「うさぎっ、この前すっごくおいしいケーキ屋さん見つけたんだけど行かない?」
「ホントなるちゃん?行く行く!ケーキ、ケーキ」
そう言って彼女はあたし達の前を走っていく。
「はるかさん、みちるさん、またね」
あたし達に彼女は当然のように振り向いて言う。
「気をつけてね」
「転ぶんじゃないよ」
「もう、ひどいなぁ二人とも!!じゃあまたね」
そう言って元気いっぱい手を振っていく。
「プリンセスは今日も元気だな」
「あの時が嘘みたいに……、今が平和だもの」
「確かに……あ、やば、言ってないや」
「……メール、入れておくわ」
「よろしく」
「やあ、うさぎ」
「こんな時間にどこに行くの?」
なるちゃんと寄り道した帰りみちるさんから夜に迎えに行くメールが入ってた。
夜って言っても、もう夜中に近い。
「まずは、どうぞプリンセス、お手を」
なんてはるかさんは低い声であたしに手を差し出す。
女の人だって知ってるけど……どきどきしちゃうよぉ。
「は、はるかさんっ」
「そんな顔しなくてもいいのに。あなたはプリンセスなんだから」
困ったようにはるかさんは言うけれど、だってこんなこと慣れてないもん。
「プリンスはやってくれない?」
なんて意地悪くはるかさんは言う。
まもちゃんは免許持ってるけど、実は初心者だったりする。
だからあんまり乗せて貰えてないんだよね。
去年は忙しくって遊びに行けなかったし、ぐすん。
しかも、アメリカ行っちゃったし、ますます……。
「そう言えばそうだった。プリンスは初心者だったっけ。それに比べてあたしはベテランだからなぁ、安心して乗って」
現役レーサーと運転初心者比べるのが間違ってる気がする。
はるかさんに導かれて乗った場所は助手席。
みちるさんはいないのかななんて思ってたら
「こんばんは、うさぎ」
後部座席にみちるさんがいる!!
じょ、助手席乗っても良いのかな?
「あら、そこはあたしの席だけどプリンセス用でもあるのよ」
「え、いいの?」
「うさぎなら構わないわ。ほたるとちびうさちゃんと……せつなもしょうがないわね。他の面々はダメ」
うわぁ、きびしい。
「それじゃあ、行こうか」
運転席にはるかさんは座り車を発進させる。
「ドコに行くんですか?」
「すぐに分かるよ」
そう言うはるかさん。
「だから、途中までは秘密ね」
途中までって……。
「どうせ近くまで行ったら分かることですもの」
なんて言ってみちるさんも教えてくれない。
車はそのまま渋滞に巻き込まれることもなく今話題の場所に向かっているような気がした。
「朔望公園??」
「えぇそうよ」
朔望公園。
その公園はあの無限学園都市があった場所にある公園。
「都と周辺住民が協力して出来た緑化地帯。数戸のマンション以外は広大な緑化公園になるらしいね。NYのセントラルパークみたいにしたいみたいだ」
そう言ってはるかさんは車を止める。
「ここからは歩いて行こう。
車を降りると出来たばかりの公園内部はもうすぐ夏だというのにどこか涼しい。
「ここには人工だけれども川もあるのよ。そこでは蛍も見ることが出来て驚いたわ」
へぇ、見てみたい。
綺麗なんだろうな。
「いそごう、せつなと、もう一人のほたるが待ってるよ」
え?せつなさんとほたるちゃんもいるの?
「えぇ、今日はあなたに話したいことがあって連れてきたの。
話したいこと?
何だろう。
「気付かない?」
「気付かないよ。分からないように隠されているんだから。それ知らずとして入ってるんだ。みちるから聞いたときは驚いたな」
「あら、最初に知ったのはほたるだわ」
何の話だろう。
はるかさんとみちるさんの会話はあたしには全く意味が分からなかった。
なんのしてるの?
「もう着くよ」
先に歩くはるかさんの前を見る。
……え?
走って近寄る。
「ココは………。この噴水は……ここは……」
懐かしい。
月のシルバーミレニアムのお城にあった噴水に似ている。
綺麗な噴水。
広いでも浅い池の中心に大きな噴水。
今の時間も噴水が出てたりしてる。
「似ていて当然。ここは、その噴水」
「どういう事?」
「ここの名前をもう見てみて」
えっと朔望公園。
だよね……。
「朔も望も月の別名というか姿だよ」
姿?
