「、梅花、起きなさい!!」
しっとりした昨日までの日々はドコに消えた!!
のんびり寝てたあたしとメイちゃんを起こした菊ちゃんはオタクルックだった。
キャラTにジーンズ姿。
背負うリュックにはスポーツドリンクが常備されているはずだ。
「フランシスさん、アルフレッドさんもすでに準備完了してますよ!!」
「は〜い」
起きたくないです。
まだ、寝てたいです。
くそ暑い真夏だけど、眠ってたいです。
いくら、真夏の祭典だと言われようと、あたしはあの暑い中に行きたくないです。
「、早く起きなさい!!」
菊ちゃんに叱咤される理由が分かりません。
今日は真夏の祭典2日目。
夕べ、やってきた面々を接待……コミケに連れて行く事だそうです。
「菊ちゃんもお疲れ様」
縁側で、蚊取り線香焚きながら、夏の宵を楽しむ。
「ご存じですか?」
「何が?」
菊ちゃんは杯を傾けながらあたしに言う。
縁側で、流れる風と遠くに聞こえる花火を肴に晩酌中なのだ。
二人そろって浴衣。
菊ちゃんは黒地に縞が薄く入っている。
あたしは白地に朝顔。
この前、フェリシアーノ達が来たときとは逆の色だ。
「今日は七夕ですよ」
七夕?
「旧暦です」
言われて納得、旧暦だと今日は7月7日なのか。
「晴れてるね」
「そうですね」
星はあまり見えないけれど、そう言えば月も見えない。
「上弦の月はもう沈んでますよ。だから、七夕祭りには最適なのですよ」
菊ちゃんはそう言って再び杯に口を付ける。
旧盆も過ぎると、秋の気配が濃くなってくる。
昼間は暑いのに、夜は涼しい風が吹いてくる。
「ちょっと寂しいな」
「何故ですか?」
「夏が終わるから」
「そうですね。ドコにも行けませんでしたしね」
「ベルギー行ったじゃん」
「海ですよ。と海に行ってみたかった。そしてビデオ撮影」
何故、そこに撮影が出てくる、しっとりとした雰囲気台無しじゃん。
「は、冗談ですけどね」
にらむあたしに菊ちゃんは乾いた笑いを浮かべる。
ホントに冗談かなぁ?
もう、怪しくって。
「、短冊がココにあります」
「菊ちゃん、笹がありません」
「そうですね」
そう言いながらも菊ちゃんはあたしに短冊と筆ペンを渡す。
お酒がこぼれるので、コレを飲んでからにさせてください。
「夏はやはり冷酒ですね」
飲んでいるあたしを見て菊ちゃんも再びお酒に口を付ける。
「あたしは、冬でも冷酒派ですよ」
「おや、熱燗になさらないんですか?」
「………あのもわってくる香りが苦手で…」
熱燗もおいしいんだろうけど……あのにおいが苦手なんだよなぁ。
「ホットワインはどうですか?」
「飲んだ事ありません」
どうなんだろう、ワインの場合ももわってくるのかな。
「冬になったら飲んでみようかな」
「それは良いかもしれませんね。で、」
菊ちゃんはお酒を飲むために脇に置いておいた筆ペンと短冊をあたしに渡す。
「ふぅ」
ため息を一つついてあたしは菊ちゃんから短冊を受け取る。
「何を書けって言うんですか」
「貴女の願いなんてどうですか?」
「あたしの願い……ねぇ。なんだろう」
結構、あんまり無いような気がするんだよねぇ。
物欲か?って言われても首傾げちゃうし、食欲もそうだし、菊ちゃんの料理はおいしいから、結構幸せだし。
足りないのって何だろう?
……彼氏がいない?
って言うぐらいだよなぁ。
「菊ちゃん、あたし彼氏作ろうかなぁ」
なんてお酒飲みながら呟いてみる。
「っずっと私のそばにいてくれるんじゃなかったんですか!!!」
すっごい剣幕で菊ちゃんは言う。
「……そのつもりだけど?」
「……………、からかいましたね」
「からかってないってばぁ」
って言うか、菊ちゃんだよ。
彼氏ぐらい作れって(は言ってないか)。
ヨメに出すって。
「嫁に出るには、彼氏を作らなくちゃならないと思わない?」
「私の目の黒いうちにはに手を出す者には手討ちします」
それじゃ、嫁に行けないって。
「貴女が……誰かを思うのならば、それは致し方ないでしょうね」
「それは好きな人を作れって事?」
「そう言う事です。好きでもない相手と付き合うのは、よくありませんよ。別れるのが目に見えてますからね」
それは、あたしも賛成。
よく友達が告られたからって付き合って3ヶ月もしないうちに別れてた。
「おやおや。では、そろそろ、短冊書いてくださいね」
「はーい」
あたしの返事を聞いて菊ちゃんは立ち上がる。
追加のお酒持ってくるのかな?
