MESSAGE〜もう一度走り出す僕を〜
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解決の道

 数時間後、オレの家には警察関係者と蘭の両親がそろった。
 鑑識の結果はやはり蘭の指紋しか検出されなかったという。
「どういうことですかっ警部殿!!!」
「すまん、毛利君。まさか我々もこんなに早く犯人が動くとは思わなかったのだよ…」
 警察関係者と蘭の両親がいる居間には服部がいる。
 服部がまかせろと言ったのでオレは自分の部屋にいるのだ。
「何…考えてんだ?新一」
 部屋の中で考えていたオレに快斗が話しかける。
「蘭を助け出す方法だよ。快斗…何か方法ないか?」
「そんな手あったらとっくに言ってる。ソレよりも、新一…オレよりもオマエの方が心当たりあるんじゃねぇのか?」
「そうだよな……」
 快斗の言葉にオレは自嘲気味に笑いうつむく。
 何か方法はないのか…何か…。
「……蘭ちゃん…今、御守りのように持ってるのあるよ」
 不意に青子ちゃんが言う。
「御守り?」
 オレの言葉に青子ちゃんは頷き言う。
「うん、青子見せてもらったもの、蘭ちゃんに。これいつも持ってるんだよって」
「どんなやつだよ、青子」
 快斗の言葉に青子ちゃんは応える。
「…バッジ、みたいな物だったよ…」
 と…。
「バッジ?」
「うん、バッジ…」
 バッジ…。
 フラッシュバックがまた始る。
 オレと蘭。
 ただ…目線が何故か今と違って見えた。
 蘭を見上げるようにオレはしていた。
『蘭、これをオメェに渡しておくよ』
『何?これ…』
『探偵バッジ。通信機能と発信機能両方兼ね備えたピンバッジだよ。少年探偵団にって博士が作ったやつの強化版』
『通信機と発信機ねぇ…。じゃあ、これを発信機として使っている場合、受信するのはどうするの?』
『これだよ、この……』
 そう言ってオレは……。
「メガネ!!!!」
「へっ?!」
 突然叫んだオレに快斗は驚く。
「な、なんだよいきなり」
「快斗、オレのメガネしらねぇか?」
「メガネ?」
「そうだよメガネ!!!!あれさえあれば、蘭の居所を探しだせる!!」
「ホントか?」
 オレの言葉に快斗は問いかける。
「あぁ、蘭には発信機を持たせてある。それを受信するのがオレのメガネなんだ」
「発信機ってバレねぇのか?」
「あたりめぇだろ。あれは見た目には発信機だってわからねぇ様にってピンバッジになってる。蘭が青子ちゃんに見せたバッジみたいなのがそうだよ」
 オレの口から快斗が問い掛ける質問の答えが次々と出てくる。
「じゃあ、その受信機が、新一が掛けてた、メガネなんだな」
 へ…?
「へ?じゃねぇよ。オメェ掛けてただろ」
「オレ……掛けてたっけ?」
「あのなぁ!!!今、自分で言ったろぉ!!!オレのメガネって。オメェ記憶が戻ったんじゃねぇのかよっ」
 オレの言葉に快斗は怒りを通り越して呆れだす。
 オレの意志で口から出てきたのにオレの意志じゃない。
 多分、ホントのオレの口がしゃべってるんだ…。
「口に出てきたんだよ」
「ったくぅ、ちょっと待ってろ。預かってて返そうって思ってたから持ってくるよ」
 そう言って快斗はメガネをとりに行く。
「持ってきたよ、新一」
 快斗が持ってきたのは黒縁のメガネ。
 ソレを見て、オレはこれだと納得した。
 これはオレがいつも持っていたものだ。
 でも…オレは目を悪くしていない。
 この家にあるオレがうつっている写真は全てメガネをかけていない。
 コンタクトをしている様子もない。
 じゃあ、オレはいつこれを掛けていた?
