「寂しくなったら、僕達を呼んで。そうすればすぐ君の側に帰れるよ」
そう言った彼等の言葉はあたしの中にまだ有る。
寂しいから、帰ってきて。
どうやって伝えれば良いんだろう。
彼等のように空間を切り裂いて、つなげて、通れるようにすれば声は聞こえる?
どうすればいいのか分からなくて、それでも、無茶苦茶に叫んだ。
燃える世界。
僕達は、僕達の起源を見失った。
その為に『この時』に来ることに決めた。
僕達は、いつか出会う『未来』に出会った。
『過去』に決められた『未来』の行動。
僕達は『今』を守るために行動を起こした。
そして世界は今燃えている。
RIN0に手紙を言葉を託した主とはさっき別れた。
きっとこれが未来で待つRIN0につながる。
灰色にくすむ世界、燃えさかる世界。
僕達は言葉もなくただ、それを見つめていた。
「で、どうやって戻るの?」
キネがテツに問い掛ける。
僕達は時を越えた。
それは確定されている過去であって、不確かな未来ではない。
僕達が戻るべき時間は不確かな未来だ。
僕達から考えれば確定されている過去の未来?
「二人とも、難しく考える必要はないよ。僕達が戻るべき時間は必ず見えてくる」
そうは言っても、どうやって戻るのだろう。
ココに来るときでさえ、空間の揺らぎは大きかった。
僕の歌う力で空間を切り裂き、キネのテレパスで時間を見つけ、テツのテレポートで時を渡る。
口で言えば簡単な事だけれども、それは非常に困難なことだ。
テツからその案を聞いたとき出来そうだ!!と二人で沸き立ったけれども、僕は空間を切り裂くほどの巨大な力を出したことはないし、キネは時間を見つけたことがない。
それ以上にテツは時を渡ったことがない。
いや、能力者の誰もが時を…渡ったことがないのだ。
能力者というのが体現されてから結構な年月が経っていると思う。
でもその中で時を渡る能力を持った人間なんて存在しなかった。
テレポートだってそうは多くない。
能力者で一番多いのはテレパスなんだから。
人類の基本的な能力はテレパスなんだと聞いたことがある。
だから、一番多い。
「過去はRIN0の力で見つけた。だから、RIN0の声を探して。別れ際に僕達を呼べってRIN0に言ったじゃない」
そうテツは当然の様に言った。
空間を切り裂き、過去への時を探したとき、RIN0の力を探した。
探せと、RIN0が託されたメッセージに記されていたからだ。
寂しくなったら、僕達を呼んで。
そう、僕はRIN0に言った。
彼女を慰めるために。
「テッちゃん、それを言わなかったらどうするつもりだったわけ?」
「え?ウツだったら言うと思ったけど?RIN0の事もの凄く大事にしてるじゃないか」
それに着いては反論しない。
僕がRIN0の事を大事にしているのは事実だから。
「でもさ、寂しがってなかったら意味ないよな」
「キネ〜〜」
「キネ君、それは言っちゃダメだよ」
あぁ、僕達が帰れるのはRIN0次第?
「まぁ、RIN0は僕達を呼んでくれると思うよ?ボク達に託されたメッセージを持ってたんだし」
それはもう、全部僕達に全部くれたんじゃないのか?
「大丈夫、RIN0は呼んでくれるよ。耳を澄ませば、聞こえる」
テツは探すように目をつぶる。
キネやRIN0は誰とでもテレパスが使えるけれど、僕とテツは内輪だけの人間に限られる。
好き嫌いが激しいからだなんてキネは言うけれど。
僕も真似て目をつぶり、RIN0の声を探す。
「絶対呼ぶって、泣きながら言ってたからな。探すとするか」
キネの力が広がる。
僕達は送ることには慣れてるけれど、受けることには案外慣れていない。
だから、僕達を呼んで。
君が呼べば、僕達はすぐに帰れる。
『−−−っ』
空間の向こうから……という意識の中ではっきりと彼女の声が聞こえる。
「聞こえた……」
「ね、さぁ帰ろう。彼女が待つ、あの場所へ」
「時間軸はばっちり合ってるぞ!!!ウツ」
キネの言葉にあの時と同じように空間を切り裂く。
今度こそ、本当に彼女の声が聞こえる。
彼女の声は僕達の歌を歌っている。
僕達の歌を歌って、僕達を呼んでいる。
「さぁ、帰ろう」
キネが繋ぎ、テツの言葉で僕達は時を越えた。
1974という時間に行って、帰ってくる3人の話。
ブログから読み始めた人は分からないって思うかも知れませんので、どうぞ、本館へ(笑)