彼は得たいの知れない棒(先端に星がついている)を取り出す。
あぁ、絶体絶命なのです。
願わくば、彼女が無事である事を。
ココで私と自称兄と共に彼の暴挙を止める以外にないのです。
「な、なんだい?その格好は。二人とも」
異常な状況を目の前の彼の元弟(と言うともの凄い嫌な顔をする)は私達の格好を見て言いました。
「元、陰陽師ですよコレでも」
「一応、道士ある」
「それで、この俺様に敵うと思っているのか?二人とも!!」
あぁ、元ヤン降臨ですか?
「昔取った杵柄、コレでも年期だけはそれなりに」
「あるあるよ!!!」
さぁて、世界最長寿国の共同戦線とでも参りましょうか。
今日は都内で国際会議があった。
ちなみに、あたしは今回の会議について行かなかった。
何故かって?
あたしも会議だったんだ。
広域首都圏の会議。
初めて神奈川さんや埼玉さん千葉さんに逢ったよ。
で会議。
あーだ、こーだと文句が飛ぶ。
うん……うちの上司ちょーワンマンだからね。
ごめんなさいって一応、謝っておくよ。
で、菊ちゃんより先に家に帰宅。
重要案件を相談する会議って言う訳じゃないから、結構早めに終わるんだよね。
夕飯は菊ちゃんが外に食べに行きましょうと言ったので、ぽち君とたまをおいて食べに行くのだ。
それまで暇だから二匹を抱いて縁側でごろごろ。
何食べに行くのかなぁ。
まだ時間はあるって言うのにドキドキしてる。
時々、菊ちゃんはおいしいご飯やさんに連れて行ってくれる。
それが楽しみなんだ。
怖くてお寿司の時は値段が聞けないけどね。
10月も末、明日から11月という今日。
さすがに、日が落ちるのも早い。
暗くなる前に庭に干してある洗濯物を取り込む。
今日は一日良い天気だったから、洗濯物も気持ちよく乾いてる。
会議……長引いてるのかな?
終わったらメールしてって言ったのに。
菊ちゃんからメールが来る様子はない。
部屋にあがらないで、暮れていく日を眺める。
……こっちに来て2つ季節が過ぎようとしてる。
もうちょっとで冬……。
紅葉が見所になったら菊ちゃんと一緒に何処か行きたいななんて…思ってしまう。
空に趨る飛行機雲を見ながらドコに続いているのだろうなんて考えてみたり。
なんかスゴくまったりしてる。
朝は結構忙しかったけど、今はすっごいまったりのんびりで、今日も終わるんだなぁとのんびり思う。
いや、夜があるから「オレ達の今日はまだ終わらない!!」なんて菊ちゃんに言われそうな気がするけど…。
「っっ。無事でしたか?」
と菊ちゃんが息せき切って帰ってきた。
「き、菊ちゃん。どうしたの?」
「が無事ならば………それでいいのです」
あたしの肩に手を置いて菊ちゃんは息を整える。
「大丈夫?あたしより菊ちゃんの方が大変そう」
息切れがひどすぎる。
「う、運動不足ですかねぇ。爺とは言え、運動は必要と言う事でしょうか」
「菊、あのバカは?」
「全く、相変わらずはた迷惑だよbooooo」
庭にフランシスさんとアルがやってくる。
「まいたと思うのですが………。」
ようやく息が落ち着いてきたのか、菊ちゃんはアルとフランシスさんにそう答える。
「……、あなたにはこの家の全てを教えました。………覚えていますね」
アルとフランシスさんがこちらに意識を向けてない瞬間を狙って菊ちゃんはあたしの耳元でささやく。
菊ちゃんが異常に緊張をしているような気がする。
確かに、教えてもらった。
この本田邸の菊ちゃんが言うところの『全て』を。
それが重要になるような事が今から起きるというのだろうか。
「菊、あの眉毛はおったか?」
アントーニョさんがロヴィーノと一緒にやってくる。
……アントーニョさんの表情がもの凄く柄悪い。
隣のロヴィーノはため息ついてる。
「あのアホ、見つけたら、絶対に殺したるわ!!!」
「あ、お兄さんもそれ参戦」
ギャーフランシスさんとアントーニョさんの台詞が不穏!!!
「ま、いいんじゃね?って言うか、オレの方に被害起きねえようにな」
「ロヴィも手伝え」
「じょ、冗談じゃねえよ!!あのバカ眉毛止めるのは手伝うけど、のためだし、それは構わねえけど。ボコるのはオレっ…」
「気張りいや!!ロヴィ」
「無茶言うな!!!」
………眉毛って言う事は、アーサー?
