、オレが、おまえのこと迎えに行くのどっちが早いとおもう?』
…ちょっと考える。
平次がいるところからココまで、30分。
アタシが着替えて、いろいろやって家を出るまで30分で、平次がいるところまで30分。
合計1時間。
「平次が来るほうが早い」
『そやろ。せやから、家でまっとっけや。今から迎えに行くから』
口調から…平次はあまり怒ってないような気がする。
けど…怒ってないはずないよねぇ。
「うん…待っとる。平次…」
『なんや?』
「ごめん」
『謝っとる場合やないやろう。ほな、今からいくからな』
そう言って平次は電話を切る。
やっぱ、怒っとるよぉ。
どないしよぉ。
とりあえず、平次が来るまで全部済ます。
着替えから、お昼から(お腹すいてもうてん)、いろいろ全部やって…ちょうど全部終わったとき、平次がやってきた。
「平次…ごめん、ホンマにごめん」
「……ホンマや」
呆れたように平次はアタシを見る。
「昨日眠れへんかって…」
「そう言えば……オレが帰ってきたときも電気ついてたな…」
「うん…」
平次は昨日事件で夕方、出掛けてった。
で、帰ってきたのは夜中の3時…。
「どないする?」
「なにが…」
「このまま出掛けるか?それとも家におるか?」
「やってせっかく……」
「あのなぁ、寝坊したおまえがわがままいえる立場か?アホ」
「……」
やっぱり平次怒っとる…。
「上がるで」
そう言って平次はアタシの部屋に上がる。
「和葉、お母ちゃんこれからまた出掛けなあかんのやけど…。アンタも出掛けるときはちゃんと戸締まりしい」
お母ちゃんに声を掛けられアタシは頷いてからお茶とお菓子を持って自分の部屋へと向かう。
「平次…やっぱり怒っとるよね。ホンマごめん。アタシ…ホンマに昨日寝られへんかって…寝たの何時やったか全然覚えてへんのよ。電気けしたんが4時ごろやったんやけど…気いついたら外明るくなって…………平次が出掛けてったの何時?バイクで…出かけたやろ」
眠れないって思って目つぶって潜って…ボーッとしてきたころ、平次のバイクの音が聞こえた。
「っておまえ…4時間ぐらいしか寝てへんやんか」
うつむいてるアタシの頭に平次の手がくしゃりと動く。
「平次……?」
「なんで眠れへんかったんや?訳言うてみぃ」
その言葉に止まる。
絶対に言えへん。
平次のこと考えてたら眠れなかったなんて言えない…。
だから漫画読んでたなんて絶対に言えない。
だから本読んでたなんて絶対に言えない。
からかわれるのぐらい目に見えてるんやから。
「言うてみぃ?和葉」
おもしろそうにアタシを見てる平次に…ちょっと頭に来る。
絶対、言わないっ。
「別に、平次には関係ないことやで」
「まぁ、えぇわ。今日はのんびりしようや。オレもほとんど寝てへんし。そや、夕方になったらオールナイトの映画でも見にいこか?」
平次は微笑んでアタシを見る。
「怒ってへんの?」
「怒る必要ないやろ。オレかて、おまえのことさんざん待たしとる。オレがおまえのこと待たせとった時間とおまえがオレのことまたしとった時間やったらオレの方がさんざん待たしとるやろ。せやから気にするなや」
「うん…」
その言葉にアタシは頷き平次の隣に座り直す。
「ホンマはな…」
「うん…」
「めっちゃ焦ってんで。おまえ、おらへんねんもん。事故か事件におうかと思ったわ。しかも携帯は電源入ってないって言うしなぁ」
「ホンマごめん。なんか切ってもうたみたいやわ…」
アタシは平次に謝る。
なんで切ったのか全然覚えてないんだけど…。
「かまわへんよ。せやけど…もう勘弁やわ。今日みたいなことは…」
「平次、それってアタシのセリフやで。平次こそ、アタシとの約束の時間ちゃんとまもりっ」
「うっ……」
結局、今日は平次とずっと部屋でごろごろしてた。
ホンマは買い物いきたかったんだけどなぁ。