私は、死んだのだろうか。
それすらも分からない。
だとしたら、何故私は死んだ?
国はどうなった?
私には国を案ずることは出来ても、国の様子を知る術はない。
ただ、この世界でこの世界を統べる王の側でただ案じているだけだ。
彼女は光り輝いていた。
生命の煌めきに満ちあふれる世界でも一際目立つほどに。
だからこそ闇に魅入られやすい。
彼女の運命は替えられない。
ゴルドバの巫女が突如見た、彼女の運命。
そして食い違い回り始める歯車。
世界の運命は彼女の死より回り始めた。
彼女の死は避けねばならない、死因は変えなければならない。
だが、彼女の死は避けることも出来ず、死因も変えることが出来なかった。
自分に出来たのは暗闇に取り込まれる前に冥いところに連れて行くことだけ。
記憶を曖昧にしたのは少しでも時を延ばすため。
彼女はそれを知らない。
知らなくて良い。
まだ、知らせなくて良い。
終わったら、戻るように誘えばいい。
「だいたい、何で寝室がココにしかないんだ」
「ココはオレしか住んでないからね。必要ないといえば必要ない訳だし」
「客とかは来ないのか?」
「来るけど……イルヴィスとか、エーベストとかだし、あいつらには泊っていって欲しくないな」
タマに来る友人の名をあげる。
そう言えば、ここに来るのを拒否したあいつは今頃どうしているんだろう。
ふと思い出す。
「だったら私の分の寝室を作ってくれ」
カリィは時をだいぶ経た今でも時々思い出すかのように言う。
寝室を別に作っても意味ないと言うことを彼女は考えてないのだろうか。
オレは彼女と共にいる事にしているのに。
彼女の気を紛らわすために、忘却の術をかけるために。
それにしても………。
寝室は確かに1つしかない。
だが客用の応接室は大量にある。
タマに来る客にはそこに押し込めて寝るときはまぁそこら辺の物をたとえばソファとかを使って眠らせてる。
カリィは、ソファで眠ることは考えていないらしい。
そんなことしたことがないのは彼女が王女だった証なのだろう。
「カリィ、君がそこまで嫌がるのなら、君のための寝室を用意しよう。オレは君と話が出来なくなった寂しいけれど、君が嫌だというのなら仕方ない」
そろそろ問題ないのも事実だし。
「い、いや……、別に嫌というわけじゃなくって。ただ、たまには一人で寝たいと思うときがあるだけで……。だからアシュレイ、お前と眠るのが嫌になった訳じゃないからな。ご、誤解するなよ」
そう言って反対の方向を見てカリィは横になる。
「誤解してないよ」
光り輝ける彼の国の王女。
この冥き地に連れてきたのは彼女の光を間近で見てみたかったからなのかも知れない。
「いつか、君がここを離れるときが来て、そして戻ってくるときが来たら、必ず迎えに行く」
知らぬ間に眠ってしまったカリィにそっと囁く。
いつかの時を想いながらその時が来ることを望まずに。
矛盾を抱えながら時が満ちるのをただ過ごしていた。
彼女の宿命、彼女が死んだ理由はもう少し秘密で。