卵とろとろ、ふわふわ。
　お弁当の卵焼き焼いてるの。
　お客さんが来るのです。
　並み居る敵を薙ぎ倒し、黒崎君がやってくるのです！
「いや、倒さないから」
「わ、いらっしゃいなのです」 　今日も相変わらずふわふわしてる、お互いの手をつないで俺たちは結構朝早い空座町を歩いてる。
「今から海なんて楽しみだね」
「去年はあれだったし、今年こそはなんて思ってたらこんな時期だしな」
「そうだね」
　オレの言葉に彼女は苦笑して応える。
　去年の俺たちは海に行くなんて余裕無かった。
　夏休み始まって、すぐに修行してそれから尸魂界に行って、帰ってきたら夏休みも数日しか無くって。
　……それ以上に井上と「二人きり」で出かけるということを予定にすら入ってなかった。
　それが今年はまぁ、いろいろあったけど。
　井上と二人っきりで出かける事になった。
　赤と青のTシャツ着て。
　同じブランドで…ぶっちゃけ、ペアルックって奴だ。
　浮かれてるよ、あぁ、もうめちゃくちゃ浮かれてるよ！！
　好きな奴と出かけるだけで普通は浮かれるって。
「海に着いたら、水のかけっこしてもいいようにタオル持ってきたから黒崎君、覚悟しててね」
「え？」
　楽しそうに弾む声で井上は言ってくる。
　彼女の中で、水を掛け合うことはすでに決定事項…って、
「帰りどうすんだ？掛け合ったら服、びっしょりになっちまうじゃねぇの？」
「…、水着……持ってこなかったしね」
「っていうか、この時期の水はもう入れないって」
「そうかぁ、持ってくれば良かったねぇ」
「………………」
　いや、持ってきてもいいけど。
　水着姿みたいですけど。
　高校の体育、なんで水泳は男女別？！
　……つきあい始めて３ヶ月。
　井上の天然ぷりにほとんど進展してませんよ。
　くっそー。
　恋次のやろうにはからかわれるし、乱菊さんや一角には馬鹿にされるし、冬獅郎には鼻で笑われるし、っつーか、なんでこんな目に？
　今日の目標！！！
　夕方までに井上とキスすること。
　…………なさけねぇなんて言うなよ！！
　オレが一番、情けない目標って分かってんだよ！！！
「それからね、あのね」
　彼女が、こっそり爆弾発言する。
　……もう、浮かれ街道つっぱしってもいいかもしんない。
　夏が終わったって、秋があって冬が来てクリスマスだよ！！
　思いっきりエンジョイしてやる。
　死神や虚に邪魔されても全部蹴散らしてやる！！！