彼女の言葉、それを聞いて私がどう思ったか彼女は知らない。
彼女の言葉、それを聞いて僕がどう思ったか彼女は知らない。
私たちは幼なじみで、いつも3人で過ごしていた。
ファナとオルトと私。
オルトとファナは双子だけど、似ていない。
でも結局性質は似ているのかも知れないわ。
オルトは古代水の神アーシャ様の神官で、ファナは古代大地の女神アルス様の神官だけど、水の女神セアラ様の神剣、氷の剣をもっているしカバネルのウォールナイトは水の魔法が主だと聞いたことあるし。
そんな二人と私は本当にいつも三人だった。
時々、フェルやマリーナも居たけれど、彼らの身分を考えれば時々だった。
その時々以外はいつも。
それが破れたのはファナとオルトの兄、アイルがカバネルに行ってからだ。
ファナはその時から自分もアイルの様にカバネルに行くんだと決めて、私たちと行動を共にしなくなった。
それをつまらなく思ったのはオルトであり、そして私だ。
ファナがアイルになついていたのは私もオルトも知っている。
年の離れたアイルは私たちにとって兄でありそれ以上だったと思う。
そのファナがカバネルに向かう。
つまらなく、寂しく思うのは当然だろう。
ココにいても魔法の勉強だってなんだってできるはずなのに。
何故わざわざ遠い場所に行かなくちゃならない。
最初こそ説得していたオルトだけれども次第に諦めたのかいつもふてくされたような顔をしていた。
私はと言えば、それでもいいと思い始めていた。
ファナが決めたことを私たちが勝手に覆してはいけないとそう思ったのだ。
説得を諦めたオルトは家に居着かなくなった。
常に私の家にいて自分の家には寝に帰るような状況だった。
そんな時だった。
「パラ、僕は決めた」
春はまだ来ない。
冷たい風が身を氷らせる頃だった。
「何を決めたというの?オルト」
「僕は、家を出る」
「何故?」
オルトまで出る必要はないのではないの
私はそう問い掛けた。
「僕は決めた。家を出て、世界中を旅するって」
「そ、そんな事、簡単に言うのは良くないわ。自分が女だって分かってる?」
私はオルトが自分が女性だと忘れているのだと思っていたのだ。
いつも男のような格好をして言葉遣いも男らしくして。
そんな私の思いに反してオルトは何を言っているんだという顔をして頷く。
「僕だって分かってる、どれだけ危険なのかぐらい。だから僕は剣を鍛えた。剣豪に会ったら負けてしまうかも知れないけれど、その辺の奴らには負けるつもりはない」
「知ってるわ」
オルトは強い。
それは誰もが認めるところだ。
フェルと同じ師に師事し師範クラスと言うぐらいだから。
それに彼女にはそれ以外にも力がある。
オルトだけが持ち帰った力。
思い出す。
幼い頃、私たちは3人で聖なる地域と呼ばれる場所に向かった。
そこでオルトだけが迷子になったのだ。
帰ってきたオルトは聖獣を連れていた。
たてがみが水の白馬。
後に知ることになるのだがそれは水の神アーシャの聖獣だった。
彼女はその時から召喚士という称号をえた。
召喚士は聖獣を得なければ得ることのできない称号だから。
「知ってるわ。オルトが強いくらい」
「それは良かった。だから、パラ、一緒に行こう?」
そう言ってオルトは私に手をさしのべる。
「いいわ。オルト」
私はためらいもせず、その手を取る。
「って、いいのか?大変だよ?」
「あら、オルトが居るのなら問題はないわ?そうではないの?」
「そ、それはそうだけど、あっさり過ぎる」
オルトは気付いていない。
私はオルトが旅に出ることを反対してはいないのだ。
「いいのなら、早くしたくしましょう?あなたの事だからすぐに旅立ちたいと思っていると私は思うのだけれど?」
「と、当然だよ!!」
私の言葉にオルトは立ち上がり自分の家に荷物を取りに行くとそう言って飛び出す。
私は知っていた。
オルトがそう言うことを。
風の声が聞こえた。
共に旅立つ事を望む。
と歌うような声が。
共にはオルトのことだろうとすぐに予想がついた。
アイルもファナも居なくなってしまいマリーナもフェルとももう会えない。
そんなところに残されるのは寂しいし寂しいだろう。
だったら私たちも向かってしまえばいいんだ。
そうでしょ?オルト。
水の声が聞こえたような気がする。
共に旅立つことを望むと。
大河のような、雄大な声が。
僕は共に向かうのならパラしか居ないと思った。
反対されて断られるかと思った。
でも、そんなことないんだ。
これからの事を想像するのが楽しくて僕は急いで家へと戻った。
旅立つ事がどんな意味を持っているのかそんなことを思いもせず、次の日の朝早くそっと街を抜け出した。
ファナがカバネルに行く前にオルトは家出してます。
改めてCAST紹介、オルトは緒方恵美さん、パラは勝生真沙子さんです。
なんでこんなキャスティングなのかは……うん、それなりに。