「新月と満月の事よ。朔はが新月、望が満月。この公園は月の公園なの」
月の公園……。
「ここはそのうちシルバーミレニアムの場所となる所なんです」
「ここにはシルバーミレニアムの力が降り注いでいる。そしてそれだけじゃない。そしてここは聖地エリュシオンへの入り口でもある……」
とせつなさんとほたるちゃんが言う。
ここからエリュシオンに行くことが出来る。
そうなんだ……。
「でも、うさぎじゃ無理かもね?」
「はるかさん、どうしてよ」
そんな無理なんて。
綺麗だったからまた行ってみたいなぁって。
「忘れた?エリュシオンは地球の聖地だよ。王子がいなきゃ入れない場所だけど?」
………忘れた訳じゃないもん。
まもちゃんがいれば入れる。
「元気になった?」
首をかしげてほたるちゃんが聞いてくる。
「あたしは元々元気だよ」
「元気ないってちびうさちゃんが言ってたから。まだここの封印は解けてないけれど、でももう少しで解けるから。そしたらまもちゃん一回帰ってくるよ?」
ほたるちゃん、なんでどういう事?
「未来予知ね」
そ、そんなこと出来るの?
「出来るようになっちゃったの。といっても、時々なんだけどね。予言めいたって言った方が正しいわね」
そうみちるさんが苦笑いを浮かべながら言う。
「みちる、すこし頼む」
何事かを耳打ちしてはるかさんは行ってしまった。
その前にいる見たことのある後ろ姿……。
「あ、レイちゃんの婚約者だ!!!」
「れ、レイの婚約者??!!!」
あたしも行かなきゃ、はるかさんあの人のこと追っていったんだと思うもん。
「ここには入れないようにしておいたはずなんだけど。あんた何者?」
「……キミには関係ないと思うよ?いや、関係なくはないのかな?オレ自身まだあやふやだし」
はるかさんを追いかければそこにはレイちゃんの婚約者とはるかさんがいた。
「はるかさんっ」
「う、うさぎっ。なんで待っていなかったの?」
「その人、レイちゃんの婚約者なの!!」
「は?」
はるかさんはさっきのみちるさん見たいにおどろく。
おどろくのも無理ないよね、あたしもさいしょビックリしたもん。
「レイの婚約者?……名前は?」
「……三井華広……」
「かひろ……珍しい名前だな。あたしは」
「レーサー天王はるか。女性現役F3のテストドライバーを知らない奴はいないだろ?」
「ソレハ光栄。一つ聞きたいんだけど。三井組と関係は?」
「一応、実家」
「成程、だからレイの婚約者ね。噂はホントだったって訳か」
……えっとどういう事だろう。
また分かんないことだらけ〜〜。
「戻るようさぎ」
え?もういいの?
「別にいいんじゃない?ったく、追いかけて来るとは思いも寄らなかったよ。みちる達が驚いて心配するって分かってない?」
「だ、だってレイちゃんの婚約者だよ?あの人」
「別に何かしようって言う訳じゃないって。でもレイは嫌がってるって聞いてるけど?」
はるかさんの言うとおりレイちゃんは嫌がってる。
でも……。
「でも嫌々って言いながら結構会ってるんだよね。だからホントはどうか分からない」
もしかするとホントは嫌いじゃないんじゃないのかなって思ってるんだよね。
あたしと美奈Pは。
はるかさんとさっきの噴水の所に戻る。
空は月が輝いて噴水の周りは街灯がついているのに凄く月の光を浴びているような気持ちになる。
いつかシルバーミレニアムの出来る場所。
それを考えるとなんだか不思議な気持ちになる。
月の光を浴びてるからかな?
それともここが地球の守護聖地エリュシオンに通じるからかな。
凄く安心するの。
寂しかったんだよ、まもちゃんが留学しちゃって。
でも、ここに来て元気になった気がする。
「ありがとう、みんな」
そう言ってお礼を言う。
ホントは元気ないの知ってたんだもんね。
「まもちゃん帰ってきたらココに来ても良い?」
「当然でしょう?プリンスも喜ぶわ」
うん。
だから外部が出てくるSとSSは好きです。
絵も可愛いし(伊藤郁子さんだ!!)