会議室には今、私と、兄貴、クレメンテのじいさんにリトラー司令。
と、シャルティエ。
「ディムロス=ティンバー中将、入ります」
そして、声と共にディムロスが会議室に入ってくる。
少し遅れて、イクティノス。
「…どうやら、これでそろったようだな」
いつもの司令席に座っていないリトラー総司令が言う。
「……ハロルド、どうしてお前がそこに座っているんだ?」
ディムロスは、いつもリトラー司令が座っているはずの席に私がいることにようやく気付いたらしい。
気付くの遅すぎだわっ。
「ハロルド、頼まれていた資料です。参考になるかどうかは分かりませんが」
イクティノスが席に着く前に分厚い資料をくれる。
「ありがと、イクティノス。ふむ、さっすが、レンズ工学に精通してるだけあって良い資料じゃない。参考にさせてもらう。司令、とりあえず、始めてください」
私の言葉に司令はうなずく。
「ディムロス=ティンバー中将・カーレル=ベルセリオス中将・イクティノス=マイナード少将、そして本日付けで昇進したピエール=ド=シャルティエ少佐、君たちに集まってもらったのは他でもない。我々が極秘裏に進めてきた計画対ミクトランを最終目的とする局地専用特殊部隊『ソーディアンチーム』に君たちは任命された」
「特殊部隊ですか?」
シャルティエの言葉に司令はうなずく。
「…ソーディアンチームというのはどこからその名前が出てきたんです?」
「うむ、君たちが使用する特殊な武器から命名された。詳しいことはハロルド君頼む」
「了解しました」
司令の言葉にうなずき、私は説明を始める。
っと、その前にっ。
「ディムロス中将、この剣は何だか覚えてる?」
「………それは、バルバトスの件で俺が使った奴ではないのか?」
「そのとおりよ。で、使い心地はどうだった?率直な感想を聞きたいの。返してもらった時は私、話聞いてなかったのよね」
「…お前なぁ……。使い心地は悪くなかったぞ。そうだな…むしろ、いい。普通の剣よりも手になじむし、手足を動かすように使えるのがまたいい。見た時はさすがに不安だったが、切れ味も悪くない」
「…ま、良いでしょう。予想通りね。さて、ソーディアンチームのソーディアンというのはこの剣の事よ。材質は柄の所は生体金属ベルセリウム。刃の所は切れ味を上げるためにベルセリウムと鋼の合金。ここにはまっているのは特殊なレンズよ」
「そんなので、ミクトランを討てるのか?ミクトランは晶術を駆使してしかも、奴の近くにある強大なレンズのせいでその晶力はあがっていると聞くぞ」
「甘いわね、ディムロス。これで完成系だと思っているの?」
「……違うのか?」
はぁ、本気でディムロスはこれで完成したと思っていたらしい。
まったく、これだもんね。
ま、仕方ないわよね。
説明なんてしてないんだし。
「この特殊なレンズが、今回の武器の鍵なの。一人一人にこの武器を持ってもらうんだけどね、このレンズに属性を組み込ませ、なおかつ、持ち主の人格を投影するのよ」
「はぁ?」
事情を知らない、イクティノス、シャルティエ、そしてディムロスの3人は驚く。
「……人格なんて投影出来るのか?」
「特殊なレンズ技術を使えばね」
「ハロルド、その件だが、ベルクラント開発チームを地上軍に引き入れることになった」
突然の兄貴が言葉を発する。
「それ、ホント?」
「開発チームの方からオファーがあったんだ。天上軍より抜けたいと」
兄貴の言葉に、情報将校であるイクティノスがうなずく。
でも、こんなに早くになるとは思わなかったわね。
これなら、予定より早めにソーディアンが完成しそう。
「特殊なレンズ技術とは…ベルクラントの様な投射技術か」
「そうよ。ベルクラントには特殊なレンズ技術が組み込まれてるの。その技術を応用してソーディアンに使い手の精神を投影しようというわけ。そして、レンズには晶霊術の応用を組み込むから詠唱抜きで晶術を使うことが出来るわ。どう?勝機、見えてきたでしょう?」
私の言葉を疑っていたディムロスとシャルティエはうなずく。
「そうそう、それから、ソーディアンは各自にあわせた物を作ることになるから。形から重さからその他いろいろ、個人個人で聞くから、ちゃんと考えておいてね。司令、こんな所です」
「うむ。ありがとう、ハロルド君。何か質問あるものはいるか?まぁ、分からないことがあればハロルド君がいろいろと説明してくれるだろうが」
リトラー司令がその場にいるメンバーの顔を見回す。
…と、不意にクレメンテのじいさんが声を上げた。
「ハロルド、ワシにも一本作って欲しいんじゃが」
と…。
………は?
その場にいた全員がクレメンテのじいさんへと目を向ける。
「じいさん…。いきなり何?」
「だからのぉ、ワシにも一本作って欲しいんじゃ。まだまだ、若いもんには負けるつもりはないし、引退する気もない。このメンバーじゃ、まとまりがなさそうで、ちと不安でのぉ。ワシも、ソーディアンチームに入るぞ」
「ちょっ、ちょっと、じいさん、何言ってんのよっ。対ミクトラン戦が最終目標なのよっ。じいさんなんてっ」
「ひどいこと言ってくれるのぉ、ハロルド。晶霊術を組み込むんじゃろ?晶介術と言ったかの。ほれ、それを後方から使っておれば安全じゃろ?皆が心配せんでもすむ」
な、何考えてんのよぉ。
この、じいさんはっ。
「兄貴っ」
兄貴を見ると、首を横に振るばかり。
「ワシを外すわけにはいかんて。のう、リトラー」
だめ押しのようにじいさんの言葉にリトラー司令は、はいとうなずく以外になかった。
はぁ、ホント、クレメンテのじいさんには参るわ。
わがまま言い出したら誰も止められないんだもんねぇ。
ともかく、会議はココで終了。
ソーディアンについては後日、詳しく設定すると言うことで一応のまとめをつけた。
会議が終了して2時間後、美人の女医さんが血相変えて、私の部屋に飛び込んできて「自分の分も作れっ」と騒いだのは…言うまでもない。
結局、アトワイトも入ることになっちゃったのよねぇ。
まぁ、これで、属性がほぼ均等に分かれるから、私としては良いんだけどね。