--出逢いと再会-- +4+   

 

「おはようございます、さま」

 朝早く、外の空気を吸いたくて出た庭先で、この道観の責任者(三蔵達を案内した落ち着きのない男)と鉢合わせする。
 正直、余り会いたくなかった相手でありは少しだけ顔をしかめた。
 もちろん、相手には気付かれていない。

「何用だ」

 短くは言葉を発する。

「はい、本日のご予定に関してお聞きしたかったのでございます」

 男の言葉にため息をつく。

「なんの為にだ?」
 どうせ帰ってくる言葉はロクでもない事だろうと予測をつけながらもは問い掛けた。

「はい、今日の午後、この街の町長が様と三蔵法師様と会食をしたいと申されたのです。お時間は大丈夫でしょうな?」

 もう、出席と答えたのだろう、確かめるように聞く言葉は断られたら困ると言った風情を出していた。

「私の用事は、斉天大聖祭で剣舞を行う事、ただそれだけだったはずだ。それ以上の事は竜祥より言われていない」
「しかし、天道師であられる様と三蔵法師様がこのような一介の道観で一同に介する事は滅多にございません。ここは三蔵法師様と今後の事について話し合ういい機会ではございませんか?」

 男の言葉にはわざとらしくため息をつく。

 確かに、男の言う事は間違ってはいないだろう。
『三蔵法師』と『天道師』が一同に介する事は滅多にない。
 だが、それはこういう地方での場合であって洛陽や長安に戻ればそれは容易となる。
 そうそう珍しい事ではない。

 それに、今後の事を話し合うというのはどういう事なのだろうとは首を傾げる。

「そのような場所でなくても『三蔵法師』と話す機会はいくらでもある。私もそうだが、恐らく彼等も先を急ぐ身。会食の件は断る。先方にもそう伝えろ」
「っ、様!!!!」

 の言葉に男は驚愕し狼狽する。
 そのうろたえ方にはもう一度ため息をついた。
 おおかた、軽く約束して焦っているのだろう。
 それが分かるから余計に頭に来る。

「おはようございます、様、朝ご飯の用意、出来ていますが、いかが致しますか」

 と男の間に入って訊ねたのは昨日の夜、夕飯の支度をしてもらった女性だった。

「では1階の食卓に並べてくれ。私も彼等と同伴したいと考えているから5人…」

 そこまで言って悟空の食欲を思い出す。

 そう言えば、かなりいっぱい食べるよね…。

「一応皿は5人分だが、食事は少し多めにしてくれ」
「かしこまりました」

 そう言って女性は踵を返し、厨房へと向かっていく。

「今一度、考え直していただけませんか?様」
「無駄だな。余計な時間をとりたくない」

 そう言い残し、は離れへと戻っていった。

 

 

「おはようございます、

 起きてるかと思い、覗いた居間で、八戒がくつろいでいた。

「おはよう、八戒」
「早いですね」
「うん……。あ、朝ご飯今、用意させてるから」

 の言葉を受け八戒は立ち上がる。

「どうしたの?」
「他の3人起こしてこないとなりませんから。案外寝坊するんです、あの人達」

 そう言って八戒は3人が眠る寝室へと向かっていった。
 その間に、朝ご飯にしては少しだけだが量が多い食事が運ばれてくる。
 量を見て少しだけ多かったかと思ったが、杞憂だったと気付いたのは食事が終了してからだった。

 

「えっと、買い出しはとりあえず終了しましたけど…」

 道観の入り口で待つように言われた4人はジープに乗り込みその場で待っていた。

、まだ来てねぇな」
「来ないのかな。俺、が一緒だったらすっげー楽しいだろうなって思ったんだけどな」
「来るか来ないかは、あいつが決める事だ」

 三蔵はそう言いながら、門の奥に立つ、建物を眺める。

「なんか、三蔵つめてー。三蔵は、に来て欲しくないのかよ」
「そんなわけ、ないだろーよ。だいたい、一番最初にを誘ったのはこの三蔵様だぜ?」
「悟浄の言うとおり、三蔵だって来て欲しいに決まってますよ。でも、三蔵の言う事も最もなんですよね。僕達が彼女に無理強いをする事は出来ないんです。僕達の本来の目的『牛魔王の蘇生実験の阻止』と彼女の目的である『道教の秘術の奪還』がリンクしていないんですから」
「確かにな…。それにしちゃ?三蔵様ってば余裕じゃん?なんか、は絶対来るって言う感じしてんじゃねーの?」
「フン、気のせいだろ?」

 三蔵は、まだの目的の道教の秘術が『反魂法』でありそれが牛魔王復活に使われる可能性があると言う事を、3人には話していない。
 それ以上に、の目的地がほぼ自分達と同じ場所である事も話していないのだ。

