あたしは、その人に触れられない。
簡単に触れさせてくれないその人に恋をした。
マリーチと一緒に行動するようになって1ヶ月。
わたしは、気になっていることがある。
まだ色々慣れないわたしに、気を使ってくれてるのはすっごく分かるんだけど、なんか無理してるような気がするんだ。
多分、何時も見せてくれる笑顔がそう思わせるんだと思う。
それって辛くないのかなぁって思うんだけど…マリーチは中々そう言う所綺麗に隠しちゃうからわたしが何かいう前に、自分で終了させちゃうの。
千瀬はガイに心が読まれて困るって言う。
でもそれってちょっと羨ましいかな。
いろいろ困るかもしれないけど何も言わなくても相手は自分の気持ちを知ってくれるってことだし。
わたしは、マリーチの心に触れられない。
触れてみたいのに。
「理奈ちゃんどうしたの?」
考え事してたわたしにマリーチは声をかけてくる。
マリーチの紺色の髪と瞳は綺麗でわたしはいつも見とれてしまう。
「うん、ちょっと考え事」
マリーチはテレパスがほとんど使えない。
よっぽど強力な人か、血のつながった家族としかテレパスが出来ないんだって。
つまり、姉弟なカーラさんとか、テレパスが強いガイとか。
そう教えてくれたのはカーラさんのパートナーであるアドニスさんだ。
マリーチは色んなことを教えてくれるけど、マリーチのその奥に踏み込ませてくれない。
思い切って聞いてみようかな?
心に触れていいかって。
そう思いながらあたしは、マリーチに手を伸ばす。
触れるか触れないかギリギリのラインで止まる。
わたしは、マリーチに触れても大丈夫?
なにが有っても後悔しない?
千瀬は知らないけれど、わたしはずっと誰かを捜していたの。
誰かなんてそんなの分からないけれど……何言ってるのって言われるかも知れないけれど、マリーチにあった瞬間にこの人だって思ったんだよね。
この人がわたしの会いたかった人なんだって。
だから、大丈夫。
何があっても後悔しない。
ソレが触れられて欲しくない傷だったり、見られたくない闇だとしてもわたしが優しく包んで……そう守れば良いだけ。
ただ、それだけ。
だから、勇気をだして。
「マリーチ、……あのね。触ってもいい?」
「突然、考え事ってそれ?」
マリーチの問い掛けにわたしはうなずく。
どういう表情してるかなんて今のわたしには分からない。
だって、マリーチの顔見れてないから。
俯いて、目をぎゅっとつぶって。
ホントは凄く怖いんだ。
拒絶されたらどうしようって。
ただ触るだけなのに。
触れることがただこんなにも怖い。
「……理奈、顔を上げて?」
少し低いマリーチの声はわたしの耳に優しく届く。
怖いけれど、勇気をだして顔を上げてマリーチの顔を見てみれば、とても優しいでも泣きそうな表情をしていた。
「……理奈が何を言いたいのか、オレは分かってるつもり。オレはちゃんとキミと向き合いたい」
「……ありがとう、マリーチ」
自然と口から礼がこぼれる。
触れたら優しい体温を感じてココロを感じた様な気がする。
そしてどうしてか涙が出てくる。
「マリーチ、わたしはマリーチの側にいていい?」
「もちろん。側にいて欲しい。じゃあ、今度はオレから質問」
何?
「理奈の側にいても構わない?」
そんなの答えなくても分かってるから思いっきりうなずいてマリーチに抱きついた。
全身で感じる体温と感情とそれから声と。
「ありがとう、理奈」
その言葉にわたしは涙が出てくる。
わたしはあなたの心に触れたかった。
ずっと、ずっと…。
マリーチは案外他人にココロ閉ざしてる気がします。最強最悪なテレパシストのガイがいたしね。
姉カップル(カーラとアドニス)が双方向ラブラブテレパスをやってるから、マリーチは実は羨ましかったのかもなんて。
思いました。