 目は悪くないのに…これを掛けていた感覚を覚えている。
「…新一、どうしたんだ?」
 メガネを持って惚けていたオレに快斗が声をかける。
「いや、…何でもねぇよ」
 そう言ってオレはメガネをかける。
 あとは自然と手が動いた。
「新一…どうやって使うのか思いだしたのか?」
「いや…ただ何となく」
 快斗の言葉に応えながらオレはメガネの操作を続ける。
「ダメだ…。何もおきやしない…」
「それ作ったのオマエなのか?」
 快斗の言葉にオレは首を振り答える。
「知り合いの科学者だよ」
「名前は?」
「阿笠博士」
「で、その阿笠博士はどこに?」
 口からすらすらと出てきていた言葉がまた消えてなくなる。
「…新一?」
「わかんねぇよっ」
 クソッ。
 何でなんでこんな大事なことが思いださねぇんだっ!!
「何で…オレは何にも出来ねぇんだっ!これじゃ蘭を助け出すことなんて出来やしねぇ…」
 そう言ってオレはテーブルをこぶしでたたく。
 八つ当たりしても意味がない。
 分かっていることなのに…分かっていることなのに、何かに当たらずにはいられない。
「新一っ!!しっかりしろよ。オマエは工藤新一だろっ!!だったら何も出来ないなんて考えるなよっ!!!」
「快斗……」
「蘭ちゃんを助けられるのは工藤新一!!オメェしかいねぇんだよ!!」
 快斗の言葉に目が覚めた気がする。
「阿笠博士やったら、隣に住んどる」
 服部が部屋に入ってきた。
「平、話終わったのか?」
「いや、犯人からの電話や。工藤は別の部屋におるから呼んでくる言うたら…切りよった。逆探知させない為やと思うねんけどな」
「で」
「また掛ける言うてた」
 服部はそう答える。
 そうか…また掛けてくるのか…。
「分かった、行くよ」
「じゃあ、オレはこれを阿笠博士に修理してもらってくる」
「頼む」
 メガネを快斗に預け、オレは服部と共にリビングに降りていった。
 リビングの電話の周りには逆探知の装置と警部達が電話が来るのを今か今かと待ちかまえていた。
「工藤君、大丈夫かね」
 目暮警部の言葉にオレは力強く頷く。
 大丈夫。
 そう心に思っていないと、自分が崩れそうで怖かった。
 リビングに来てから5分後、服部が電話を取ってから10分後に電話がかかってきた。
「工藤新一だな」
「そうだ、蘭は、どうしたっ」
「オレが指定するところに来い」
「おいっ蘭は無事なのか?」
「来たら教えてやる」
 場所と時間を指定して犯人は電話を切る。
 逆探知は出来なかった。
「くっそー、これじゃ蘭が無事なのかわからねぇじゃねぇか!!!」
「毛利君、落ち着きたまえ」
 目暮警部とおっちゃんの会話を横で聞きながらオレは決意を固めた。
「オレ…行ってきます」
「工藤君…」
「一人でかい?危険すぎる」
「蘭を助けるためです」
 白鳥警部の言葉にオレははっきりと答える。
「新一、オメェに何かあったとき、一番悲しむのは蘭なんだぞ!!ソレを分かって言ってるのか?」
「……っ」
 おっちゃんの言葉に何も言えない。
 でも……。
「あなた…。新一君、少し冷静になるべきよ。冷静になれないのは私達だって分かる。でもね、冷静さを失って行動したら相手の思うつぼなのよ」
 とおばさんが言う。
 分かってる。
 言いたいこと分かる。
 けど……。
 蘭が…どんな目にあっているのか分からないから、余計に不安でたまらない。
「……こうしたらどうです?オレが新一と一緒に行く」
 オレの様子を見て快斗がそう言う。
「オレも、行くで。そうや、その場に直接行くんはオレと快と工藤と高木刑事。でどうや?これやったら問題ないやろ。どうせやったら警官隊を呼んでもえぇ」
 服部の言葉に目暮警部は考え込む。
「良いだろう…了解した」
 そしてそう答えた。