……何やったんだ、アーサー。
しかも、ロヴィーノ、あたしの為ってどういう事?
「誰や、あのアホに酒飲ませたバカは!」
「…………お兄さん………」
アントーニョさんの怒りに視線をそらしながらフランシスさんが答える。
「テメーかよ、フランシス!!!」
「……確かに、そうでしたね。止めるギルベルトさんの言葉を無視して、振る舞い酒を、『こんなのは酒じゃない、水みたいなもんだ』って言って、鏡割りしたばかりの日本酒を一杯……一合、飲ませたんですよね。実に良いお米の香りが漂って、私も飲みたかった。升で飲むのも良いものですよ……」
菊ちゃんは遠い目しながら言う。
一合……って言うと確か……180ml?
升でか……飲んでみたいなぁ。
「いや、日本酒だとどうなるのかなぁって。大体、あいつが飲んでるのってウィスキーとか、ラム酒とか蒸留酒じゃない?だから醸造酒を……」
「ビールは醸造酒の一種ですよ」
「そんなん、どーでもええわ。今の問題は元凶作ったんはフランシスコのアホと、あの眉毛がココにおらんのやったらいつ来るかって事や!!」
アントーニョさんが怖い……。
めちゃくちゃ切れてるよ。
コレが裏分か……。
想像はしていたが……まぁ、対眉って事で。
「あへんここあるかーーー!!!」
突然の叫び声と共ににーにが中華鍋もって庭に躍り出てきた。
「………あいやー…………。まだ来てねえあるかぁ………」
皆の視線を一身に浴びたにーにの顔は真っ赤だ。
「、そこあるか」
にーにはあたしに近づく。
「無事あるな。ならまずは一安心あるよ…」
「にーにまで……」
「が、あへんに狙われてるある。それを我は阻止しに来たあるよ」
狙われてるって、アーサー、何するつもりなのよ!!!
「菊、上だ!!!」
ギルの声がする。
「ギルベルトっっ」
「早く!!」
菊ちゃんに押されるように部屋の中に転がり入る。
「、良いですね。絶対に出てきてはなりません。私がさっき言ったとおりに」
菊ちゃんは扉を閉めて言う。
その寸前に見えたのは、庭に躍り出てきたギルと、ルートさんにフライパン持ったエリザ。
や、他の皆の上に浮かんでるアーサーだった。
……やべー、かなり尋常じゃないっすよ、これ…。
やばさ度MAX。
人がなんで浮いているの?
なんて気にしちゃいけない。
だって、彼らは『国』だもん、『国』だったら浮くぐらい出来る(できねーよ)。
自由の女神砲だって撃てる(だから撃てねーよ)。
あぁ、一人ツッコミ楽しすぎるぜー、とギルの真似っこして現実逃避してみる。
ても、外の騒ぎは変わらない。
ともかく、テレビをどかして(ビバ、薄型!プラズマ軽いぉ)壁を軽く蹴る。
『ストン』と音がして、忍者屋敷の始まり!!
そう、この家は忍者屋敷。
このからくりを知っているのは住人である菊ちゃんと教えてもらったあたし、元住人の西に住むという姉上ともう一人しか(でも構造はしらない)いない(設計建設に携わった、三重さんは忘れてるらしい)。
さぁ、教えてもらってないアーサーから逃げるために、この中に入ろうか!
テレビを少し横に動かして、スイッチ入れて。
まずは、自分の部屋へと向かおう!!!
*****
かすかな振動が家の方からする。
無事、が仕掛けを作動させる事が出来たようでホッと一安心。
……とまでは行かない訳で。
が中にいることを頭上のこの人に気づかれるわけには行かないのです。
問題は、この男。
一合飲んだ途端、豹変した。
彼は、本当はどれだけ弱いのだと、ツッコミを入れたくなる。
アルコール分解酵素がおそらく彼には存在しないのだろう。
存在はしても、その酵素は理性を保つというものから別の方向へと……はぁ。
ともかく、今はこの頭上の魔王……もとい、アーサー・カークランドをどうにかする以外にない。
「あいやー、何で浮いてるあるか、あへん」
「宙づりって言う事でもなさそうだねぇ」
のんびりと我が家に到着したイヴァンさんは言う。
「これはどういう趣向だい?菊君」
「私の希望ではありません。間違いなく、アーサーさんの暴走です」
「……面倒だから僕は見てても良い?」
「…出来れば、そうして頂いた方が助かります」
「そう?なら、手伝おうか?僕ほら、人が嫌がるのを見るのが大好きだからさ」
………っどうしたらいいんですか?これ!!