「何か知ってるんですか?」

 八戒の笑顔にも三蔵は答えず、静かにたばこの煙を吐き出すだけで。

「その顔は絶対知ってるって顔だ!!」

 悟空の追求にも余裕で、

「三蔵様ってばやらしー。な〜に隠してんだ??」

 悟浄の絡みには…結局

「うぜーんだよっ」

 絶えきれなかったのか発砲する。

「町中で発砲するのもやめてくださいっっ」
「当たったらどうすんだよ!」
「当たるように撃ってんだよ!!!」
「俺まであたるぅ」
「っつーかてめぇも当たれ!!!」

 悟浄が悟空を巻き添えにしようとしてとうとうジープの上で悟空と悟浄と三蔵のいつも通りのやりとりが始まった。

「クスクス…アハハハ」

 最初は、押さえてそのうち絶えきれなくなって爆笑に入った声がすぐ側で聞こえてくる。
 4人が一斉にそちらに向くとそこには白い式服を持ってチャイナ服姿のがいた。

「遅くなってごめんね。いろいろムカついた事があって時間かかっちゃったんだ」
っ。あのさっ」

 悟空が待ちきれないという風に問い掛ける。

「うん。…あのね、こんな所で言うのもなんなんだけど、わたしの旅の目的は『道教の秘術』中の秘術である『反魂法』を記した書物を取り戻す事なの。三蔵様にもこの事は話したんだけどね…」

 の話を聞きながら3人は三蔵をちらりと見る。

「で、みんなの旅の目的が『牛魔王蘇生実験の阻止』って事で…。やっぱり、『反魂法』を使われてる可能性もあるってわたしも思ったの。さすがに昨日聞いた時点ではその後に言われた事が衝撃過ぎて頭まわらなかったんだけど…。で〜くどくど、話したけど、あの、わたしも西まで連れて行ってもらえませんか?最後まで付き合ってなんて言わない。自分の事は自分でけりつけるつもりだし。迷惑じゃなかったらでいいんだけどね」
「バカか?」
「は?」

 三蔵はの言葉を聞いて即答で返す。

「来いって言ったのはこっちだ。わざわざ聞き返す事あるか?」
「だってですねぇ…」
「それから、敬語も様もつけるなと言ったはずだ」
「そんな事言ったって…」

 いつ終わるか分からない押し問答に八戒はため息付きながら納める。

「まぁまぁ、ともかく、一緒に行くと決まったんですから、は後部座席に座ってください。悟浄、悟空、ちゃんとの為に席を開けてくださいね」

 後部座席に悟空と悟浄の間に座ったを確認して八戒は車を出した。

 風に吹かれてはふと気付いた。
 時折襲いかかる『何かを』求める喉の渇き。
 それがまだ、訪れていない事に。

「あぁ、それ俺がにもらった奴!!」
「俺がもらった奴だって」
「うっせーんだよ、てめぇら!!!」
「三蔵、に当てないようにしてくださいね」
「アハハハハハ」

 

 

 蓮の花咲き乱れる所にて…。

 

「また…看ておられるのですか?」
「あぁ、バカが増えたって思ってな」
「バカ?…でございますか」
「あぁ、バカだよ。黙ってりゃわかんねぇ罪を告白してバカ共に逢いに行くって言ったバカ」

 二郎神は観世音の言葉に看るとそこには深栗色の髪を持つ少女。

「……あ…あ……っ!!!」
「何バカ面してんだよ。看ててやろうぜ。今度こそ、あいつらが手に入れる事が出来るかな…」

 観世音は娘を見るような目で少女を見た。

 

 蓮の花咲き乱れる所にて…。

 うつろな目の少年はまだ…そこに何も映さずに……。

 

 

 

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と言うわけで、終わりました。出逢いと再会編。
苦手なんだよねぇ、三人称。
だから異常な程長くなって…。
全部合わせて通常長いなぁと思われる話のページ数(10ページ強〜15ページ未満)の2倍。
4当分にもしたくなります。

乱入!!!

八戒:お疲れさまです(ニッコリ)
長月:わーい八戒だぁ(^_^;)
八戒:なんですか、その顔は。何か、心にやましい事でも?
長月:いえいえそんな事。あのぉ、手短にお願いしたいんで、よろしく。
三蔵:答えろ、なんで苦手な三人称にした
長月:うわ、出てきてそうそう質問ですか…。周りがそうだったからです。次回は一人称になるかも…。
悟浄:で、誰がメインな訳?な〜んか俺じゃないっぽいんだけどさぁ
長月:まぁ、うん、悟浄じゃない。
悟浄:ひでぇ
悟空:じゃあ、俺?
長月:…でもない。それに関しては、次回!!!!

:と言うわけで、次回予告!!!
な〜んかとんでもない人たちと一緒に旅する事になっちゃったけど、これでよかったのかなぁ?
すこ〜し不安だったりするんだよね。
えっと、何?次回予告?らじゃ〜。
森の話です。木に囲まれてると陽の気を吸収出来るからいいんだよね。女の子って陰の気の持ち主だから。あとね、使いすぎると眠くなるのは秘密です。でも…いつもだったら平気なんだけど。
三蔵:何、いつまでやってる
:あ、三蔵だ。考え中なの。邪魔しないでよ。
三蔵:行くぞ。
:は〜い。あ、この人ってね…!!。っっ(^_^;)次回、行動の指針。須く看てね。