 時間になる前にオレは阿笠博士の元へ行った。
「博士、メガネ直るのはどのくらいかかる?」
「んー難しいのぉ。なるべく、早く直したいとは思っとるよ」
「頼む、博士…。このメガネだけが蘭を探しだせる手段なんだ…」
 オレが頼み込むと博士はメガネの機械部分を見ながらオレに言う。
「わかった…なるべく早く直すからそう考え込むな。しっかし新一はホントに蘭君の事になると人がかわるのぉ」
「うるせぇ…」
 と悪態つくとその場にいた服部達が笑う。
 なんだよ、ソレは。
「取りあえず、直ったら届けるわ。だから、工藤君はしっかりね」
 佐藤刑事の言葉にオレは頷く。
 メガネを直したら佐藤刑事と和葉ちゃんと青子ちゃんが現場にまで持ってきてくれるという。
 危ないから来るなと服部と快斗に言われても和葉ちゃんと青子ちゃんは蘭が助かるんだったら行くと言ってひかなかった。
 蘭…絶対に助け出すからな。

 杯戸町1番倉庫街PM6:00
 予定の…時間よりは少し早いかも知れない。
 今日は祝日で休み。
 だから倉庫街全体に人気がない。
「取りあえず、指定された一番奥の倉庫に向かおう」
 高木刑事の言葉にオレ達は頷いた。
 倉庫街の一番奥。
 指定された倉庫にオレ達は向かう。
「あの倉庫だ!!」
 オレの言葉に全員頷く。
 倉庫にはかすかに電気がついていた。
 最初に入るのはオレと快斗その後から服部と高木刑事が入ってくる。
 服部と高木刑事はオレと快斗のサポート。
 快斗は犯人が士道譲なら…顔をはっきりと知っているただ一人の人物。
「工藤新一だ!!!!出てこい」
 大声をあげて犯人を呼びだす。
「一人じゃないんだな」
 そう言って奥の方から精悍な30代後半の男がでてくる。
「士道譲だ」
 快斗がオレに耳打ちする。
「一人で来いっていう指示はなかった。だったら何人で来ても問題はないだろう」
「確かにその通りだな」
 オレの言葉に士道譲は皮肉げに微笑む。
「蘭はどこだっ」
「さぁな。そんなにあの娘が大切か?残念だが、今どこにいるかオレにもわからねぇな」
「何ぃっ!!!」
「新一、落ち着け」
 冷静さをなくし士道譲に躍りかかろうとするオレに快斗が制する。
「冷静になれ。こっちが慌てれば慌てるほど、敵につけ入られる。いつもはしないミスをして、そこにつけ込まれる。いついかなる時も、ポーカーフェイスでいろ。オマエなら、出来るはずだぜ。名探偵」
 後半の皮肉げに言う快斗の口調。
 …この口調オレは知っている。
 ソレよりも、快斗の言葉でオレは冷静さを取り戻せたようだった。
「もう一度聞く。蘭はどこにいる」
「知らないって言ってるだろ?教えて欲しいんだったらこっちに来たらどうだ?」
 士道譲はオレを誘い込む。
「どうする?新一」
 快斗の言葉にオレは応えずに前にでる。
「オレに、用があるんだろう!!用があるならはっきり言ったらどうだ」
 どうしていいか分からない。
 オレの言葉で相手がどれだけ反応するか、今のオレには全く想像がつかなかった。
 今の…オレ?
 『今のオレ』ってどういうことだ?
 オレが感じている『今のオレ』と『前のオレ』の差、ソレハなんだ?
『前のオレ』ってどういう人間だった?
 クラスの連中は
「帝丹高校が誇る名探偵」
 と言う。
 服部や快斗はなんて言う?
「オレのライバル(や)」
 ……。
 服部や快斗のライバル?
 蘭はなんて言う?
「そう言うの全部まとめて、わたしの幼なじみ。だよっ」
 蘭はオレの問いに無邪気に答えていた。
「何考えてるんだ?生意気な探偵ボーズ」
 そう聞こえた瞬間オレは頬に熱さを感じ後ろに吹っ飛んだ!!

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