「このまま共にいられればと思わなかったことはない……」
金色の髪が風に揺れる様を彼女は見つめる。
「私もです」
そう答える彼女に彼は静かに目を落とした。
「ラン、あなたは−−なの」
「分かっています」
ランディールはミアに何かを告げられている。
その事自体ランには理解出来ていた。
だが、それを彼女に告げることは出来ない。
「彼女に逢わせて……」
「巫女。しかし……」
ランディールはミアの言葉を否定する。
「大丈夫、悪いようにはしないわ。ロシュも行きましょう」
側にいたがその場に居づらそうにしていたロシュオールにミアは声を掛ける。
「オレが行ったって……」
「来て、一緒に」
ミアの願いにロシュオールはうなずいた。
ミアはドコにでも侵入が出来る。
それはゴルドバの巫女の力の一つでしかないが。
その部屋の寝台に件の彼女は眠る。
寝台の置かれている部屋は大きな鏡台に毛足の長い絨毯。
華やかなシャンデリア。
そして寝台には天蓋が。
彼女が一般の市民ではないことがそこから伺える。
「ここが……」
ロシュオールは部屋を見回してそう呟く。
「−−」
ランディールが寝台に眠る彼女の名を呼ぶ。
「…ランディール……どうしてココへ?」
「巫女が……どうしてもキミに逢いたいと……」
「巫女様が……」
ランディールの言葉に彼女は身を起こしミアの姿を認める。
「巫女様……このような姿で御前にでることをお許しください」
「そんな恐縮しなくてもいいのよ。わたしがあなたに逢いたくて来たのだから」
そう言ってミアは彼女の隣に向かう。
「巫女様にそう言っていただけるとは光栄です」
近くに来たミアに彼女はそう告げる。
白金の髪に暗い赤紫の瞳。
肌の色は今にも消えそうな程に白い。
「出会わなければ良かったと思ったときはない?」
「それ以上に出会えた喜びにあふれています。ただ……私も同じ時を生きたかった…とは思います」
ミアの問いに彼女は答える。
何について問われているのか彼女はそれを正確に理解していた。
「……どうすることが一番正確だったか私には分からないわ。あの深い深い奥で眠らせておけば良かったと思わないわけでもないわ……。選んだのは彼であり彼女であるのだから……」
「知っています。彼は……真を知りたかった」
彼女の言葉にミアは驚きを隠せない。
知るはずのないこと、本来ならばという以上に既にこの時ではもうあまり意味のないことを…いや意味があるのか…ミアは理解出来ない事象を彼女は知って、理解しているのだ。
「……知っていたのね」
「はい……ランディールと出会えたことで……知りました。知ったという言葉は適当ではないのでしょうが」
彼女はそっと微笑む。
「この先も選ぶ?」
「はい。私はそれを選びます。きっと私でなくても選ぶと思いますが……」
「……そうね……。いつか、またあなたが来る時を待っているわ。ランはゴルドバにいるから……。私もそれからロシュオールも。あなたのことを覚えているから。私たちだけは……覚えてあげられるから」
ミアの言葉に彼女はうなずいた。
それをみてミアはランディールに目を向け寝台から離れる。
「−−、すまない」
「謝らないで、ランディール。私はあなたに逢えたこと後悔してないから」
「このまま共にいられればといつも思っていた。この時ほど我が身を呪ったことはない」
彼女の手を握りながらランディールは言う。
「そんなこと言わないで、ランディール。あなたは探すんでしょう?意味を」
「……くだらない星の我儘の?」
「あなたがそんなこと言うとは思わなかった」
「それが真実だ。でもくだらないと思いながらオレは何度その言葉に縋り付いたのだろう」
はき出すように言うランディールに彼女は無理に微笑む。
「また、逢いに来るから。逢いに行くから。待ってて…、これからはもっと長くいれるようにするから……」
「神にでもなるというのか?」
「そんなの無理でしょう?だからエルフ神族になれるようにするから。だから、待っててランディール……」
か細い声が聞こえる。
「行きましょう、ロシュ」
「良いのか?」
ロシュオールの問いにミアはうなずく。
「これ以上、邪魔はしたくないから」
「分かった」
うなずいたロシュオールを見てミアはゴルドバへの転移をする。
ランディールが戻る分の転移方陣を作成して。
戻ったゴルドバは夕焼けの赤に染まっていた。
空の青は紫に雲は赤にその姿は素早く夕暮れに変わっていく。
「先に戻るなら戻ると言わないか?普通」
その景色を見ていたミアとロシュオールは突然掛けられた声に驚く。
「うぉ、ラン、戻ってきたのかよ」
「もう少し居ても良かったのよ?」
もちろん背後に立っていたのはランディール。
どこかばつが悪い表情を浮かべている。
「いつまでもあそこにいるわけにはいかないんでな」
そう何気なしにランディールは言う。
「意地張っちゃって」
「意地など張ってません」
ミアの言葉にランディールはそう反論する。
「もうちょっとあそこに居たって構わなかったんだぜ?」
「そう言うわけにもいかない」
「何でだよ」
ロシュオールの質問にランディールは当然だというように答えた。
「いつ彼女がココに来るか分からないだろう?」
と。
「き……気が早すぎる」
ランディールの物言いにそうミアとロシュオールは思ったが彼の顔を見て何も言えなかった。
ゴルドバの街は既に夜に変わり静かに時を刻んでいく。
神殿の奥に住まう3人はただそれを静かに見守っていた。
そしてどういう状況かもあえて描写しませんでした。
何となくこんな感じ?って言うぐらいの表現しかしてません。
その方が良いかなと思ったんです。
別にメンドーだからって言う訳じゃないですよ?
コレを書こうと思ったきっかけはロシュオールとミアはロマンスがあるのに、ランにだけロマンスが無いのは寂しい!!
と思ったからです。
ただ、それだけ。