それが正しいか分からない。
でも今は知らないで欲しい。
私がそうであることを。
いつかは知ってしまう私のこと、そして貴方の運命。
貴方がそれをどのような形で選択するか、私は知らない。
知りたくないし知られたくない。
知りたいし知られたい。
近いうちに迎える選択肢を彼はどのように受け止めそして選ぶのだろうか。
スクードの森の元々の街道だったところの宿場街跡でわたしとロシュオールは一日の疲れを取ることにした。
今まで通ってきた宿場町の中では一番程度が良いところで、その宿場町の結界は元々強固なモノだったようだ。
とは言え、スクードの街道にあるはずの要である神殿が崩壊した事による弊害はたとえ結界が強固なものだとしても、もろく崩れているのは当たり前の事で、わたしとロシュオールが使うことの出来る結界を張って漸くそれなりに一息が付けるという状況だった。
わたしがハーシャに向かいそして今ロシュオールと行動しているのは、彼がゴルドバに来る運命を持っているから。
どんな人間だかわたしは知りたかった。
ロシュオール・ダルハート。
斬首王と呼ばれたハーシャの国王の側近であり国家が有する魔法騎士団の団長であるスペルナイトマスターの称号持ち、赤の魔法騎士という色称号の所持者でもある彼。
ある日を境に幽閉されていた人物。
彼は何をして幽閉されたのだろうか。
それは彼と共にこのスクードの森を歩いている内に想像がついた。
彼は王に進言したのだろう。
その事が王には気にくわなかった。
あまり王のことを語らないロシュオールの口調からはそれが読み取れた気がした。
まだわたしはロシュオールのその人となりを知らない。
出会って1日、そうまだ1日しか経っていない。
目が覚めたわたしは隣に…とは行っても少し離れた所にロシュオールが眠っているのを確認し結界を張った部屋から外を出る。
森の中に横に光が走っている。
朝が始まっていた。
細い光は静かにその強さと太さを増しこの森を照らしていく。
この森の神殿がドコにあるのかわたしは心当たりが無い。
魔物が横行するこの森に朝日の光はこの森を清めていくように感じる。
このまま彼と旅を続けることが出来るのなら……。
そんなことを小さく考える。
不可能だと分かっているのにそれでもわたしは……。
「ミアっ。はぁ、ドコに行ったのかと思ったよ」
目を覚ましたロシュが息せき切って近寄ってきた。
「おはよう、ロシュ」
「おはようって…なんでそんなに暢気なんだよ。オレはミアが結界が弱まって何かに連れてかれたかと思ったんだぞっっ」
心配してくれていたらしい。
まだ息も絶え絶えなロシュにわたしは泣きそうになった。
わたしを巫女だと知らないロシュがわたしを心配していると。
「ごめんなさい、ロシュ。目が覚めたから少し歩きたかったの。丁度朝になる時間じゃない?」
「だからって誰にも言わないでって言うのは、勘弁して欲しいって」
「そうね」
本気で心配してくれていることにわたしは嬉しくでも申し訳なく思う。
「朝ご飯食べたらまた今日も進もうぜ?でも、神殿ってどの辺にあるんだろうな?」
「森の中間あたりって聞いたこと有るけど」
確か、そのあたり。
わたしの曖昧な記憶ではそうなってる。
こっそり確認してみようか。
今はまだこの旅を満喫しよう。
いつかの時がくるまでには……。
やっぱ、こういうときなのかも知れないなぁ。
ミアを巫女じゃなくて一人の女性と見てる所?でかなぁ。