拝啓、あかねさん
お元気でお過ごしでしょうか。
オレは、今北海道にいます。
暖冬のせいか、雪は全く見あたらず、日差しだけがまぶしいです。
「あいつ、今どこにいんだぁ?」
修行に出るたび来る手紙。
正直、出さなくても良いんじゃねえのって思うんだけど。
文面だけじゃ、奴がどこにいるのか分からない。
彼女は首をひねりながら読んでいる。
「さぁ、写真があれば良いんだけど。珍しくないのよねぇ」
「へぇ、あいつにしちゃ珍しい」
奴がどこにいるのか分からないのは、奴は驚異の方向音痴だからだ。
右と言えば、左に行く。
指を差してそこにまっすぐだと言えば壁にぶつかれば素直にまっすぐに行く。
方向音痴という観念においては素直も良いところだ。
雪が少ないのはこの地でも春が近いのでしょうか?
それとも暖冬のせいでしょうか?
暖冬だとするならば、北海道は既に20度という温度なのですから、夏のようかも知れません。
「……北海道で、冬に20度はありえねぇよなぁ」
「いくら、暖冬だって………」
オレは彼女と顔を見合わせる。
タイミング良くテレビは天気予報の最中。
『札幌の最高気温は5度でしょう』
告げられた天気および気温は当然のごとく一桁もしくはマイナス。
「5度だって…」
「5度だと…」
いくら暖冬だって言ったって、北海道は寒い地域のはずだ。
やっぱり奴がどこにいるのか分からない。
この地での修行は汗ばむ陽気が丁度良く、そして町中(といってもそれほど居ませんが)の人々も穏やかで皆一様に優しいです。
「汗ばむ陽気?」
「沖縄にいるんじゃない?」
文面からそう彼女は推測する。
「じゃあ、それほど居ないって?」
「ん〜〜」
実は北海道というわけではなく離島に渡っているのですが。
「離島だって」
「離島で…20度はあり得ないわよ。北海道の離島って言ったら、北方4島だと思うし…」
俺たちは確信する、奴は絶対に沖縄にいる!
あかねさんにもお見せしたいです、日本海に沈む太陽の美しさを。
日本最北端択捉島(最南端となっていますが間違っているようです)にて、響良牙
「…………良牙君、波照間島に居るみたい」
「そう、みてぇだな…」
最後にもったいぶったようにつけられた写真には『日本最南端の島』という看板と笑顔の良牙。
ハイビスカスが夕日に綺麗に映えていた。
「良牙君、択捉島と間違えたのかしら」
「さぁ」
オレとあかねは顔を見合わせて首をかしげた。
ちなみに、良牙は1ヶ月後無事に帰ってきた。
もちろん、P助として。
なんでなったんだろう???
サボテン=南国イメージ?
ちなみに、択捉島は北方領土なので勝手に入れません。