「じゃあ、お願いします!!」
面倒なので、ココはさくっと、イヴァンさんに殺ってもらいましょう。
背に腹は代えられないません
「ん〜じゃあ、面倒だから止める」
あぁもう、最初からそうしてください!!!
とんだ邪魔(と言ったら何をしでかすか分からないので、あえて口に出さず)が入りはしたが私は、頭上のアーサーさんと対峙する。
「菊、はドコだ」
赤い顔をしてアーサーさんはの居場所を聞いてくる。
いつの間にか酒瓶を持ってる。
教えられるはずがない。
こんなアーサーさんの目の前にあの娘を出す事は、悪魔に生け贄を出す事と同意だ。
「存じません」
「そうか……」
ゆっくりと降下してくる。
「言わねえか……」
何をしようと言うのか。
家の様子に気づかれたらおしまいだ。
「このオレを、怒らせない方が身のためだぞ」
そんな中二な台詞どうでも良いです。
日本酒を飲んだ上にプラスアルファの酒瓶。
あぁ、この人は何飲んでいるんでしょうね。
「って言うか、菊、かなりやばいと思うんだけど」
フランシスさんがこっそり話しかけてくる。
「酒のんだアーサーは最悪なんだぞ。オレは知ってるんだ。巻き込まれたくないよboooo」
アルフレッドさんが体を震わせて言う。
酒のんだアーサーさんが最悪なのは誰もが知ってますよ。
しかも、
「ごく、、ん」
あぁ、また飲んだ。
「よし、言わねえなら、探し出すまでだ。良いもの……見せてやるよ」
ニヤリと…笑って、アーサーさんはもう片手に持った星のついた棒を取り出す。
「我が名は、アーサー・カークランド!!偉大なるブリテン島を支配する王の名において、祝福せし力を!、今ココに具現せよ!ほぁた!!!!」
………ボンと音と煙が現れたかと思うと、そこに現れたのは彼のブリタニアエンジェルでした……。
「ふふふふふはははははは!!!ブリタニアエンジェルの奇跡をお前達に見せてやるぞ!!!」
うれしそうに、アーサーさんもとい、ブリ天は言う。
「さ、最悪だ」
嬉しそうに高笑いをあげているアーサーさんを横目に私たちに漂う、どんよりとした空気。
「どうするんだよ、この状況」
「ヴェ〜、怖いよぉ」
「近寄りたくねー」
「誰だって近寄りたくないだろう」
さて、どうしたものか。
「仕方ありません。この手しかないでしょうね」
そう言いながら耀さんを見る。
「……しゃあねえある。使えるなら何でも使ってやるあるよ!!召請帰命 陰陽洒育 急々大上老君律令!」
「それ清陽は天となり、濁陰は地となる 謹請し奉る、オン・シュラ・ソワカ!」
ブリテンが発動している状況下で、私と耀さんは昔取った杵柄を使える。
「な、なんだい。それは仮装かい?菊、耀。見飽きたアーサーのブリ天とは違うんだぞ」
アルフレッドさんが目を輝かせて私と耀さんの出で立ちを見る。
耀さんは式服、私は白い狩衣。
「コレは、正式衣装です。私と、耀さんは陰陽術と道術を使う事が出来るんですよ。ただし、ブリ天が発動している状況下においてですが」
「それ、なんのチートよ」
「気にしないでください。フランシスさん、仕様ですから」
「仕様って言ったってねぇ」
そう言って私と耀さんの様子をうかがっている(放っとかれたので少し涙目状態の)ブリ天を見る。
「それで、オレに敵うと思っているのかよ」
「思いますよ。コレでも、百鬼夜行を調伏してます」
「妖鬼はたくさん転がってるある。我の手足になるあるよ」
過去自慢でもしてみる。
「オレを、悪霊扱いにするんじゃねー!!」
他人に迷惑をかけるだけのブリタニアエンジェルが、人に迷惑をかける悪鬼や魑魅魍魎のたぐいとどう違うというのだ。
「ブリ天さん、いい加減、解呪させて頂きますよ」
全く、こんなことに時間を取られるわけにはいかないんですよ。
「え?」
え?