あたしはその間、菊ちゃんの要請に渋々短冊に願い事を書く………事がないんだけどなぁ。
何を書こう。
「ちゃん、何してるの?」
へ?
顔を上げればフェリシアーノの顔……ちょ、ちょ、チョー近い!!!
「へへへへ、この距離じゃちゃんにキスしちゃいそうだね」
ちょ、ちょ、ふぇ、フェリシアーノ!!!
「この浴衣、この前のと違うね」
「馬鹿フェリ、と顔が近い!!」
「ヴェーいいじゃん、兄ちゃん〜」
「良いわけねえだろう。はお前のもんじゃねえの」
「でもさぁ兄ちゃんのでもないよね」
なんだこの状態!!!!
あたしの目の前にフェリシアーノが。
「で、、何、書いてるんだ?」
「ちゃん、この浴衣前のと違うね」
「は黒いのも似合ってたけど、白いのも悪くないな」
隣にはロヴィーノが。
……いや、おかしい。
「っていうか、二人ともいつ来たの?」
「今だよ〜〜。ボナセーラ、ちゃん。久しぶり、じゃないか?」
「馬鹿フェリ押さえるのが大変だったんだぜ」
「兄ちゃんだって怖がってたじゃん」
「し、仕方ねえだろ!!ムキムキがいるとは思わねえじゃん。っつーか、なんであいつもいんだよ」
ムキムキ?
って事はルートさんも来てるのか?
菊ちゃんが立ち上がったのはそう言う理由?
「こら、お前達、が困ってるだろう!!」
「っつーか、お前暴れんじゃねーよ」
「うるせーんだよ。何で、日本に来たのに、芋兄弟とマカロニ兄弟がいんだよっ。ごらっ」
後ろを見れば、ため息をついてるルートさんにアーサーを押さえているギル、と困ったようにビール瓶とコップをのせたお盆を抱えてる菊ちゃんだった。
「来るんだったら早めに知らせていただければ、それなりの準備を出来たものを……」
「菊ちゃん、知ってたの?」
「まぁ、ちょっと前に連絡がありまして」
「ふーん」
下駄を履いたまま膝立ちで座卓の所にあるおつまみを取りに行く。
「、はしたないですよ」
「はーい」
下駄を手に持ちおつまみを取ってもう一度縁側へ。
本日の目的は夕涼みなのだ。
「なんで、冷やすんだよ」
「日本のビールは冷やす方がおいしいんですよ」
「ぬるいビールっておいしいの?ていうかビールは飲めないけど」
「私が飲んだときは口に合いませんでしたので……冷やしましたが」
そうだよねぇ、やっぱり夏は冷たい方がおいしいよね。
「まぁ、製造法の違いもあったりしますからね」
ふーん。
「ねぇ、菊。ワインはないの?」
「ワインですか?今日は日本酒かビールのみと決めていたので、ワインは用意してないのですよ」
そう言えば、菊ちゃんはワインセラーは持ってなかったなと思った。
「日本酒でどうですか。おすすめは、そうですね……」
「菊ちゃん、にごり酒がいい!スパークリングな奴!」
「そうですね。のおすすめのものにしましょうか。フェリシアーノ君、ロヴィーノ君、よろしいですか?」
「え?あ、うん。って言うか、ちゃん」
「お前、飲めるの?」
「まぁ、それなりに」
って言うか、今も飲んでるし。
今何杯目だっけなぁ〜。
まぁ、お酒飲むの嫌いじゃないし。
学生の頃、飲み会で酎ハイとか飲んだし。
家にいるときは日本酒なんだけどさ。
「は強いですよ」
「強くないよ。普通だよ!」
「何を言ってるんですか?この前燿さんがいらっしゃった時、貴女の強さに驚いてましたよ」
誤解!
あの時あたしが飲んでたのはチューハイ。
チューハイ5本、3時間はありでしょ?
「………無い方もいらっしゃいますよ。幸いと言いますか、ココにいる方は強い方ばかりで…………。ギルベルトさん、ルートヴィヒさん、アーサーさん、ビールはそこにあるだけですので、諦めてください」
話の途中で真っ青な顔して菊ちゃんは背後の3人に告げる。
とりあえず、酒癖が悪くなさそうなルートさんとギルはおいといて、一番まずい人がいるじゃん!!
