文化祭1週間前
文化祭1週間前にもなるとすでに学校はお祭り騒ぎとなる。
それは全校生徒分け隔てなくやって来るもので、わたしや新一を巻き込んでいった。
そして、そのお祭り騒ぎを異様に盛り上がりを持っているのが……。
「らーん!そこ、もうちょっと色っぽく言って!!」
分ってるわよぉ、園子。
そう、わたしの親友園子だ。
高校生活最後の文化祭って言うのもあるんだろうけど……それ以上の理由が、去年、園子の脚本の舞台が途中で(殺人が起こって)中止になってしまったから。
それをまた今年再演することになった。
そう、園子が考えた究極のキャスティングで。
「再演よ、蘭。あなたのハート姫評判だったんだから。それに、スペイド王子はグーよね」
そう、園子脚本の『シャッフルロマンス』の再演に園子は燃えているのだ。
ハート姫は去年と同じで、わたし。
そして、スペイド王子…が身近な人物に言わせれば (もちろん、わたしも含めて)
『推理力&行動力はある』『語る男』『大バカ推理之介』『帝丹高校が誇る名探偵』『ひきょうもん(ひきょうもの)』『推理オタクのバカ』『東の名探偵』『気障』『カッコつけ』『自信満々』『意地悪』『推理バカ(推理フェチ)』『ホームズフリーク』『音痴』『ミステリーグルメ(ミステリーマニア)』『サッカーの腕前は超高校級』。
マスコミ関係に言わせれば『高校生ながら迷宮なしの名探偵』『日本警察の救世主』『平成のホームズ』(……って何でこんなに代名詞が多いわけ???)と言われる工藤新一。
一応、わたしの彼氏。
元に戻って去年はいなかったんだから、絶対やってよね…って園子に新一は脅されたのだ。
「なんで、園子そんなに燃えてんだよ」
「当然でしょ、このスペイド王子とハート姫はあんた達がモデルなんだから。しっかりラブシーン(それだけじゃないけど)演じてよね」
園子の言葉に顔が赤くなるのがわかる。
もー、園子ったら……。
「見せ場で照れないでよね。もし、明日の通し稽古で照れたり何かしたら、新一君、スペイド王子は新出先生にやってもらうからね」
園子!!!!
そんなこと新一に言っちゃダメだよぉ。
新一の方を見ると案の定、園子をにらんでいる。
って言うか、園子はこの手3回使ってるのよぉ。
最初は新一にこの舞台に出てって頼んだとき。
二回目は衣装のサイズ計りの時。
3回目が人前での練習の時。
はぁ、新一がやきもち妬きだって事園子知ってるくせにたき付けるんだから……。
後で苦労するのはわたしなんだよっと、考えて発言してよね。
「ともかく、明日の通し稽古ちゃんとやってよね」
園子は新一に釘を刺す。
はぁ、どうなるんだろう。
文化祭前日
園子の心配も何のその、新一は通し稽古を難なくこなし、新出先生以下その場にいたすべての人を魅了してしまっていた。
新一の彼女として、鼻が高いって言うか、ちょっと複雑な気分。
「まぁ、蘭の複雑な気持ちって言うのも分るわ。新一君をその場にいた女の子が全員あんたに嫉妬したしねぇ」
園子はズバリ当てる。
そう、女の子ににらまれるようになってしまったのよ。
どうしてくれるの?
「しかも、当の探偵は他の女の子なんて目もくれず、幼なじみであるあんたしか見えてないって奴だもんねぇ」
園子の言葉にわたしの顔は赤くなる。
「照れる必要何て無いでしょう。ホントのことなんだから。それより、明日は二人そろって遅刻しない様にね」
そう言って園子は電話を切る。
園子に言われなくても分ってるわよぉ。
ともかく、その日は新一と夜遅くまで練習していた。
文化祭当日
場所:体育館。
体育館内はたくさんの人でごった返していた。
昨年のにぎわいを通り越している。
原因はやっぱり新一のスペイド王子なんだろうなぁ。
あの『スペイド王子』の登場シーン(推理するも含め)は衝撃だったと思う。
『いや、これは自殺じゃない(中略)ボクの導き出したこの白刃を踏むかのよう大胆な犯行が
真実だとしたらね』
なーにが真実だとしたらね、よ。
突然現れて、わたしに何にも言わないで、事件解決のために目きらきらさせちゃってさ。
そ、いっつも新一が現れるのは事件の時だけ。
もーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
腹が立つ…………って昔のことほじくってもしょうがないか。
「緊張してんのか」
舞台裏で去年……そう、去年だったなぁ……の事を思いだしていたわたしに新一は声を掛ける。
「緊張はしてないよ。去年のことちょっと思い出しちゃったの」
「去年………いろいろあったよなぁ」
新一は感慨深そうに言う。
「……って言うか人多くねぇか???」
舞台袖から見える観客席の人の多さに新一は驚く。
「そりゃそうよ、蘭と新一君のラブラブ見に来てんだから(笑)」
と、いつの間にかにいたのか園子がからかい半分でこっちを見ている。
「さぁ、さぁ、お二人さん。そろそろ始るんだからね。頑張ってよ」
としきる園子に新一はあきれ顔で突っ込みを始める。
そんな二人見てたら緊張してきたのは何故?
「蘭………大丈夫か?」
「ん、大丈夫」
新一が緊張してきたわたしを心配する。
「ほら、新一君、蘭。そろそろ始るわよ。ラブラブしてないで」
そんなわたし達の様子を見て園子は言う。
そうね、始めなくちゃ。
会場内にアナウンスが流れる。
「これより3年B組によります『シャッフルロマンス』を上演いたします」