大地の物語 1話:カーレルの心配事

 ラディスロウとは地上軍作戦統合本部のことで…。
 動く本部と呼ばれている。

 移動要塞と言えば聞こえはいいけれど、地上をはいつくばっているだけじゃやっぱり移動してることにはならないわよ。

「ロディオンは恐らく兵器製造工場と思われます」

 作戦本部ではリトラー指令以下、作戦実行者が集まっていた。
 私は作戦本部での情報将校のイクティノス=マイナード少将の各天空都市の情報聞きながら、つい先日、リトラー司令他、大幹部等に言われた言葉を思い出していた。

「ラディスロウに推進装置をつけたい」

 ココに来て頭を悩ませる羽目になるものが3つになってしまった。

 一つは、この劣勢と言う地上軍で天上軍に対する切り札と言える武器の製作。
 一つは、今後の作戦に必要な強襲用戦闘機イクシフォスラーの製作。
 そして、このラディスロウの推進装置。

 別に、悩んでる訳じゃないけれど。
 どっちかと言えば、考えなくちゃならないことかな。

 科学者である私ハロルド=ベルセリオス様にかかれば、そんな難題どーってことないんだけど。

 でも、慢性的な物資の不足には…頭を悩まされる。

「ハロルド博士、イクシフォスラーの完成状況はどのくらいかな?」
「ほぼ完成に近付いてます。あとは、ジャミング装置が完成すれば完璧なんですけど…。手間取ってるんで…。出来れば、2日欲しいですね。作戦までに」
「2日?ハロルド、掛り過ぎじゃないのか?」

 私の正面に座っていた今回の作戦の中心の指揮を取るディムロス=ティンバー大佐が文句をつける。

「今回の作戦には万全を期したいって言ったのはどこの誰?ダイクロフトの探査装置は並じゃないのよ。ちょっとしたレーダーにも反応する。天地戦争初期、地上の主立った軍事施設がベルクラントによって狙われたのは何故?それ分かって言ってるの?」

 私の言葉にディムロスは黙り込む。
 その沈黙の中で口を開いたのはリトラー司令。

「ディムロス大佐、それまでに万全の体制で挑めるように準備をしよう。ハロルド博士、君も完璧に完成させるよう努めて欲しい」
「もちろんそれは」
「では、これにて本日の会議は終了する」

 会議は終了し、メンバーは散会していく。

 さて、しょうがない。
 まぁ、ディムロスの言い分も分かってるし。
 こんな戦い、早くおわしたいって言うの分かるし。
 慢性的な物資不足を補う為に、いざゆかん!!

 物資保管所へ!!!

 っと、その前に。

「兄貴」

 私は、双子の兄であるカーレルに声をかける。

「なんだい、ハロルド」
「これから私、物資保管所まで行ってくるから」
「一人でかい?」
「うん。なんか問題?」

 私の言葉に兄貴は眉をよせる。

「問題だろう」
「何で?」
「そう遠くない所まであるとはいえ、やはり距離がある。天上軍が降りてきてるというし。一人では危ない」

 と兄貴。

 なんかかな〜り心配してくれてる。

「う〜んそうかな?じゃあ、兄貴一緒に行ってくれる?」

 忙しくなかったらと付け加えるのも忘れない。
 兄貴は、忙しい。

 天才軍師。

 兄貴はよくそう呼ばれる。

 負け続きだった地上軍がこのところ好調なのはこの兄貴の作戦による所が大きい。
 もちろん、この天才科学者である私のおかげって所もあったりね。
 だから、あんまり、頼りたくなかったんだけどぉ。

「そうだな、その方が心配しなくてすむ」
「そうかなぁ?」

 私の言葉に兄貴は笑って応える。

「そうだとも。直ぐにでも行けるのかい」
「うん、問題ないわよ。兄貴は平気なわけ?」
「あぁ、こっちはもちろん問題ない。急な用事は入らないだろう。2日後の決行日まで準備期間に入ってるからね」

 と、いうわけで私達は物質保管庫に向かうことになった。

*あとがき*
メインタイトルにあまり意味のない天地戦争を舞台とした話。日記に載せた加筆修正版。
状況としては、天地戦争中盤。
ソーディアン計画がまだ発動していない前。
4話目のディムロスの不満で発動。
ディムロスが大佐なのは間違いではありません。
彼はとある事件を経て、中将に昇進します。


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