こうしておとぎ話は現実になり、物語へと昇華される。
夢物語はもしかして信じない?
キミは昔から案外ロマンチストだったっけ。
「こんにちは、水野さん」
ちょっと高音のでも男の人の声が耳に飛び込んでくる。
その方を見てみれば綺麗な、うさぎちゃんや美奈が見ればキレーって大騒ぎするような人、でも男の人が本を片手に微笑んでいた。
「美園さん、こんにちは」
「こんな時間に図書館なんて珍しいんじゃない?」
「今日はちょっとしたことがあって、思わず学校さぼっちゃった」
ちょっとしたこと、それはレイちゃんの家出。
昨日の夜突然、レイちゃんは突然家に来た。
そして二人そろってまこちゃんの所に泊って3人ともそのまま休み。
ちなみにうさぎちゃんと美奈にその後ばれて……二人は早退して帰ってきたのよね。
レイちゃんは未だに家出の理由を言わないし。
黙り込んで気分転換に外に連れ出したんだけど、今はあたしだけ図書館にやってきた。
今日返却締め切りの本があったのよね。
「美園さんはどうして?」
「この時間は大学の講義とってないの。ココから大学は近いところだし、ココにはうちの大学から来てる人多いのよ」
美園雪人さん、彼とはこの図書館で同じ本を隣通しの席で読んでいた偶然から知り合った。
物腰が柔らかい女のような男の人。
聞けば家が日本舞踊をやっていてその影響なのだという。
「美園さんはドコの大学なんですか?」
「私?私はKO大学よ」
「KOなんですか?」
まもるさんと同じ大学だったなんて。
「知り合いでも行ってるの?」
「はい。医学部なんですけど」
「医学部ね、同じ学部だわ」
え?!美園さんも医学部だったの?
「もしかすると、知ってるかも。その人何年?」
「えっと、今2年生で、アメリカに…ハーバードに留学しちゃった人なんですけど…」
「……もしかして地場衛って言わない?」
「そうです。その人です」
凄く意外だわ、美園さんが衛さんと同じ学部だなんて。
うさぎちゃんが聞いたら驚いて、きっと美園さんに会わせてって言いだしてまもるさんの大学生活聞き出しそう。
「もしかして……もしかして恋人とか」
「違います、そんな人じゃないです」
もう、いきなり何を言うのかしら、美園さんってば。
もしかして思いっきり誤解されてる?
「……あたしの大事な…とっても大事な友達の恋人なんです」
だったら、誤解は解かなくちゃ。
「そっか。それなら良かった」
そう言って美園さんは微笑む。
良かったってどういう事?
「水野亜美さん、私の…ボクの…大学の時間がこの時間に終わるから」
と美園さんは突然時間を言う。
「もし良かったら、その時間あたりに会えませんか?」
え?
どういう事?
「ボクはずっとキミと長い話をしてみたかったんです」
長い話って?
「なんてステキなデートの誘い方じゃないわね」
もしかしてじょう…だんだったのかしら。
「冗談だと思ってる?だったらそれは間違ってるわ。少なくとも私は本気で言ってるの。逢えないかしら?図書館は長い話をするに不向きな場所な訳だし。デートにもあまり向いてないわよね」
なんて茶目っ気たっぷりに美園さんは言う。
「どう、受けてもらえる?」
「……えっと、えっと……」
「デート、だなんて思わなくても良いわ。良かったらあなたの大事な友達も連れてきてもいい。衛の話聞きたいと思うから。私も彼女から見た衛って言うのをちょっとだけ興味があるの。なんて好奇心過ぎるかしら?」
そう美園さんは苦笑する。
その苦笑い…どこかで見たことがある。
「私たちにはきっと見せない表情するんだと思うとね。ちょっとだけプリンセスが羨ましいなって思うのよ」
そう聞いたことがある。
プリンセス?
彼が言うプリンセスって誰?
誰がプリンセスの前で見せない表情をするの?
そして私は彼と同じ気持ちを持ったことが……。
「ごめんね、ちょっと混乱させすぎたかしら。まだ解けてないこと忘れてた。てっきり彼女が平気だったからあなたも平気だと思ったんだけど……そんなこと無かったわね。彼女の場合は特別かしら?」
彼女って?