「何であるか〜。折角、方術を久しぶりに使える思ったあるのに〜」
「魔法合戦はしねえのか」
いや、だから何でしなくちゃならないんですか!!
「して欲しいなら、いくらでもしますよ」
面倒だからしたくありませんが。
「そうある、するある!!!」
あぁ、その気になった耀さんを止めるすべが見つからない。
やっぱりブリ天を解呪して、アーサーさんに戻ってもらう以外にない。
「九天応元雷声普化天尊 急々如律令!」
雷神の方術だ。
あぁ、もう、殺る気まんまんだなぁ。
他の方々に当たったらどうするつもりですか
何でこんな格好でアーサーさんに対峙してるのか、耀さんは分かってない。
他の皆さんだって何事かってぽかんってしてるし、第一、今の最大級の問題は、この人を元に戻して、の安全を確保しなくちゃならいって事なんですよ。
「エアルコメデロク ほぁた!!」
あぁ、もう適当に奇跡とやらを使わないで欲しい。
とりあえず、動き封じ込めましょう。
「乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤」
八卦の結界を張り、ブリ天を閉じ込める。
「お、オイ。出られねえじゃねえか」
「出られなくって結構!!」
「ふざけんな!!こうなったら……エラチキノコカミ、オオノムレモトマゲラヲドゥ、ナルカーカーサーハナガウ ほぁた!!」
、待っててください。
今、酔っぱらいは退治します。
*****
庭の様子が気になる訳で、こっそり覗きたかったけど、とりあえずもうちょっと待とうかなぁと考えて???
あれ、なんか、コレって!!!
あたしは、部屋の中にいたはずなのに、気がついたらアーサーもとい、ブリ天の前にいた。
「やったぞ、召喚できた!!!!」
あたしは、部屋の中にいたときのまま、しゃがんでる。
…………………………。
アーサー、丈短い。
膝上。
下手したら見える。
見たくない。
顔上げたくない。
ブリタニアエンジェルからあたしは視線を外す。
「、逃げなさい。晴陽は天となり、濁陰は地となる。陰陽、上昇し下降して物々変化なす。我は陰陽の理を護る物なり!かしこき、かしこみ奉る。」
菊ちゃんの呪文が聞こえる。
アーサーもなんかぶつぶつ言ってる。
今のうちに逃げないと。
「、ドコに行くんだ」
立ち上がって一歩、踏み出した瞬間、ブリ天に声をかけられる。
「あのね、アーサー」
「オレには夢があるんだ!!叶えさせてくれ」
なんの夢だぁ〜〜。
「ちゃん!!」
「天照大神以ちて、諸々禍事罪穢れを祓えたまえ清めたまえ。天つ神、国つ神、八百万神等共に、聞こし食せと白す」
「ほあた!!!」
…全部の声が混ざって、あたしは何かに巻き込まれた。
気がする。
*****
艶やかな絹織物の羽織。
煙が消えてそこにいるはずの二十歳のはおらず、10代も初めの頃の?が倒れていた。
「…………アーティ、ちゃんに何するつもりだったわけ?」
「おま!!!!」
「ヴェ〜、ちゃんちっちゃくなっちゃったの?」
「マジかよ」
周囲が騒然となる。
ブリ天モードから通常のモード(と言う言い方は正しくないでしょうが)に戻ったアーサーさんはおそるおそる?を抱き起こす。
「って、何してるんですか!!!」
「何してるある!!!」
殴り飛ばそうかと一瞬思った後に、耀さんよりも先にアルフレッドさんが殴ってくださったのでそれはまぁ良かったと言う事で。
「君は人さらいでもするつもりかい?」
「そ、そんなんじゃねえー」
アーサーさんから?を奪い取り彼女の脈などを確認する。
周囲の騒ぎに彼女は目が覚めたのか、ゆっくりと目を開けていく。
「」
静かに名前を呼べば彼女はにっこりと微笑む。
ふぅ、記憶は失ってないようで一安心ですが。
着物(小袖と打ち掛け)なのは気になりますが。
「………どうかしたのですか?」
ゆったりと樋乃が聞いてくる。
…口調がいつもと違いますよ……。
「、一つ聞いても良いですか?こちらの方々、分かりますか?」
私の言葉には周囲を見渡す。
「っ。あ、あのさぁ」
何かを思ったのかアーサーさんがに声をかける。
「…………どちら様ですか?」
そうアーサーさんに言ったに世界は凍り付いたのだった。