鐘が鳴り響く。
それは終焉を迎えるためかそれとも新たなる再生への物語か。
「その物語は既に始まっているのだよ」
あの方は世界が血に染まり始める前にそう仰った。
Gタワーの最上階に近い会議室から彼女は空を見る。
夜の今は地上の明かりに邪魔をされず星空を眺めることが出来る
Gタワーはトウキョウ都内の中でもっとも高いビルで、どこよりも空に近い。
それでも伸ばす手は望むべき空に届かない。
「ごきげんよう、リリーナ様」
「……ドロシー……来ていたのですか」
「リリーナ様のピンチにこのドロシー、駆けつけないはずがありませんわ」
隣に立ったドロシーを見てそしてリリーナは空を見上げる。
「リリーナ様どうなされましたの?」
「ドロシーが気にする必要はないわ」
リリーナは憂いを帯びた笑みを浮かべながら言う。
「そんな顔で仰ってはダメ。何かを考えてるって丸わかりですわ。まぁ、考えなくても分かりますけれど。どうせαナンバーズ、特にヒイロの事でなのでしょう?」
「ドロシーも知っているのね」
「当然ですわ。ちょっと行ってくるなんて簡単なメールだけよこしたお坊ちゃまなんて知りませんもの」
ドロシーの物言いにリリーナは少しだけ笑う。
彼女が指している人物にリリーナは心当たりがあるからだ。
「ドロシー私は何を出来るのでしょうか」
「リリーナ様?」
空を見上げながらリリーナは呟く。
「私は彼らに何が出来るのでしょうか」
リリーナが言う彼ら…αナンバーズは今地球にいない。
遠く離れたどこかにいる。
それをリリーナは見送っている。
いつ帰れるとも知れない死地への旅に似たそれを。
「リリーナ様、あなた様に出来ることは彼等が帰る場所を作ることですわ。既に時は始まっている。我らはそれを見守るしか出来ない。手助けすることしかできない」
「ドロシー?」
「世界に終焉が迫っているのだそうですわ。トレーズ様が以前仰いましたの。その時はあの方のいつもの物言いだと思っていましたわ。でも、今になれば分かる。世界は終焉へと向かっているのですわ。だから簡単に彼等は遠くの星へと向かってしまう」
「何故?」
「何故?考えなくてもお分かりでしょう?彼等は終焉を止めるのですわ。そのつもりで彼等は戦っている。きっと鐘の音が聞こえるのですわ。彼等には終焉への鐘が」
「鐘……」
「リリーナ様、私が言っていることお分かりにならなくても結構ですのよ?トレーズ様が仰った事をそのまま言ってるだけですもの」
ため息をついてドロシーはリリーナが先ほどしていた行動を真似て空を見上げる。
彼女は今は亡き人を思い出しているのだろうか。
その表情を見ながらリリーナは決意する。
「帰る場所を作ること………。ドロシー、手を貸していただけません?」
「リリーナ様の頼みならこのドロシー何でも叶えますわ」
「ありがとう。では、ラクス・クライン嬢に連絡を」
「プラントの平和の歌姫ですわね。了解いたしましたわ」
そう言ってドロシーは踵を返しその場から立ち去る。
「ヒイロ、貴方たちが帰ってくることを待っている人がいるのを、貴方たちは忘れないで」
リリーナは空を見上げそう呟く。
遠い遠い空、リリーナが見上げる空の中に彼等のいる星はあるのだろうか。
彼等が戻る時を信じてリリーナは行動を起こすべく動き始めた。
3次αベースのWというか……。ラクス嬢とリリーナ様が会話するまえの話を書いてみました。
『果て無き旅路の始まり』の後の話。
でもGONGの歌詞的にはここら辺がぴったりのような?
戻ってこれるか分からないって言うレベルは銀河殴り込み艦隊よりこっちの方が上な気がするなぁ……。