「女王陛下、貴方のやり方では国は守れませんぞ?」
足下を見るかのような隣国の使者の言葉にレリィは影でそっと息を吐いた。
「ふぅ」
部屋に入りようやく詰まっていた息を吐いたレリィにヒューゴは眉をひそめる。
「どうかなさいましたか?ヒューゴ」
「疲れたのか?レリィ」
そう問い掛けたヒューゴにレリィは小さく頷く。
「……そうか」
ヒューゴはその言葉に部屋を出る。
レリィが疲労しているには訳があった。
先ほど行われた会談。
隣国との会談だが、それはこのレオニートにとっては非常に都合の悪い会談と為ってしまったのだ。
女王であるレリィはそれを必死に立て直そうとしたのだが、相手国の人間は狡猾なのかレリィの言葉をのらりくらりと交わしていく。
「レリィ、これでも飲むと良い」
部屋に何かを携え戻ってきたヒューゴはそれをレリィに渡す。
「レイズのお茶ですね」
受け取りレリィは微笑む。
狭い国土ではあるがレオニートの特産品である柑橘の果物レイズ。
そのままではもちろん、お茶やジャムに出来る果物として国民に慕われている『レイズ』。
それのお茶をレリィはいつも飲むと知っているヒューゴは持ってきたのだ。
「ありがとうございます、ヒューゴ」
「構わない。今はお前の疲労を回復させるのが先決だ」
「……私の疲れなど……国民の皆様方の苦労からすれば大したことはありませんわ。私はただ平和を望んでいるだけですのに……」
レリィの言葉にヒューゴはただ俯く。
彼女やこの国の人間は大したことは望んではいなかった。
元々狭い国土、隣国の争いにも巻込まれるこの国の人間はただ平和に過ごすことだけを願っている。
女王となったレリィも例外ではない。
普通の市民として生活していた彼女が王家の生き残りとしって女王となった今でも彼女は平穏な生活を望んでいる。
「ヒューゴ、平和であれと願う私の願いは大それた事なのでしょうか?誰もがそれを望むはずなのに……。ただ私だけがそれを願っているような……とても一人を感じます」
クーデターで国を追われまたクーデターで王位を得たレリィは孤独をひどく感じるのだろう。
「そんなことはないはずだ。レリィ、誰もがその事を願っている。オレもレリィと出会って平穏を望むようになった。レリィ、お前はお前の望み通りにしろ。オレはお前を守るためにお前が望むことのために動こう。レリィ、お前の居るところがオレの平穏であり平和なのだから」
「………」
彼の言葉はとても寂しい。
自分が居なくなってしまったらヒューゴはどうなってしまうのだろうか。
彼の幼少は暗闇だったという。
それを思うとレリィはただたまらない気持ちになるのだ。
それでもレリィはただ黙って頷くことしか出来なかった。
使うとしたら全編変えるような感じだ……。