噂でしか(読んでしか)知らないけどさぁ。
「……………アーサー大丈夫なの?」
「ルーイとジルベルトがいるから大丈夫だと思う」
「ムキムキだって、酒癖悪いじゃねーか」
「ルーイは酒癖悪くないよ?」
「じゃあ、ギルは?」
「………ん〜限界まで酔ってるところ見た事無い」
「って事は、この中で一番酒癖悪いのってアーサー?」
「うん」
縁側で内緒話中のあたしとくるん兄弟。
「これぐらいじゃ、オレもルッツも酔うっていうレベルじゃねえから、心配すんなって」
「オレも問題ないからな!!大体、オレはそこまで酒癖悪くないからな」
「ドコの口がそう言ってるんだ、アルトゥル!そこら中で迷惑かけているという自覚をしろ!!」
「……うっっ。別にそこまで酒癖わるくねぇよ、ばかぁ」
なんか、もう泣いてる。
「どうぞ、アーサーさん、少し水飲んでください」
「菊まで、オレはっ酔ってないぞ」
「はいはい。少しすっきりしますよ。(の為に私)が用意したレモン水です」
「そ、そっか」
菊ちゃんの言葉にアーサーは水を飲む。
「アーサー、大丈夫?飲み過ぎちゃダメだよ」
「あ、あぁ。分かった、がそう言うならな」
そう言って大人しく、水をコクコクと飲む。
なんか可愛いなぁ。
ふふふ、ちょっと楽しい。
「菊ちゃん、楽しいね」
「そうですね」
遠くで花火の音がする。
「うわぁ、これおいしいねぇ」
「スパークリングな日本酒って言うのもおいしいな」
「発砲タイプのなのはつい最近出回ってきているのですが、女性にも人気あるんですよね」
「あたし、スキー。おいしいよね」
日本酒を冷やした切り子のぐい飲みのグラスにそそぎ一気に飲む。
「おいしいっ」
「、一気はダメですよ」
「ちょっとしか入ってないんだもん。大丈夫」
隣に座った菊ちゃんに寄りかかる。
今のにごり酒でちょっとだけ、酔いが回ってきたのは秘密。
「眠くなりましたか」
「ううん違う〜〜」
あのね、ただね、幸せだなぁって思ったのですよ。
「幸せですか」
「うん。そう、だってね、菊ちゃんがいるでしょ?フェリシアーノと、ロヴィーノがいるでしょう。それからルートさんに、ギルとアーサーもいるんだよ。幸せなんですよ」
そうだ、短冊。
このまま幸せだったらいいなぁって書こう。
「」
短冊に集中始めたらギルがあたしの事を呼ぶ。
「何?」
手には水が入ったグラス。
「ほら、菊がお前に作った水」
「ギルベルトさんに持ってきていただくよう頼んだのですよ」
菊ちゃんが言う。
「お前、飲み過ぎじゃねえのか?」
「ちょっと飲んだかなって感じだから、飲み過ぎって訳じゃないよ。大丈夫、アーサーみたいに酔っぱらってパブって、他人に迷惑かけるって事ないから」
「さりげなく、言ってんじゃねえよっ。っつーか、、お前性格悪くなってねえか?今まで猫かぶってたのかよ」
猫?、可愛いよね
「は元々そう言う性格ですよ。勝手に誤解したのはアーサーさんですよね、」
「ねー」
菊ちゃんとうなずきあって、ギルが持ってきてくれた水を飲んでみる。
レモンが入ってすっきり。
風が優しくて、眠くなってくる。
けど……。
「、何してるんですか?」
「もうちょっと飲もうかななんて思って」
だから、没収は止めて菊ちゃん。
「ダメですよ、この前、眠いってそこで眠ったのは誰ですか」
「夏だもん。大丈夫」
「大丈夫じゃありません。他の方だっているんですよ」
「大丈夫だとおもうんだけどなぁ」
「何を根拠に」
あたしの言葉に菊ちゃんはあきれる。
大丈夫だよ、菊ちゃんがいるし。
うん、大丈夫。
あと………………ん〜〜。
「何となく〜〜」
うにゃーん。
「あぁ、もう結構酔っぱらってますね。ほら、お風呂に入ってもう今日は眠りなさい。すっきりしますよ」
うーん、まだ起きてる〜〜。
「起きているじゃないですよ。夏休みは今日までです。明日からまたいつも通りなんですからね」
えぇ、いつも通りって〜〜。
うー、仕事かぁ。
「でも…、みんながいるのに、寝たくないよ」
「全く、甘えっ子になって…、困ったものですねぇ」
菊ちゃんの声が甘い。
その声聞きながら目をつぶる。
なんか遠くからみんな声が聞こえるけど、まぁいいっかなんて思ってみたりしたりして。
誰かが、ベッドに連れてきてくれたみたいなんだけど……誰だろう?
きらきらしてたのしか覚えてない。
多分、部屋の電気に髪の毛が反射してだから……、髪の毛が無造作なままのアーサーかギルだなぁなんて思いながら、眠ってしまった。
……………夜中に、浴衣のせいで寝苦しさと暑さで飛び起きたのはココだけの話だ。
眠ってる周囲を起こさない様にお風呂に入るのは大変でした。
そんな、夏の夜。