スクード。
東のレナウルス大陸と西のコーラルス大陸を結ぶ全長500kmの道。
500kmを道と呼ぶのに相応しいかそれは渡る者が決めることだが、その昔、レナウルス大陸とコーラルス大陸を歩いて渡った者が居るのは事実だし、船賃を払えない者が歩こうと渡ることも事実である。
さてこの道…と呼んで良いものか…は100km事に社を持ち道の中心に大きな神殿が存在する。
それらから張られる結界を中心に宿場が多数存在した。
だが、いつしか神殿は壊れ、道には魔物が、宿場は廃れ、この道はいつしか森になり人に畏れられるようになった。
その為、大陸を渡る手段は船以外になくなったのである。
「無謀だったか?」
思わずオレは呟いた。
宿場跡を漸く見つけたオレ達は結界を張りそこで休むことにした。
森に入って気がついたことは大元の神殿の結界は機能してはいないが、かつて宿場だった所に存在する小さな結界はそれぞれの宿場が独自に張った物だったのか機能していた。
それでも宿場そのものが安全というわけではない。
だからこそ結界を張る必要があった。
「無謀?どうして?」
呟いた言葉をミアに聞かれていた。
「いや、なんつーか……。森に入ったことがだよ。案外魔物は出るし、神殿の機能復活させるって事。簡単にできるかなぁって」
「まぁ、確かにね。でも、たとえ戻っても港は封鎖されてるんでしょう?」
「まあな。クーデターは成功したけど、正規軍との戦いは残ってるし……」
ハーシャ王都でのクーデターは成功した。
しかし、正規軍全体が反乱軍ではない。
反乱軍の本隊は……シャナから少し離れているダウェイの港に陣を組んでいる。
そんなことを考えると……。
「あぁ、オレ出てて来ちゃって良かったのかなぁ?」
「大丈夫よ、あの国なら問題ないわ」
妙に自信を持ってミアが言う。
「何でそんなに自信があるんだ?」
「え?……ほら、わたしゴルドバから来たから……そう言うこと聞いてたっていうか……予見されてたって言うか……」
そっか……ゴルドバの神殿ならオレ達の状況予測しててもおかしくないって訳か……。
「うん。ロシュは信じてないの?残っている人達を」
「信じてるに決まってるだろ?」
「なら、大丈夫よ」
そう言うミアの笑顔で何故か大丈夫だと思うことが出来た。
「それより、中央の神殿に着くのはいつの事やら」
「さぁ……でも宿場の結界が機能しているから問題ないし、寝るところもあるから、大丈夫かなって?思うんだけど……」
ミアは板の間に既にマントを敷きいつでも眠れる体制を取っている。
案外、肝が据わってるって言うか……。
世間知らずかななんて思ったんだけど……意外だなぁ…。
まぁ、オレも眠れないって事もないし……。
牢獄に閉じこめられてる間は…いつでも動けるように眠ることだけはしろって言われてたし……。
だからどんなところでも眠れるけど。
「でも、ミアこれから大丈夫か?ここから神殿までは結構あるぞ?」
「大丈夫、サバイバルには慣れてるから」
慣れてるってどんな生活してきたんだっ、ミアっ!!
「とりあえず、神殿まで頑張りましょう?機能を復活させたら入り口近くまで転移出来るはずだから」
あ、あぁ。
励ますつもりが逆に励まされてしまった。
「じゃあ……、お休みなさい」
そう言ってミアは横になる。
すぐに寝息が聞こえる。
あぁ、寝付きが良い。
よっぽど疲れていたのかそれとも、本当に寝付きがいいのか分からないけれど………。
……こんな状況でオレ眠れるかな?
思わずミアが居ることを意識してしまう。
外で寝ようか。
けど、何が起こるか分からないから……別々にいるよりは一緒にいた方が良いだろう。
なんて言い訳を並べつつオレも横になって目をつぶった。
スクードの森の全長をまじめに考えてみることにしたらどうあがいても……500km以上になるですよ……。