世界が変わる。
全て変わって、元には戻らない。
それぐらい分かってる。
だから、君の手を取らせてください。
「快斗」
青子の声がする。
「何してるの?」
青子が笑ってる。
「嫌いよ」
そう言わないで。
「快斗なんて、キッドなんてだいっ嫌い!!!」
そこで目が覚めた。
自分の部屋で、青子は机で突っ伏して寝てる。
今、何時だっけ?
時計見てあり得ない時間に真っ青になった。
母さんは起こしてくれなかったのか?
青子寝かしとくままじゃまずい時間。
いくら何でも中森警部が心配する。
青子の携帯を勝手に見れば着信もメールも何も無し。
………なんで?
…………娘が男の部屋に来てるのに、警部心配じゃないのかな?
オレ、…信頼されてる?
その信頼があの夢のせいでちょっとつらい。
青子がオレの事嫌いって言った。
最後に言われたときオレは青子の目の前でキッドの扮装してる。
だいっ嫌いって言われた。
……夢なのに、夢のくせにすっげーショック。
「……青子」
寝てるから、今だけ言わせて貰おう。
「青子さん、ごめんなさい」
キッドの声色で、
「貴女を苦しめるつもりはないんです」
寝てる青子に言う。
もし、今青子の目が醒めても夢ですませるように。
「………」
大丈夫、まだ寝てる。
…携帯をもう一度見て、青子の鼻をつまむ。
「……?…?!!!!!!ううーーーーーーー!!」
起きた。
「快斗のバカ!!!何してくれるのよバ快斗!!」
「気持ちよさそうに寝てたじゃねえかアホ子ちゃん」
「そんなの快斗のせいですっかり全部なくなっちゃったわよぉ!!!」
「そんな起こるなよっ」
「せっかく良い夢見てたのにっっ」
そう言って青子はふくれる。
「良い夢?」
良い夢って何?
キッドで言ったとき?
青子、良い夢見てた?
「か、快斗には秘密だもん」
「秘密ってなんだよ〜」
「快斗はおしゃべりだから秘密なの。青子だけの秘密」
「そう言うなよ〜。って言うか、青子時間平気?」
思い出して携帯の時間を見せれば。
「うん」
とあっけらかんに言う。
「大丈夫、快斗のおうちで勉強してるって言ったから、お父さん遅くなっても泊っても怒らないよ」
「マジ?」
ちょ、それ、まずいんじゃ。
「おばさんにね泊りますって来たときに言ったから大丈夫だよ」
「まて、まてまてまて〜〜〜!!!!!」
母さん、どういう事だよぉ!!!!
オレは起きてるはずの母さんの所に行けば、既にもぬけの殻。
ついでに手紙も。
『青子ちゃんに手を出したら、1ヶ月3食お魚の刑』
なんて恐ろしいことがかかれていた。
1週間じゃなくって1ヶ月。
朝ご飯も昼の弁当も、夕飯も……全部さかな……?
「快斗、今日は宜しくね」
なんて不思議に思ったのかオレの後を付いてきた青子がかわいらしく小首をかしげて言う。
………青子、わりぃ。
今のお前のそれ凶悪な武器にしか見えません。
いつも凶悪だけど。
「今日、用事あるから快斗のこと宜しくねっておばさんが言ってたんだけど、快斗、駄目?」
「駄目ってオレが言えないって事知ってて言う?」
思わず本音が出る。
青子のお願い聞かなかったことあるか?今まで。
「良いの?」
「しゃあねえなぁったくぅ」
「やったね」
我慢しろ。
頑張れオレ!!!
はぁ、さっきまでの懺悔の気分0。
どうしてくれるよ、青子ちゃん。
当の青子はすっかりお泊まりセットも持ってきて「お風呂はいるねぇ〜」なんて気楽に言ってる。
あぁ、なんかもうーー、全部はき出して、青子のこと追い出したくなった。
って、出来ないことよく考えるよオレ。
言ったら言ったで、絶対放す気ない気がする。
つーか開き直る、その方が楽だしなぁ。
はぁ……。
聞こえてきた水音に思わずため息ついて、早々に自分の部屋に引っ込む。
湯上がりの凶悪な青子が帰ってくるのをどうやり過ごそうかななんて考えながら。
いや、ホントに。
イントロはシリアスでしょ?
でも、どこかで、変わってしまいました。