「彼女の事は彼女から聞くと良いわ」
そう言って彼は視線をあたしの後ろに向ける。
その視線の先を見てみれば美奈が手を振っていた。
「あーみちゃん、なかなか戻ってこないから探しに来たんだから。文字だらけで頭痛くならない?あたし、文字だらけってだめ〜〜」
「こんにちは美奈子ちゃん」
「あら、雪ちゃん、あーみちゃん口説くときはちゃんと言わないと分からないから気をつけた方が良いわよ?それから、はーくん、どうにかなんないかな〜、かえで君に頼んでもだめなの雪ちゃんじゃなきゃ〜〜」
「あらあら、華君だめ?」
「だめ〜めっちゃくちゃ参ってるっぽいんだよねぇ〜」
美奈は興奮してきたのか声がどんどん大きくなってきている。
「美奈、声大きすぎ」
「あ、ごめ〜〜ん。じゃあ、雪ちゃんあーみちゃんは返してもらうわね。ではーくんの事よろしくね?」
美奈の言葉に美園さんは頷く。
そしてあたしは美奈に引っ張られて本を借りられずそのまま図書館を後にする。
あたしはまだ呆然としたまま。
「美奈、美園さんと知り合いだったの?」
「雪ちゃん?そう、知り合い。っていうか、かえで君……斉藤先輩と同じ大学でしかも高校もだったのよねぇ〜。知ってる?雪ちゃんもかえで君もまもるさんと同じ元麻布だったのよ?信じられないわよね〜〜」
かえで君って言うのは美奈の彼氏……らしくて、つい最近、もの凄くテンションが高かったのを覚えてる。
「美園さん、元麻布高だったの?」
「そう、かえで君から聞いた話だけどね。まもるさんと仲良かったみたい」
衛さんの事詳しそうだなって思ったのは本当の事みたいね。
「うさぎちゃんは美園さんや……美奈の彼氏さんの事知ってるの?」
「え…………」
ちょっと、何でそこで止まるの?
「美奈?どうしたの?」
「……うさぎは、まだ知らないと思う。っていうか……う〜〜〜ん」
そこで美奈は考え込む。
「ちょっと、美奈?」
あたし、変なこと言ったかしら。
別に言ってないわよね。
うさぎちゃんは、衛さんと仲のいい美園さんや美奈の彼氏さんの事、知ってるのかって事だし。
知ってるんだったら、話しやすそうだし……。
「亜美ちゃん、ねぇ、まもるさんからの石覚えてる」
「……いきなり何を言うの」
衛さんからもらった石。
もう必要に無くなったと彼は言った。
あたしはその4つの石が何なのか見せてもらった瞬間に分かった。
鉱石のことを調べていたときに必然的に目に入った4つの石。
「持ってるわよ」
捨てようかと思ったけど、捨てられなかった。
どうしてだろうって思ってそれでもいつも何故か持ち歩いている。
今も、バッグの内ポケットの中に入っている。
「後で、みんなを連れて行きたいところがあるの。でもその前にまもるさんが帰ってくるかな?うさぎが楽しそうにメール見てるから」
アメリカの大学が長期休暇に入る。
衛さんが本格的に大学に入るのは夏休み明けからだろう……。
「ねぇ、美奈何かあるの?」
「何かあるといえばあるって言えると思う。でも亜美ちゃんが思い出していないのならそれ以上は言えない」
そう言って美奈はまっすぐ前を見る。
そこには買い物荷物をぶら下げたうさぎちゃんやまこちゃん、そして機嫌がまだ悪そうなレイちゃんがいた。
「美奈……」
「きっと亜美ちゃんにも分かるわ。その石の意味」
そう言う美奈の強い視線はまさに四守護神のリーダーのそれだった。
「何か起きるの?」
「いたって平和そのもの。でしょ、そうそう、うっかり忘れてたけど。雪ちゃんにあーみちゃんのメールアドレスとケー番教えてあるから」
「は?」
美奈、何を言ってるの?
「楽しみ〜」
そう言って美奈は待っているみんなの方をに駆け寄る。
「美奈、勝手に!!!」
その時、突然鳴り響くメール着信の音楽。
見てみれば差出人は美園さん。
タイトルはデート。
『美奈ちゃんに邪魔されちゃったけど、さっきの話、約束してもらっても大丈夫?』
……さっきの話ってタイトルがデートだから。
デートというか、……。
きっとそれよね。
美奈が言った『意味』気付いているんだと思う。
私は彼が好きだった。
美奈が言いたいことってそう言う事よね。
あたしにはまだ良く思い出せていないのだけれども。
これから必要なことが待っているんだと思う。
美奈が理解してるのは彼女がリーダーだから。
あたしはこれから理解しなくちゃいけないこと。
これからを作るのに必要なことだから。
美園さんのメールに返信をしてあたしもみんなの元に駆け寄った。
『時間はさっき、言ってた時間で良いんですか?だったらその時間に大学の方までいきますね。あたしも、美園さんに話したいことが、…聞きたいことかも知れないけれど…。があるから』
美園雪人さん。一番最初に名前が決まった人、そして、名字が原作と違う人(汗)。
美園だと思ってたら異園だった………。異園より美園の方がいいよ〜って事で美園です。
声はもちろん難波圭一さん。