神に歌を献上する。
この声が、キミに届けばいいのに。
マネージャーの命令で、僕達は闇の王エランの神殿へとやってきた。
ここで歌を献上すること、それが僕達の仕事。
他にも、このラークの都周辺でライブとかやるけれど。
新曲はどうしたってマネージャーは騒いでる。
「もうちょっと待ってよ、リアン。もう少ししたらリアンにも聞かせるからさ」
なんてチェスターは笑ってる。
「それ、どのくらい言ってますか?もう少し、もう少しといって1ヶ月以上待たされているんですよ?」
チェスターの言葉にマネージャーは納得しないで逆に怒り出す。
無理もない。
僕達が雲隠れして3ヶ月彼女にすら連絡を入れなかった。
ちょっと消えるから。
その言葉を残してオレ達はレグダルにある録音スタジオから消えた。
自由にそこら中を旅したり、後はラテスの神殿に戻ったりで。
まぁ戻った時点でマネージャーに見つかったわけだけど。
その間、チェスとクロンは自由に曲を作り、オレはその歌を歌っていた。
だから、新曲が出来てない訳ではない。
彼女には内緒だけれども。
「その代わり、やることだけはしっかりやってもらいますからね。まずは、古代闇の王エラン様からのご依頼です。歌の献上。それらその周辺でライブとの事。いいですね」
用意周到にアルノルト城塞都市で事を運んだリアンはやっぱりその次でも周到に準備しているらしい。
「分かったよ」
彼女の言葉に苦笑いを浮かべつつ僕達は闇の王に会いに来た。
「お前達の歌は心地良い。さすがラテスが選んだだけはある」
エラン様の言葉は、光栄だ。
そして僕達はあつらえられた舞台で歌を歌う。
誰かに届けるように、特定の誰かに届くように。
僕達は思いを曲に強くこめる。
風が吹き思いを届けて、火が燃えて大気にその思いを伝える
大地に思いを蒔いて、水がその思いを流して届ける。
万物の物は僕達の歌をどけるのに相応しい。
「お疲れ様です」
歌い終わった僕達にエラン様の神官のモルが近寄ってくる。
「これ、皆様方にです。あとマレイグさん、コレを」
渡されるチョコレートとぬいぐるみ?
僕は甘い物が苦手だから敬遠したいけれど、ぬいぐるみは一体………。
「シェラからですよ?」
…………えっと。
「成程、甘い物が食べられないマレイグの為に、甘いチョコレート色の熊のぬいぐるみとは…」
「シェラは可愛いね」
からかわれてるんだか……もう参ったなぁ。
「新曲、いつの間に作ったんですか?」
僕達のやりとりを呆然としながら聞いていたリアンがようやく復活する。
呆然としていたのは僕達が歌を献上していたときからか。
「いつっていろんな時。いい曲だったでしょ?クロン作曲。今回のアルバムに入れようと思ってるんだ」
「今回のアルバムって」
「音源出来てるよ」
唖然としているリアンに笑いながらチェスはデータを渡す。
「ミックスもトラックダウンも終わってるから、後はリアンに任せるよ」
「だから、」
「いつ、っていつも作ってるよ僕達はね」
そう言ったチェスの言葉に僕達は頷く。
誰かに届けるように、キミに届くように。
僕達はいつも歌い続ける。
でもぬいぐるみは……僕だっていい年した大人なんだけど……。
まぁ、いっか。
チョコレートはバレンタイネタ用に、そしてテディ・ベアはDDの時にグッズとして出たテディ・ベア。
買うつもり無かったのに、その場で見たかわいさに購入。
可愛いですよ奴は。
ちなみに奴はチョコレート色ではなくグレイな色してます。