闇雲にどこかに走る。
先の見えないどこか。
うっそうと、する感じがするからもしかすると森の中かも知れない。
見えるものが赤を目立たせるための白と黒しかなくても。
「もう、やめにしよう」
誰がそう言ったのか分からない。
「もう、お前達の負けだ」
そう言われたのかも知れない。
俺たちは何のためにどうして戦っているのかが分からなくなった。
手の中にあって護りたかったものを全て落として。
ただ自分の生命だけもって。
生きていたって仕方ないのに。
生きている。
死んだって良いのに。
生きている。
殺されそうになって、死を望んでいたはずなのに、結局オレは生を、生きることを望んでここまでやってきた。
死に間際に思うのは「死にたくない」なんて。
皮肉すぎて笑えてくる。
生きている意味を見失っているくせに腹だけはいっちょ前に空きやがって。
寄りかかっていた墓場にあった物を食ってその人にあきれかえられたけど。
それでも、体は生きることを望み、気持ちは望まない。
先が見える必要なんてなくって、今さえただ楽しければいいなんてそんな風に思うようになって。
その日1日の楽しみを見つけるようになって。
そして。
「何やってるんですか、銀さん。いつまでもねぇだらだらしてないで起きてくださいよ」
小姑みたいな眼鏡と
「銀ちゃん、酢昆布が給料じゃいやね。せめて卵かけご飯もプラスして欲しいアルよ」
なんてアルアル言うチャイナ娘と
「わふ」
あり得ねえくらい巨大な白い犬(狛犬らしい)と
を何故か抱え込んだ。
「銀ちゃん」
「銀さん」
なんて慕ってくるから、また死ぬことを忘れるようになった。
生きることを望んで、楽しくやるのは変わらないけれど。
前みたいな、死を望んでるような、そんなバカみたいな。
「生きる」ってよくわかんねぇよ。
けどな。
大事な奴が居て、そいつと笑って、何事も無い(ちょっとした事件はあってもいいよ)そんな毎日があれば、生きてても良いんだって。
「銀ちゃんどうして笑ってるアルか?」
「ん?今良い気持ちなんだよ」
「そうあるか?」
「そうよ。そうだ、神楽、なんか食いに行くか?」
「マジでか?」
「おうよ。新八〜オマエも来るかぁ〜」
「当たり前でしょう。僕だけ除け者なんてやめてください!!どうせ、糖しか食べに行かないだろうけど。僕にだって糖は大切なんですよ!!!」
「定春も行くネ〜」
「まて、神楽、定春入れる店あるか?」
「この前ヅラにどっぐかふぇ教えて貰ったアル。そこになら定春も一緒に行けるヨ。定春〜〜」
「わふぅ」
時々、昔の知り合いが変なちょっかい出してきたりして。
それでも、良いと思えるようになった。
先なんて見えるわけがない。
よく言う。
一寸先は闇。
未来は明るいって言うけれど、何が起るかわかんないんだ。
だから今を護る。
神楽や新八や定春(全員、護らなくても強いけどな。神楽は特に)。
オレが手が届く範囲はオレの世界だから。