「新一、あんまり無理しなくてもいいんだからね」
そう言う蘭のほほえみはどこか悲しげで、オレは今までの行動をものすごく後悔した。
発端は、海へ向かう途中に目暮警部からの電話にあった。
とある事件の解決に力を貸して欲しい、との事だった。
だが、今オレがいるのは都心を離れた海近く。
ここから戻るのは少しきつい。
戻るのは構わない。
でも、蘭が一緒だ。
蘭と一緒に小旅行をしようと、同居人に邪魔をされず二人きりでいられるところを求めて、計画を立てたのはオレだった。
その計画を、オレの手でだめにする所だった。
だが蘭が車を降りて、オレはこの旅行を続ける決心をし、同居人に電話をして解決を図り、車を降りた蘭を探して、見つけて……やっとの事で事なきを得たのだ。
「無理してるつもりはねぇよ」
「でも……。新一が事件現場に行きたいって思うのは本当でしょう?」
「……そうだけどさ。蘭を一人で置いていくのも嫌なんだよ」
だから、服部に電話した。
だから、蘭を追いかけてきた。
「無理してるつもりはない。事件現場に行きたいって言うのも本音。でも蘭の側にいたいって言うのもホントなんだよ。どちらかを選べって言われたら…オレ、間違いなく…蘭を取るぜ?」
「うそ」
蘭は信じられないといった風にオレを見る。
「嘘じゃねぇよ。嘘ついてどうすんだよ。オレの優先順位は蘭が一番なの」
それは間違いない。
オレの一番は間違いなく蘭だ。
「それにしては私随分置いてけぼりを食らったような気がするんですが」
「…それ……は………言い訳できねぇけど……さ……」
痛いところを突かれ、オレは何と言っていいか頭を悩ます。
あぁ、過去の自分が恨めしい。
なんで、蘭を放ってどこかにいったんだか。
「事件大好き名探偵を好きになった私がバカなのかな………」
ら、蘭?
「なんてね?しょうがないよね。新一が事件見つけてキラキラしてるところ好きなんだもん」
なんて蘭は嬉しそうにでもどこかいたずらっ子のように言う。
「これからは自重します」
「ま、良いでしょう」
と、すました顔で蘭は言う。
今、気がついた。
蘭は、まだ怒っていたんだと………。
うー、本気で自重しないと、見捨てられそうな気がしてしまったのは気のせいだと思いたい。
向こうを読まなくても問題はないです。